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急逝した夫名義の「自宅」は誰のもの?  遺言なし、妻は「子に渡さず住み続けたい」
2025年09月29日 10時13分

夫の遺産を子どもと半分づつわけなければならないのですが、住んでいるマンションをお金にしないといけないのでしょうかーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者によると、夫が遺言書を残さず急逝し、遠方に住む子どもと、相続をどうするか話し合いをしているそうです。遺産として夫婦で生活していた夫名義のマンションがあり、相談者は今後もそこに住み続けたいと考えているそうです。

相談者がマンションを売ることなく、住み続けることはできるのでしょうか。

以下、いくつかの方法を挙げてみます。

夫の遺産を子どもと半分づつわけなければならないのですが、住んでいるマンションをお金にしないといけないのでしょうかーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者によると、夫が遺言書を残さず急逝し、遠方に住む子どもと、相続をどうするか話し合いをしているそうです。遺産として夫婦で生活していた夫名義のマンションがあり、相談者は今後もそこに住み続けたいと考えているそうです。

相談者がマンションを売ることなく、住み続けることはできるのでしょうか。

以下、いくつかの方法を挙げてみます。

方法1:マンションを相談者のものにして、子どもにお金を払う

最も単純な方法は、マンション全部を相談者自身の名義にしたうえで、その価値の半分のお金を子どもに支払う方法です。

たとえば、2000万円分の価値があるマンションであれば、全部を相談者の名義にする代わりに、子どもに1000万円を支払う、という方法です。

しかし、相談者にお金がない場合、そもそもこの方法をとることができません。

もちろん、話し合いによって分割払いにしてもらうことは考えられますが、分割にしても苦しいケースは多いでしょう。

●方法2:マンションをすべて相談者のものにして、子どもに権利を放棄してもらう

この方法は、相談者が子どもと話し合って、マンションの所有権をすべて相談者自身の名義にさせてもらい、子どもには権利を放棄してもらうというものです。

先に書いたように、2,000万円の価値があるマンションを、相談者が1人で相続すれば、子どもにも1000万円分の相続権があるため、お金で支払うことになります。

しかし、子どもがその権利を放棄することに同意してくれれば、問題はなくなります。 もちろん、これはあくまで子どもの「同意」が必要なため、すんなり合意が得られるとは限りません。

なお、実務上は、相続財産を受け取らないことに合意する相続人は、実は案外多いように思います。

●方法3:マンションの持ち分を半分ずつにする

これは、マンションの所有権を、相談者と子どもで半分ずつ持つという方法です。この場合、マンションの登記簿上は、相談者と子どもとで所有権が「共有」される状態になります。

しかし、共有名義とするのは、特に共有者同士が疎遠な場合、なにかとトラブルになりやすいのであまりおすすめできません。

また、親子で一緒に仲良く住むのであればあまり問題ないのですが、仮にこの状態で相談者だけがマンションに住み続ける場合、子どもが「自分は住めないのに、お母さんだけ住んでいてずるい!」と感じる可能性があります。

そのため、子どもから「マンションに住んでいる間、家賃分のお金を払ってほしい」などと求められるかもしれません。法的には、子どもは住んでいないのに相談者だけが利益を得ているとして、不当利得返還請求ができる可能性があるからです。

●方法4:配偶者居住権を利用する

2020年の民法改正で新しくできた「配偶者居住権」という制度を利用する方法もあります。

これは、相談者が死ぬまで、もしくは決まった期間、マンションに無償で住み続けることができる権利です。

相談者が配偶者居住権を得て、子どもがマンションの所有権を得る、という方法が考えられます。つまり、マンションの所有者は子どもになりますが、相談者はそこに住み続けることができるというわけです。

例えば、2000万円のマンションを例にしてみましょう。

この制度を使うと、マンションの所有権は子どもが持つことになりますが、子どもは「自分が住んだり、人に貸したりできない」という『負担付き』の所有権を得ることになります。

この「負担付きの所有権」は通常の所有権よりも価値が低く評価されます。

たとえば、マンションの価値が2000万円だった場合、負担付きの所有権は1200万円と評価され、相談者の配偶者居住権は800万円と評価される、といった具合です。

このように、マンションの価値を「所有権」と「配偶者居住権」に分けることで、相談者は住む場所を失わず、子どもも本来の相続分をしっかり受け取ることができるため、双方にとって納得しやすい解決策となります。

ただし、この制度を利用するためには、遺言書に記載するか、遺産分割協議で話し合い、合意する必要があります。

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