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グーグル検索結果「削除命令」 裁判所が初めて「忘れられる権利」に言及した意義
2016年03月05日 11時36分

ある男性の過去の逮捕歴を示すグーグルの「検索結果」について、さいたま地裁(小林久起裁判長)が「忘れられる権利がある」として、グーグルに削除を命じる仮処分の決定を出していたことが2月下旬にわかった。共同通信の報道で明らかにされたものだが、決定は昨年の12月22日付けとされる。

これまでも検索結果の削除を認める司法判断はあったが、「忘れられる権利」を明言したのは初めてだとみられている。報道によると、さいたま地裁は「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」と判断し、検索結果の削除を認める決定を出したという。

小林裁判長は「逮捕の報道があり、社会に知られてしまった人も私生活を尊重され、更生を妨げられない利益がある」と指摘。「現代社会では、ネットに情報が表示されると、情報を抹消し、社会から忘れられて、平穏な生活を送るのが極めて困難なことも考慮して、削除の是非を判断すべきだ」とした。

報道によると、今回の男性は、グーグルで名前と住所を検索すると、3年以上前の逮捕時の記事が表示されていた。さいたま地裁が昨年6月、削除を命令したが、グーグルが決定の取り消しを求めて、同地裁に異議を申し立てていた。今回の削除を命じる決定に対して、グーグル側は再び不服を申し立てたため、現在は東京高裁で審理中だという。

今回の仮処分決定の意義をどうとらえればいいのだろうか。そもそも「忘れられる権利」とはどのようなものなのか。「忘れられる権利」についての著書がある神田知宏弁護士に聞いた。

ある男性の過去の逮捕歴を示すグーグルの「検索結果」について、さいたま地裁(小林久起裁判長)が「忘れられる権利がある」として、グーグルに削除を命じる仮処分の決定を出していたことが2月下旬にわかった。共同通信の報道で明らかにされたものだが、決定は昨年の12月22日付けとされる。

これまでも検索結果の削除を認める司法判断はあったが、「忘れられる権利」を明言したのは初めてだとみられている。報道によると、さいたま地裁は「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」と判断し、検索結果の削除を認める決定を出したという。

小林裁判長は「逮捕の報道があり、社会に知られてしまった人も私生活を尊重され、更生を妨げられない利益がある」と指摘。「現代社会では、ネットに情報が表示されると、情報を抹消し、社会から忘れられて、平穏な生活を送るのが極めて困難なことも考慮して、削除の是非を判断すべきだ」とした。

報道によると、今回の男性は、グーグルで名前と住所を検索すると、3年以上前の逮捕時の記事が表示されていた。さいたま地裁が昨年6月、削除を命令したが、グーグルが決定の取り消しを求めて、同地裁に異議を申し立てていた。今回の削除を命じる決定に対して、グーグル側は再び不服を申し立てたため、現在は東京高裁で審理中だという。

今回の仮処分決定の意義をどうとらえればいいのだろうか。そもそも「忘れられる権利」とはどのようなものなのか。「忘れられる権利」についての著書がある神田知宏弁護士に聞いた。

●公開時は適法でも、時間の経過などで違法に変わるケースも

「『忘れられる権利』は、EUにおいて個人データの削除請求権として考え出され、日本に紹介された権利です。

もっとも日本では、プライバシー侵害を理由とする削除請求権が裁判所で認められており、あえて『忘れられる権利』という言葉を使う必要はありませんでした」

では、日本では必要のない言葉なのか。

「インターネットが活用されるようになり、これまでのプライバシー侵害とは、事情の異なる事案が現れ始めました。『情報の公表時は適法だったが、時間の経過などの事情により、あるときから公表を継続することが違法に変わるのではないか』というケースが出てきたのです。事件・事故の『加害者』や『被害者』の情報が、その1つです。

つまり、事件・事故の発生当時は、加害者の情報にも被害者の情報にも、公益性があるとして、多くの場合、報道のプライバシー侵害性は否定されています。しかし、時間経過により、加害者には最高裁のいう『更生を妨げられない利益』が生じ、被害者には『もう、そっとしておいてほしい』という要求が生じるようになり、公表時の適法性と、どのように折り合いを付けるかが問題として表面化してきました。

また、芸能人のプライバシーのように、公表時には本人の『同意』があったものの、引退や時間経過といった事情の変化により、もう本人は公表の継続を望んでおらず、社会としても公表の継続は必要性ない、という事案もあります。一般人がフェイスブック等で自ら公表していたプライバシー情報についても同様です。

これまで『プライバシーの放棄』として論じられてきたところですが、人格権は放棄できません。また、いったん放棄すると二度とプライバシー権を行使できないことになるため、別の考え方が必要となっていました」

●社会から忘れられて、平穏に生活を営むための権利

今回のさいたま地裁決定をどう評価するか。

「さいたま地裁決定が『忘れられる権利』に言及したのは、従来の『プライバシー権』と比べて、法律的な要件が異なっていたからではないかと考えています。

事件・事故の『加害者』や『被害者』の情報、また、公表時にプライバシーの掲載に『同意』していた人の情報など、公表時は適法でも、時間経過や事情の変更により、その人のプライバシーを人々の記憶に残すことが不適切となるケースがあります。 

そういった情報を社会から忘れられて、平穏に生活を営むための権利が、さいたま地裁決定の言及した『忘れられる権利』なのだと思います。

もちろん、『知る権利』等との調整は必要ですから、何でも『忘れられる』わけではありません。どのように調整するかといった議論は、まだ始まったばかりです」

神田弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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