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NHK受信料、滞納20年で一切不要に? 未だに残る「時効問題」、最高裁で係争中
2018年01月03日 08時41分

NHK受信料をめぐる昨年12月6日の最高裁大法廷判決は、明確になっていなかった契約未締結だった場合の消滅時効についても判断した。契約がないときは、判決の確定をもって契約が成立し、そこから時効が進行するというものだ。テレビなどの設置時まで遡って全期間の受信料を支払う義務がある。

だが、受信料の時効をめぐる論点は他にも残っている。現在、最高裁では契約後、滞納期間が20年になれば、受信料がゼロになるのではないかという「定期金債権」の時効が争われている。

NHK受信料をめぐる昨年12月6日の最高裁大法廷判決は、明確になっていなかった契約未締結だった場合の消滅時効についても判断した。契約がないときは、判決の確定をもって契約が成立し、そこから時効が進行するというものだ。テレビなどの設置時まで遡って全期間の受信料を支払う義務がある。

だが、受信料の時効をめぐる論点は他にも残っている。現在、最高裁では契約後、滞納期間が20年になれば、受信料がゼロになるのではないかという「定期金債権」の時効が争われている。

●1度も払わずに20年滞納で支払う必要がなくなる?

定期金債権とは、年金のように、決まった期間ごとにお金の支払いを受けられる権利のこと。20年滞納されると、お金をもらえる権利そのものがなくなってしまう(民法168条1項)。

イメージとしては、定期金債権(基本権)という「枝」から、月々の受信料の支払いを受ける「定期給付債権」(支分権)という「葉っぱ」が生えてくる感じだ。なお、支分権である受信料の時効は2014年の最高裁判決で5年と決まっている。

滞納が5年以上続けば、時効により月々の受信料という葉っぱが順次落ち始め、20年たつと新しい葉っぱ(受信料)自体も作り出せなくなる、という理屈が成り立つ。「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」(民法144条)ので、20年の時効を迎え、枝が腐れば、葉っぱは全部落ちてしまうと考えられる。

実際、受信料をめぐる大阪高裁の2014年5月30日の判決は、受信料に民法168条の適用がないとする合理的理由は見当たらず、「長期間にわたって定期金債権が行使されない場合には、権利者の懈怠は明らか」などとして、NHKの受信料も対象になると述べている(ただし、定期金債権について直接争った裁判ではない)。しかし2017年9月、同じ大阪高裁で、受信料は対象外とする判断が下された。

●定期金債権をめぐる裁判例は少ない

この裁判は、受信料滞納でNHKから訴えられた大阪市の男性が、定期金債権の時効で支払いは不要と主張しているもの。男性は1995年7月に受信契約を締結して一度受信料を支払って以来、受信料を滞納。一方、NHKも徴収を忘れていたようで、2016年になって、21年分の受信料を請求したが、男性が拒否したことから、裁判になった。

一審の大阪地裁で、男性は5年の消滅時効の援用(適用)を表明。さらに、定期金債権の時効(20年)により、一切支払う必要がないと主張した。しかし、一審は、定期金債権の消滅までは認めず、男性側に5年分の支払いを命じた。2017年9月の大阪高裁判決も、一審判決を支持している。

一審・二審ともに、NHK受信料が定期金債権であることは認めている。争点は、その「例外」だ。

定期金債権には、賃貸借契約における賃料債権などの例外がある。たとえば、家賃で考えると、20年払っていないからといって、定期金債権がなくなると、相手は家に住み続けられるのに、持ち主は家賃を請求する権利そのものを失ってしまう。不公平であるだけでなく、賃料が発生しない「賃貸借」契約は定義的にありえないので、定期金債権の消滅は適用されないと解釈されている。

一審・二審で、NHKは受信料が定期金債権の例外に当たると主張。裁判所もこれを支持し、権利は消滅しないと判断した。特に一審判決は、受信料を支払わなくても、テレビを置き続けられるなら、NHKにとって非常に不利であり、設置者間での不公平感も出る、と述べている。

男性側代理人の前田泰志弁護士は、「定期金債権をめぐる裁判例や解説はあまりなく、不明瞭な部分が多い。しかし、NHKの放送は不特定多数の公衆に向けて行われるものである(放送法2条1号)ことからすれば、民法168条適用の例外とされる永小作権や賃貸借契約と同様に扱うのは疑問がある。受信料制度の問題の一端をあらわした事件だ」。

定期金債権について定めた現行の民法168条1項については、1度も支払いがない場合についての時効を20年としているものの、1回でも支払いがあった場合については明確にされていない。2020年施行の改正民法では、この点などが改められる。

(弁護士ドットコムニュース)

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