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相続税と贈与税、結局どっちが節税できる?
2017年09月24日 08時49分

2015年の制度改正によって基礎控除額が引き下げられ、税率が高くなってしまった相続税。毎年亡くなる人が増えることに比例して、相続税の支払い対象者が増え続ける。とはいえ課税価格が(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えないと課税対象にはならない。一方で、生前からの相続税対策のために生命保険や不動産購入をすすめられた経験はないだろうか。これらの商品は節税にはつながるとはいえ、銀行員やファイナンシャルプランナーと対等に会話するために知識を身に着けておかねばなるまい。(ライター・ぺったん総研)

2015年の制度改正によって基礎控除額が引き下げられ、税率が高くなってしまった相続税。毎年亡くなる人が増えることに比例して、相続税の支払い対象者が増え続ける。とはいえ課税価格が(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えないと課税対象にはならない。一方で、生前からの相続税対策のために生命保険や不動産購入をすすめられた経験はないだろうか。これらの商品は節税にはつながるとはいえ、銀行員やファイナンシャルプランナーと対等に会話するために知識を身に着けておかねばなるまい。(ライター・ぺったん総研)

●相続税を節税する意義を見失っていないだろうか

相続税に対する生前対策が必要なのはなぜだろうか。単純に「税が高いから」だけだと説明が弱い。この記事の冒頭に掲載している表の通り、相続税よりも贈与税の方が税率が高いからだ。ちなみに、相続税と贈与税の関係だが、贈与税は生きているうちに資産の移転があったときに支払う税、相続税は亡くなったときに支払う税であると理解しておこう。贈与税は、そもそも相続税逃れを防ぐための税法なので税率が高いのである。

贈与税の基礎控除は一人あたり110万円/年。一般税率と特例税率の2種類があるが、直系尊属(父母や祖父母など)から、20歳以上の者(子や孫など)への贈与の場合に特例税率が適用になる。

法定相続人が子ども1人のみの場合で、4,000万円の資産を相続した場合、課税対象は、4,000-(3,000+600×1)=400万円で相続税率は10%。ゆえに相続税額は40万円になる。生前に一括で贈与した場合は、特例税率が適用されたとすると、課税対象は4,000-110=3,890万円で贈与税率は50%、そこからの控除額が415万円なので、3890×0.5-415=1,530万円となる。単純に計算しただけだと相続税を支払った方が1,000万円以上得になる。

上記はあくまで生前に全額を贈与するという極端な事例で、実際にどちらが高くなるのかはあくまでケースバイケースだが、生前対策を行うときは、贈与税の方が税率が高いことを念頭におき、その上で非課税になる制度を使って、相続税をいかに少なくするかを考えたい。

●生命保険加入や不動産購入による節税を考える前に知っておくべき制度

銀行の窓口やファイナンシャルプランナーが勧めてくれる生命保険加入や不動産購入は確かに節税効果がある。生命保険の保険金は「500万円×法定相続人の数」が非課税となる。不動産の場合は建築時の費用ではなく、固定資産税の評価額が相続時の評価対象になるため、その分だけ税額が少なくできるからだ。しかしこれらの節税商品を駆使する以前に、適用できる非課税制度があるので紹介しよう。

(1)贈与税の110万円/年あたりの「暦年贈与」は継続性が認められないようにする

贈与税の基礎控除額を毎年適用すれば、その年数分だけ非課税にできると考えがちだが、「初めからまとまった金額を贈与した」と税務署に判定された場合、非課税にはならずまとまった金額全てに対して贈与税が課税されることになる。判定を回避するためには、毎年贈与契約書を作成して都度贈与していることを明確にし、受け取る側は贈与された認識を持つことが必要である。中には意図的に110万円以上の金額を贈与し贈与税の申告をすることで、税務署に都度贈与があったことを認識させておく。と推奨している税理士の先生がいるが、かえって税務調査の対象になる懸念があるため避けたほうがよい。

また、暦年贈与を活用する信託商品(例えば、http://www.lifeplan.tr.mufg.jp/zei/reki/)もあるが、この商品の利用したからといって税務署に指摘されないということではない。

(2)「相続時精算課税制度」で2,500万円まで贈与税が非課税になるが相続評価はされる

一括で多額の贈与を非課税で行える「相続時精算課税制度」を使うと、2,500万円までの贈与が非課税でできる。「相続時精算課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があり、一度提出すると110万円/年の暦年贈与による控除が使えなくなってしまう。また贈与税は非課税であるが、相続税を計算するときの評価には含まれるので、無税で贈与できるというわけではない。

(3)教育資金贈与は「一括贈与制度」以外でも非課税にできる

30歳未満の子供や孫に対して教育資金として使うことを条件に1,500万円までの贈与が非課税になる「教育資金一括贈与制度」がある。2019年3月31日までの時限制度であり、金融機関へ領収書の提示が必要など手続きが面倒くさい一面がある。また30歳までに使いきれなかった分に対しては贈与税が課税されてしまう。ちなみに1,500万円を丸々使わなかった場合は366万円課税されることになる。ところで以下の「贈与税がかからない場合」の第2項の説明書きを見てほしい。

国税庁タックスアンサー

「No.4405 贈与税がかからない場合」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4405.htm

ここに記載のある通り、必要な都度直接教育費に充てられた費用であれば全額非課税になるのである。「都度直接」というキーワードがポイント。「一括贈与」制度と異なり必要なときに必要な分だけしか非課税にならないが、金融機関への領収書提示は不要なので、まずはこちらの制度を利用するとよい。

(4)相続開始前の3年以内に行った贈与は相続税評価に含まれる

(1)での暦年贈与による非課税が適用されたとしても、3年以内に相続が行われた場合は「生前贈与加算」により相続税の評価額に贈与した金額が加算される。もし贈与税を支払っていた場合はその分は控除されるので、二重課税となる心配はない。

例外として、(3)教育資金贈与の一括贈与制度の場合は加算されない。また、孫に対して教育資金として都度贈与した場合でも、孫が遺言を受けての相続財産取得でなければ対象にならない。他にも夫婦間での不動産購入費用を贈与した場合、その費用が2,000万円まで非課税になる「贈与税の配偶者控除」や自分が住む家の購入資金の贈与1,000万円までが非課税になる「住宅取得資金の贈与」も生前贈与加算の対象外だ。

●まとめ

生命保険や建物購入の提案を受けるときに、ここで紹介した知識を銀行員やファイナンシャルプランナーにぶつけてみて欲しい。さらに「資産保全」の考え方を持っておくとよりよい。もし4,000万円の現金を持っていたとき、言われるがままに建物を購入してしまうと、相続税は節税できる。一方で手元の現金が失われてしまうデメリットがあるのだから。

(弁護士ドットコムニュース)

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