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「法律が普及の足かせになってはいけない」ロボット法学会の設立目指し、準備会開催
2015年10月11日 23時08分

ロボットの進化や普及を見据え、今後の法制度のあり方を研究する「ロボット法学会」の設立準備研究会「ロボット法原則の提言に向けて」が10月11日、東京都の日本科学未来館で開かれた。

同研究会は、技術の進化によって、よりロボットが人間世界と密接に関わるようになった時代に、どのような法規制や倫理面での課題が存在するのかなどを議論するために開催。法学研究者などが中心になり、2016年度の学会設立を目指している。

ロボットの進化や普及を見据え、今後の法制度のあり方を研究する「ロボット法学会」の設立準備研究会「ロボット法原則の提言に向けて」が10月11日、東京都の日本科学未来館で開かれた。

同研究会は、技術の進化によって、よりロボットが人間世界と密接に関わるようになった時代に、どのような法規制や倫理面での課題が存在するのかなどを議論するために開催。法学研究者などが中心になり、2016年度の学会設立を目指している。

●ロボット法、新8原則を提唱

この日の研究会には、研究会代表の新保史生・慶應義塾大学教授が登壇。新保教授は、SF作家のアイザック・アシモフ氏が1950年に示した「ロボット工学の3原則」を紹介。

第1条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない

第2条:ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第1条に反する限りは、この限りではない

第3条:ロボットは、第1条と第2条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない

新保教授は「その後、現在に至るまで、これに替わるものは提案されなかった」として、自身の試案として新たな原則を提唱した。それが、人間第一の原則、命令服従の原則、秘密保持の原則、利用制限の原則、安全保護の原則、公開・透明性の原則、個人参加の原則、責任の原則の8原則だ。

新保教授は「まずはアシモフと同様に人間第一と考えるべきだ」と強調。「利用制限の原則」については、「利用制限であって禁止ではない。例えば、レースは限界を試すうえで大事なことだ。ドローンレースを禁止してはいけないだろう」と語った。さらに、「責任の原則」については、「本田宗一郎は、『失敗の権利』とそれに伴う『反省の義務』を主張してきた。失敗と反省で新しい技術が発展する」と述べた。

さらに、「安全と安心が違いを考えることが重要だ。ドローンが安全に利用されているからといって、それが人の家を覗いているのであれば、人間が安心できるといえるだろうか。安心できる利用環境の整備が重要だ」と技術のあり方だけでなく、社会への影響も含めた問題解決の重要性を強調した。

●ロボットの定義は必要なのか

研究会では、講演やパネルディスカッションを通じて、非常に多岐にわたる議論が展開された。その1つが、ロボットをどう定義するのかという話だ。

政府が今年1月に発表した「ロボット新戦略」の策定に関わった経済産業省の佐脇紀代志・産業機械課長は、従来のロボットの定義は、産業用ロボットを想定して、センサー、知能・制御系、駆動系の3要素全てを備えたものだったが、人工知能のように、知能・制御系が独立して発展することで、必ずしも3要素だけでとらえられなくなっていることを解説。

「これまでは1つのハードにすべて備わってきたものと考えてきたが、バラバラになることも考えている。必ずしも(定義を)限定的に考える必要はないだろう」と語った。

新保教授も「米国では、定義を決めると枠組みが決まってしまい、先に進めなくなるといことを避けようとする。EUはとにかく定義付けしようとする。日本の場合は、形式的な定義だけでは当てはまらないことも考えるべきだ」と述べた。

●「洗練された奴隷制」が起きることへの懸念

また、ロボットが仕事の現場に取り入れられると、人間社会に様々な影響を及ぼす可能性がある。花水木法律事務所の小林正啓弁護士は「洗練された奴隷制」が起きることへの懸念を示した。

「人間はロボットよりも肉体能力が高いけれど、知的能力は結構、負け始めている。頭はロボット、体は人間という仕事の体制ができることになる。つまり、トップの人間がロボットに基本的な命令を出し、ロボットがゴーグルを通じて下級の労働者に命令を出して、人間がその通りに仕事をすることになる。言葉もいらず、すごく安く人間を使える。この危険性を指摘している人は少ない」

慶應義塾大学の赤坂亮太・SFC研究所上席所員は、遠隔操作ロボットの登場により、入国管理行政に限界が訪れる可能性があることを指摘。「(国外の)遠隔操作ロボットにログインして操作すれば上陸したことになるのか」と問題提起し、人格と身体が一対一になっていた関係に変化が訪れる可能性があることを予想した。

今後の展開については、法制度の関係者だけでなく、技術者や金融事業者、ユーザーなど多様な関係者による議論が必要であるのと意見が出た。

新保教授は、「ロボットを社会で動かすために、法律が足かせになってはいけない。モノとしてのロボットは昔からあったが、今後、ロボットが人に接近して利用される時代に、どうやってきちんと使えるようにすべきかを考えないといけない。まだ多くの課題がある」と締めくくった。

(弁護士ドットコムニュース)

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