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「全員クビ」宮迫さん、吉本からの圧力告白 芸能人にも労働組合が必要か
2019年07月21日 18時37分

有名芸能人と所属事務所との関係をめぐるトラブルが相次いで表面化している。

7月17日には、ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対して、元SMAPの3人(稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さん)を出演させないよう圧力をかけていた疑いが発覚。公正取引委員会がジャニーズに注意していたことをNHKがスクープした。

これを受けて、改めて注目を集めたのは、女優のんさん。2016年、所属していたレプロとの契約解消に際し、本名でもある能年玲奈を名乗れなくなってしまった。

現在マネジメントを担当する「スピーディ」の福田淳社長は7月18日、会社HPに「のんが三年間テレビ局で1つのドラマにも出演が叶わないことは、あまりにも異常ではないでしょうか?」などとつづったコラムを掲載している。

7月20日に問題になったのは、吉本興業だ。反社会的勢力から金銭を受け取っていた問題で、契約解除になった宮迫博之さんが謝罪会見を開き、岡本昭彦社長から、会見を開いたら「全員クビにするからな」と圧力をかけられていたことを明かした。

日本のメディア業界では、多くの人気タレントを抱える芸能事務所の力が強い。事務所が「こいつを出演させたら、ほかの所属タレントは出さない」とメディアに圧力をかければ、売れっ子と言えども干されてしまう。

だから、芸能人も事務所に従わざるを得ないし、移籍・独立が困難だ。こうした中で、芸能人の労働組合が必要ではないかという議論がある。

実態はともかく契約上、芸能人は労働者ではない(事務所との雇用関係がない)ことがほとんど。しかし、同じく個人事業主のプロ野球選手が「日本プロ野球選手会」という労組をつくっているように労働組合法上の労働者は広い概念とされている。

労組が団体交渉を申し込めば、所属事務所やテレビ局側などには誠実に交渉する義務が発生し、正当な理由なくして拒むことができない。ストライキという武器も持てる。

芸能人の権利向上を目指す団体には、協同組合「日本俳優連合」(西田敏行理事長)もあり、実演家の労災問題などに尽力しているが、労組ではないため、交渉に応じるかどうかはあくまで先方の任意になってしまう。

労働問題にくわしい川上資人弁護士は、「労働組合をつくるなら、いかに全員を加入させるかがポイントになるでしょう」と話す。

「普通の労働市場と違って、芸能界は事務所がタレントを干せるという特殊事情があります。労働組合をつくること自体が危険で、加入すれば干されてしまう可能性があります」

参考になる仕組みが海外にある。アメリカのテレビ・ラジオ芸能人と映画俳優の労組「SAG-AFTRA(Screen Actors Guild - American Federation of Television and Radio Artists)」だ。2つの労組が合併したもので、組合員は約16万人もいるという。

「SAG-AFTRAとスタジオ、テレビが労働協約を結んで、所属していないと原則出演できないようになっているそうです。だから、強大な映画スタジオなどと対等に交渉することができ、俳優らの権利が向上してきたのでしょう」

アメリカにはもう1つ、参考にできる点があるという。

日本では芸能事務所が、所属タレントのスケジュール管理や世話などの「マネージャー」と、仕事斡旋や契約などの「エージェント」を兼ねている。事務所が企画・制作など「プロダクション」機能を果たすこともある。

一方、アメリカでは、この3つが法規制によって分離されているという。結果として日本のように芸能事務所がメディアに対して巨大な力を持っていないという。

「アメリカでは、芸能人が平気で政権を揶揄していますよね。自由にものが言えるということ。日本で政治的な発言をしたら干されてしまいます。芸能人の権利がどの程度守られているかは、その国の政治や文化にも影響してくるはずです」

公取委がジャニーズを注意したという報道を受け、元ジャニーズの赤西仁さんは「こうゆうのが蔓延ってるから日本のエンタメがどんどんつまらなくなっていくの」とツイートしている。川上弁護士は「本当にそうだと思います」と賛同している。

芸能人の労組をめぐっては、小栗旬さんが必要性を語ったことが知られているが、実現には至っていない。

「まずは芸能事務所ごとでも良いのでできることが大切でしょう。小さなところだとテレビなどが『違う事務所を使えば良い』となるので、渦中の吉本興業で有力な芸人が音頭をとって、組合ができるとガラッと流れが変わってくると思います」

「職場移転の自由は、労働者にとって大事な権利。たとえば、外国人技能実習生は制度上、それが保証されていないから、会社の指示に従わざるを得ない。断われば、帰国させられてしまう恐怖がある。待遇は違えど、芸能人の問題も同根だと思います」

