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「女性の部屋を確認したい」部下の自宅に150回侵入、会社代表の呆れた性癖
2023年05月02日 10時06分

知らないうちに何者かが自宅に侵入していた。その数は150回にのぼり、侵入してきたのは自分が勤める会社の代表だったーー。そんな薄気味悪い事件の裁判が大阪地裁であった。

2023年4月に大阪地裁で行われた住居侵入、窃盗、迷惑防止条例違反の裁判。被告人の30代男性は不正に入手したカギで、1年半にわたり計150回も被害女性の家に侵入した。驚くことに、「女性の部屋を確認したい」というのは被告人の性癖でもあった。証人として出廷した被告人の妻は、子どものために離婚しないと述べた。(裁判ライター:普通)

知らないうちに何者かが自宅に侵入していた。その数は150回にのぼり、侵入してきたのは自分が勤める会社の代表だったーー。そんな薄気味悪い事件の裁判が大阪地裁であった。

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●150回の犯行中に留まる機会はなかったのか

供述調書などによれば、逮捕当時、被告人は60名ほどの従業員が勤める会社の代表を務め、妻子と同居していた。過去にも、不動産会社で働いていた被告人は、会社が所有する合鍵を使って顧客女性の自宅に侵入し、実刑判決を受けた前科があった。

今回の事件の被害者は驚くことに、自身が代表を務める会社の従業員だった。被害者が落としたカギを拾い、好みのタイプであったことから「プライベートの様子を知りたい」と思い、カギを不正複製して家に侵入した。

補助錠がかけられ、侵入ができない日もあった。それでも執拗に部屋へ向かい、たまたま補助錠がかけられていない日に侵入成功。その際、補助錠のスペアキーを1本盗んだため、以後はいつでも入れるようになった。家の中を撮影して生活ぶりを想像し、ときには使用済みの下着を撮影して、そのにおいを嗅いだり、自慰行為を行うこともあった。

最初にカギを入手した経緯は偶然であったが、「1度侵入したことで、さらにもう1回もう1回と徐々に感覚が麻痺してしまった」と供述する被告人。週に3〜4回ほど侵入し、計150回もの犯行の際に、自身の子どもの顔は一度も頭に浮かばなかったという。

●防犯カメラに映っていたのは……

被害者も異変には気づいていた。

ある日、被害者が在宅中、何者かがカギを開けようとしたことがあった。チェーンが掛けられていたので侵入は防げたというが、相当な恐怖だっただろう。怪しい出来事はこの日だけではなかった。その後、閉めたはずのトイレのフタが開いているなど、何者かが侵入した痕跡に気づく。

防犯カメラの映像を見て、被害者は被告人に似ているとは思ったものの、「そんなはずはない」と大きく動揺したという。しかし防犯カメラの映像をもとに捜査は進み、被告人の犯行は明るみに出た。

被害者は示談に応じたものの、心に残った傷は深かった。家にいても少し物音がするだけで怯えるようになり、仕事中も誰かが侵入しているのではないか、家に帰る際も誰かと鉢合わせるのではないかと不安を募らせているという。

●法廷に立った妻は「離婚しない」

被告人の妻が証言台に立ち、思いの丈を打ち明けた。

まだ幼い子どもは、父親の不在で不安定になり、夜泣きを繰り返している。逮捕当時は育休中であったが、突然の逮捕により、夫の仕事を肩代わりせざるを得なくなったなど、逮捕後の苦労を語った。今後は夫婦間でコミュニケーションを密に取り、被告人の更生のためのカウンセリング受講などのバックアップをすると約束した。

しかし、それ以外の正直な感情も多く発せられた。犯行について「正直ありえない」とし、被害女性に対して、「同じ女性として本当に恐い思いをさせた」と、深く謝罪の気持ちを示した。

検察官「被告人が、犯行を繰り返す理由をどう思いますか?」

証人 「わかりません」

検察官「事件について夫婦間で話し合っていないんですか?」

証人 「何度も話し合っています。でも、理由を全然理解できないんです」

同種前科があることを結婚時は知らず、今回の事件をきっかけに知ったという証人。離婚についての意向を裁判官から質問されると、「考えたけど、育休中で収入もないし、子どものことを考えるとできないかなと思っています」と答えた。

●裁判官も「常軌を逸した犯行」と強く非難

被告人は涙で言葉を詰まらせながら質問に答えた。

代表である自身の逮捕をきっかけに、会社は取引先を大きく減らし、従業員も4分の1ほどに減った。「自分の行動がどれほど影響を与えるのか考えていなかった」と供述する。

検察官からは、1年半もの長期にわたって犯行を続けたことを強く非難された。しかし、「感覚が麻痺してしまった」という答えに終始し、当時の心境などが裁判で明らかになることはなかった。

今回の犯行は、被害者のカギを偶然に拾ったことがきっかけで始まったが、「女性の部屋を確認したい」という自身の性癖は、20代のころから認知していたという。前刑時は刑務所内で更生プログラムを受けていたが、今回はさらなる専門機関での長期のプログラムを受講する準備をしていることも明かした。

弁護人からも最後に「被害者の気持ちは重いですよ。本当にそれをわかってくださいね」と、強く更生を促されていた。

判決は懲役1年6月(求刑3年)の実刑判決となった。長期間、多数回に渡った行為を「常軌を逸した犯行」と評し、前刑から時間が経っていること、示談がされていることを考慮しても、実刑は避けられないとその理由を述べた。

【筆者プロフィール】裁判ライターとして毎月約100件の裁判を傍聴。ニュースで報じられない事件を中心にTwitter、YouTube、noteなどで発信。趣味の国内旅行には必ず、その地での裁判傍聴を組み合わせるなど裁判中心の生活を送っている。

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