8292.jpg
強姦罪を「強制性交等罪」に名称変更方針、明治40年以来初…どんな影響がある?
2017年02月02日 09時56分

性犯罪に適用される「強姦罪」の名称を、「強制性交等罪」に変更する方針を法務省が固めたことが報じられた。

報道によると、「強制性交等罪」では、被害者を「女性」に限っていた性別による区別をなくす。また、これまでは、被害者が告訴しないと起訴できない「親告罪」だったが、告訴なしで起訴できる「非親告罪」に改める。法定刑は「懲役3年以上」から「懲役5年以上」に引き上げるという。

実現すれば、明治40年に制定されて以降はじめて、強姦罪が抜本的に見直されることになる。どんな影響があるのか、刑事事件に詳しい小笠原基也弁護士に聞いた。

性犯罪に適用される「強姦罪」の名称を、「強制性交等罪」に変更する方針を法務省が固めたことが報じられた。

報道によると、「強制性交等罪」では、被害者を「女性」に限っていた性別による区別をなくす。また、これまでは、被害者が告訴しないと起訴できない「親告罪」だったが、告訴なしで起訴できる「非親告罪」に改める。法定刑は「懲役3年以上」から「懲役5年以上」に引き上げるという。

実現すれば、明治40年に制定されて以降はじめて、強姦罪が抜本的に見直されることになる。どんな影響があるのか、刑事事件に詳しい小笠原基也弁護士に聞いた。

●国民の「行動予測可能性」担保できるのか?

これまでも、刑法の罪名が変更されたケースはありますが、今回検討されている改正は単なる名称変更とは異なります。

これまでの強姦罪の構成要件(罪となる行為)は、男性による強制的な性交でした。「強制性交等罪」は、これに、強制的な肛門・口腔による性交類似行為という、もともとは、強制わいせつ罪に当たる行為を加えて、同じ刑として処罰しようとしたものです。

これまでの「強姦罪」や、マスメディアなどで使用される「婦女暴行罪」に比べて、罪名を聞いただけではどんな事件かが分かりづらいということが考えられます。

報道される際などは、それぞれ違う罪名が通称として付けられる可能性も考えられます。一般的に「強制性交等罪」という罪名は使われないか、浸透するとしても時間がかかるのではないでしょうか。

刑罰を定めた条文には、国民にとってのわかりやすさ、つまり、「何が許される行為で何が許されない行為か」「どのような行為がどれだけの罪となるのか」を予測できるようにして、国民の行動の自由を守る「行動予測可能性」が求められます。

今後、具体的に条文が検討されると思われますが、こうした観点からすれば、従来の強姦と、新たに加わる強制的な性交類似行為については、刑の重さは同じにするとしても、別個の条項で定めて、罪名も別々にした方がよいのではないかと思います。その上で、本当に双方の刑の下限を5年に引き上げる必要があるかどうかについて、慎重な審議を行うことが望まれます。

●これまでもあった「罪名の変更」

ちなみに、これまでに罪名が変更されたものとしては、刑法が口語化された際に、古い言葉を現在の言葉に直したということがあります。

たとえば、「賍物牙保(ぞうぶつがほ)罪」が「盗品有償処分あっせん罪」に、「誣告(ぶこく)罪」が「虚偽告訴等罪」にという具合です。

これらは、もとの罪名がそもそも社会で使われていないこと、犯罪行為の内容としては変わっていないことから、変更された名称は社会が受け入れやすかったと思います。

また、「業務上過失致死傷罪」から、自動車運転だけが重く処罰されるという改正の際に「自動車運転過失致死傷罪」が制定され、それが刑法から「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に移りました。

その際、「自動車運転過失致死傷罪」は「過失運転致死傷罪」に変更されていますが、こちらも内容的には変わっていませんし、罪名自体もほとんど変わっていないので、罪名が変わったこと自体気づかれていない人も多いのではないでしょうか。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る