8365.jpg
噴火への漠然とした不安で「箱根」宿泊をやめたら・・・キャンセル料を払う必要ある?
2015年05月12日 11時08分

国内有数の温泉観光地である「箱根」が揺れている。神奈川県箱根町の大涌谷(おおわくだに)周辺について、小規模な噴火が発生する可能性があるとして、噴火の警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられ、人の立ち入りが規制されているのだ。

幸い、噴火の発生には至っていないが、観光への影響が心配される。報道によると、立ち入りが規制された大涌谷や周辺の温泉などでは、宿泊キャンセルなどの影響が出始めているという。立ち入りが規制されたのは、大涌谷周辺のエリアに限られており、エリア外は通常通り観光することができるが、ネット上の書き込みを見ると「箱根に行くのは不安」と感じている人も少なくないようだ。

規制地域ではないにもかかわらず、「何となく怖い」という漠然とした不安を理由に、ホテルなどの「宿泊予約」を直前にキャンセルした場合、通常のように違約金(キャンセル料)を支払わなければいけないのだろうか。それとも、自然災害を理由にすれば、キャンセル料は負担しなくてもいいのか。消費者問題にくわしい上田孝治弁護士に聞いた。

国内有数の温泉観光地である「箱根」が揺れている。神奈川県箱根町の大涌谷(おおわくだに)周辺について、小規模な噴火が発生する可能性があるとして、噴火の警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられ、人の立ち入りが規制されているのだ。

幸い、噴火の発生には至っていないが、観光への影響が心配される。報道によると、立ち入りが規制された大涌谷や周辺の温泉などでは、宿泊キャンセルなどの影響が出始めているという。立ち入りが規制されたのは、大涌谷周辺のエリアに限られており、エリア外は通常通り観光することができるが、ネット上の書き込みを見ると「箱根に行くのは不安」と感じている人も少なくないようだ。

規制地域ではないにもかかわらず、「何となく怖い」という漠然とした不安を理由に、ホテルなどの「宿泊予約」を直前にキャンセルした場合、通常のように違約金(キャンセル料)を支払わなければいけないのだろうか。それとも、自然災害を理由にすれば、キャンセル料は負担しなくてもいいのか。消費者問題にくわしい上田孝治弁護士に聞いた。

●約款の内容に従って決まる

「宿のキャンセル料については、基本的に各宿の定めている約款(やっかん)の内容に従って、キャンセル料を支払う必要があるかどうかが決まります。

約款上、宿泊の数日前など、そもそもキャンセル料の発生しない時期にキャンセルしたのであれば、理由が何であれ、キャンセル料を支払う必要はありません」

では、「大涌谷の周辺だから、なんとなく不安」という理由でキャンセルはできるのか。

「一般的な宿泊約款では、『宿泊客の責めに帰すべき事由』によりキャンセルした場合には、所定のキャンセル料を支払うことになっています。

たとえば、災害などを理由に宿泊予約をキャンセルせざるを得なくなった場合では、キャンセルすることは不可抗力です。宿泊者の責任とは評価できません。

そうしたケースであれば、キャンセル料を支払う必要はないでしょう」

つまり、立ち入り規制エリアが拡大され、自分が宿泊予約していた施設が含まれるようなことになれば、キャンセルしても、客側に「責めに帰すべき事由」はなく、キャンセル料は支払わなくてもよい可能性が高くなるということか。

「はい。しかし、そうでない場合は事情が異なります。通常通り観光でき、宿泊サービスも通常通り受けられる程度ということですから、キャンセルせざるを得ない状況とまでは言えません。

したがって、宿泊客が主観的に『なんとなく不安』と感じているというのは、宿泊客側の事情、つまり『宿泊客の責めに帰すべき事由』と考えられるわけです」

もちろん客の事情をくみ取って、キャンセル料を取らないという宿の判断も実際にはありそうだが、法律論で考えると、支払わなければならないようだ。

●国交省が定めた「標準約款」も参考に

「旅行契約に関しては、国土交通省が定めた、『標準旅行業約款』も参考になります。この約款では、天災などの場合には、『旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき』にキャンセル料なしで旅行契約をキャンセルできるとされています。

したがって、宿泊契約についても、宿泊客が主観的になんとなく不安と感じるだけではなく、客観的にある程度、安全かつ円滑な宿泊サービスの提供が困難と言えるような状況にならない限り、所定のキャンセル料を支払わなければならないと思われます」

上田弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る