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死刑の代わり「終身刑」巡り議論、「社会復帰の機会奪う」問題も 日弁連シンポ
2018年11月02日 10時02分

日本弁護士連合会(日弁連)は10月23日、シンポジウム「死刑廃止の実現を考える日」を東京・霞が関の弁護士会館で開いた。欧州の主要国をはじめ多くの国が既に死刑を廃止したなか、今後、日本において死刑存廃について大きな国民的議論を呼ぶ可能性もある。有識者のほか外国高官も招かれ、死刑廃止をめぐって意見がかわされた。

日本弁護士連合会(日弁連)は10月23日、シンポジウム「死刑廃止の実現を考える日」を東京・霞が関の弁護士会館で開いた。欧州の主要国をはじめ多くの国が既に死刑を廃止したなか、今後、日本において死刑存廃について大きな国民的議論を呼ぶ可能性もある。有識者のほか外国高官も招かれ、死刑廃止をめぐって意見がかわされた。

●終身刑は「死刑より厳しい刑罰になりうる」

シンポジウムでは、哲学者で死刑制度について考察する著書も出している萱野稔人教授(津田塾大)が、「死刑よりも厳しい刑罰になりうる」として終身刑(無期刑と異なり、仮釈放の可能性がない)の導入を提言。そして、「死刑を廃止するならば、国民の処罰感情にこたえる形の刑罰は必要」とし、「死刑になりたいとの理由で凶悪な犯罪を起こす人を許さない刑罰にもなる」と述べた。

公権力が犯罪行為を取り締まる以上、「冤罪の問題は避けられない」というのが萱野教授の考え方だ。犯人をつかまえて処罰して、国民から役立たずと言われないように公権力が必死になるからこそ、冤罪が生まれるのだという。「権力がなにかを決定した場合は取り消しにくい。再審の壁はとても高い」と指摘した。

●「終身刑から無期懲役に変更する制度」を検討

日弁連は、死刑にかわる刑罰として、終身刑の導入に前向きだ。

2016年には死刑制度の廃止を求める宣言(死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言)を出している。この中で、「2020年までに死刑制度の廃止を目指すべき」とし、死刑の代替刑として「仮釈放の可能性がない終身刑制度」「重無期刑制度」(仮釈放の開始期間を20年、25年等に延ばす)などを提案した。

足立修一弁護士(日弁連「死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部」副本部長)は、「刑罰は受刑者を更生させ、社会復帰させるためのもの」とし、仮釈放なき終身刑が受刑者の社会復帰の機会を完全にうばってしまうことを問題視した。そこで「裁判所の関与によって、終身刑から無期懲役に変更する制度についても検討している」という。

●死刑をなくせば、凶悪犯罪は増えるのか

死刑に犯罪を抑止する効果があるのかについては、科学的に証明されていないことがシンポジウムでは指摘された。

約30年前のものになるが、国連は「死刑が終身刑より大きな犯罪抑止力をもつことを科学的に証明できなかった」とする研究結果(1989年)を発表している。また、2008年に鈴木宗男衆院議員が出した質問主意書で、政府は「死刑の犯罪抑止力を科学的、統計的に証明することは困難」との認識を示している。

シンポジウムには駐日英国大使と駐日EU代表部公使も招かれ、「死刑は社会の安全を保障するものではない」「冤罪であれば、とりかえしがつかない」などと、日本も早期に死刑を廃止するよう訴えた。

死刑制度に関する政府による世論調査(2014年調査)では、約8割の国民が「死刑もやむを得ない」と回答している。消極的ながら死刑に賛成する理由は、「死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」が53.4%、「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」が52.9%の順で多かった(複数回答・上位2項目)。

同じ調査で、死刑がなくなった場合は凶悪な犯罪が「増える」と回答した割合は57.7%と半数を上回る。「わからない・一概にはいえない」は28%、「増えない」は14.3%だった。

(弁護士ドットコムニュース)

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