8632.jpg
小池知事の発言検証、「バー」は法律上「接待を伴う飲食店」なのか?
2020年03月31日 15時32分

「若者にはカラオケ、ライブハウス、そして中高年にはバーやナイトクラブなど『接待』を伴う飲食店に行くことは、当面、お控えいただきたい。自粛していただきたいということでございます」

東京都の小池百合子知事は3月30日夜、臨時の記者会見を開いて、このように呼びかけた。新型コロナウイルスの感染が広がる中、感染経路が不明なうち、深夜に営業している飲食店で感染したと疑われる事例がみられるからだ。

しかし、小池知事のこの発言に対して、ネット上では、ある疑問の声があがっている。それは「バーは接待を伴う飲食店ではない」というものだ。はたして、どういうことなのだろうか。

「若者にはカラオケ、ライブハウス、そして中高年にはバーやナイトクラブなど『接待』を伴う飲食店に行くことは、当面、お控えいただきたい。自粛していただきたいということでございます」

東京都の小池百合子知事は3月30日夜、臨時の記者会見を開いて、このように呼びかけた。新型コロナウイルスの感染が広がる中、感染経路が不明なうち、深夜に営業している飲食店で感染したと疑われる事例がみられるからだ。

しかし、小池知事のこの発言に対して、ネット上では、ある疑問の声があがっている。それは「バーは接待を伴う飲食店ではない」というものだ。はたして、どういうことなのだろうか。

●感染リスクが高い「3つの密」が重なる場

小池知事は会見で、クラスター対策班からの報告として、夜間から早朝にかけて営業しているバー、ナイトクラブ、酒場など、「接客」を伴う飲食業の場で感染したと疑われる事例が多発していることが明らかになったとした。

さらに、「こうした場は、感染リスクが高いといわれる『3つの密』、換気の悪い『密』閉空間、多くの人が『密』集する場所、近距離での『密』接した会話が、より濃厚なかたちで重なる場となっている」と指摘した。

そのうえで、「とくに、若者にはカラオケ、ライブハウス、そして中高年にはバーやナイトクラブなど『接待』を伴う飲食店に行くことは、当面、お控えいただきたい。自粛していただきたい」と述べた。

●法律上、バーは「接待」できない

一方で、いわゆる「風営法」では、小池知事の発言に関連する飲食店は、次のように規定されている。

(1)「深夜酒類提供飲食店営業」:深夜(午前0時〜午前6時)、客に酒類を提供して営む飲食店営業(主食を提供する店は除く)。

(2)「特定遊興飲食店営業」:深夜、客に遊興させて、かつ飲食させる飲食店営業(酒類を提供して営むものに限る)。

(3)「接待飲食店等営業」:客を接待して、遊興または飲食させる営業。

さらに、「接待」は「歓楽的雰囲気を醸し出す方法で、客をもてなすこと」とされている。

つまり、法律上は、(3)が「接待を伴う飲食店」で、キャバクラなどが含まれている。しかし、ナイトクラブは(2)、バーは(1)に含まれているのだ。

●東京都の回答は?

上記のように、小池知事の発言は「接客」と言ったり、「接待」と言ったりして、言葉がぶれている。単なる言い間違いの可能性もあるし、「接待を伴う」がバーにかかっていない、ということかもしれない。

東京都福祉保健局に聞いてみたところ、担当者は「小池知事の発言は、新型コロナウイルス感染症対策本部会議の資料にもとづいている。『3密』を避けるという趣旨・文脈での発言であり、あくまで例としてあげたものだ」と答えた。

正直なところよくわからない説明だが、資料にもとづく発言だったとすると、どうやら言い間違いの可能性が高そうだ。

新型コロナの本質ではないかもしれないが、こうした権力者の言葉の使い方がのちに尾を引く可能性はある。なお、都の新型コロナウイルス感染症対策本部会議の資料は以下のURLから確認できる。

・(第15回)東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議資料
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1007288/1007556.html

・東京都:孤発例における特定業種に関連することが疑われる事例の集積
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/007/556/2020033003.pdf

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る