こうした状況をファンが理解し、声をあげていくことも芸能界の旧弊を打破する突破口になると考えられる。

有名芸能人と所属事務所との関係をめぐるトラブルが相次いで表面化している。

7月17日には、ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対して、元SMAPの3人(稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さん)を出演させないよう圧力をかけていた疑いが発覚。公正取引委員会がジャニーズに注意していたことをNHKがスクープした。

これを受けて、改めて注目を集めたのは、女優のんさん。2016年、所属していたレプロとの契約解消に際し、本名でもある能年玲奈を名乗れなくなってしまった。

現在マネジメントを担当する「スピーディ」の福田淳社長は7月18日、会社HPに「のんが三年間テレビ局で1つのドラマにも出演が叶わないことは、あまりにも異常ではないでしょうか?」などとつづったコラムを掲載している。

7月20日に問題になったのは、吉本興業だ。反社会的勢力から金銭を受け取っていた問題で、契約解除になった宮迫博之さんが謝罪会見を開き、岡本昭彦社長から、会見を開いたら「全員クビにするからな」と圧力をかけられていたことを明かした。

●労組つくるなら「全員加入」がポイントに

日本のメディア業界では、多くの人気タレントを抱える芸能事務所の力が強い。事務所が「こいつを出演させたら、ほかの所属タレントは出さない」とメディアに圧力をかければ、売れっ子と言えども干されてしまう。

だから、芸能人も事務所に従わざるを得ないし、移籍・独立が困難だ。こうした中で、芸能人の労働組合が必要ではないかという議論がある。

実態はともかく契約上、芸能人は労働者ではない(事務所との雇用関係がない)ことがほとんど。しかし、同じく個人事業主のプロ野球選手が「日本プロ野球選手会」という労組をつくっているように労働組合法上の労働者は広い概念とされている。

労組が団体交渉を申し込めば、所属事務所やテレビ局側などには誠実に交渉する義務が発生し、正当な理由なくして拒むことができない。ストライキという武器も持てる。

芸能人の権利向上を目指す団体には、協同組合「日本俳優連合」(西田敏行理事長)もあり、実演家の労災問題などに尽力しているが、労組ではないため、交渉に応じるかどうかはあくまで先方の任意になってしまう。

労働問題にくわしい川上資人弁護士は、「労働組合をつくるなら、いかに全員を加入させるかがポイントになるでしょう」と話す。

「普通の労働市場と違って、芸能界は事務所がタレントを干せるという特殊事情があります。労働組合をつくること自体が危険で、加入すれば干されてしまう可能性があります」

参考になる仕組みが海外にある。アメリカのテレビ・ラジオ芸能人と映画俳優の労組「SAG-AFTRA(Screen Actors Guild - American Federation of Television and Radio Artists)」だ。2つの労組が合併したもので、組合員は約16万人もいるという。

「SAG-AFTRAとスタジオ、テレビが労働協約を結んで、所属していないと原則出演できないようになっているそうです。だから、強大な映画スタジオなどと対等に交渉することができ、俳優らの権利が向上してきたのでしょう」

●アメリカ、芸能事務所の機能を法律で分割

アメリカにはもう1つ、参考にできる点があるという。

日本では芸能事務所が、所属タレントのスケジュール管理や世話などの「マネージャー」と、仕事斡旋や契約などの「エージェント」を兼ねている。事務所が企画・制作など「プロダクション」機能を果たすこともある。

一方、アメリカでは、この3つが法規制によって分離されているという。結果として日本のように芸能事務所がメディアに対して巨大な力を持っていないという。

「アメリカでは、芸能人が平気で政権を揶揄していますよね。自由にものが言えるということ。日本で政治的な発言をしたら干されてしまいます。芸能人の権利がどの程度守られているかは、その国の政治や文化にも影響してくるはずです」

公取委がジャニーズを注意したという報道を受け、元ジャニーズの赤西仁さんは「こうゆうのが蔓延ってるから日本のエンタメがどんどんつまらなくなっていくの」とツイートしている。川上弁護士は「本当にそうだと思います」と賛同している。

芸能人の労組をめぐっては、小栗旬さんが必要性を語ったことが知られているが、実現には至っていない。

「まずは芸能事務所ごとでも良いのでできることが大切でしょう。小さなところだとテレビなどが『違う事務所を使えば良い』となるので、渦中の吉本興業で有力な芸人が音頭をとって、組合ができるとガラッと流れが変わってくると思います」

「職場移転の自由は、労働者にとって大事な権利。たとえば、外国人技能実習生は制度上、それが保証されていないから、会社の指示に従わざるを得ない。断われば、帰国させられてしまう恐怖がある。待遇は違えど、芸能人の問題も同根だと思います」

こうした状況をファンが理解し、声をあげていくことも芸能界の旧弊を打破する突破口になると考えられる。

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