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学校アスベスト訴訟、教員側が逆転敗訴…裁判所「厚労省より厳しい」独自基準示す
2018年08月29日 17時24分

校舎のアスベスト(石綿)が原因で心膜中皮腫を発症したとして、2007年に亡くなった埼玉県戸田市の公立小学校教諭(当時54)の妻が公務災害の認定を求めている「学校アスベスト訴訟」で、東京高裁(齊木敏文裁判長)は8月29日、一審判決を取り消し、妻側の逆転敗訴判決を出した。

判決では、厚労省のアスベストの労災基準にない「定量的」な基準(具体的な濃度)が示されており、妻側は「これが適用されたら、労災認定される人は一人もいない」と憤っている。上告する方針。

校舎のアスベスト(石綿)が原因で心膜中皮腫を発症したとして、2007年に亡くなった埼玉県戸田市の公立小学校教諭(当時54)の妻が公務災害の認定を求めている「学校アスベスト訴訟」で、東京高裁(齊木敏文裁判長)は8月29日、一審判決を取り消し、妻側の逆転敗訴判決を出した。

判決では、厚労省のアスベストの労災基準にない「定量的」な基準(具体的な濃度)が示されており、妻側は「これが適用されたら、労災認定される人は一人もいない」と憤っている。上告する方針。

●「公務外の災害」認定の取り消しを求めたが…

亡くなったのは四條昇さん。2010年に「石綿健康被害救済法」の救済給付の認定を受けたあと、地方公務員災害補償基金に公務災害も申請していたが、認められず、判断の取り消しを求めて裁判になった。

東京高裁は、一審のさいたま地裁判決に続き、四條さんが約8年勤めていた小学校の階段天井にアスベストが使われていたことは認めたが、「公務外での被曝」として亡くなった原因とは認めなかった。

●裁判所の要求「厚労省の基準以上のもの」

妻側代理人は、今回の判決で裁判所が「独自の認定基準」を作り出したと批判している。

厚労省の「石綿による疾病の認定基準」では、中皮腫について石綿に曝露する作業に「1年以上」従事していることなどがポイントとしてあげられている。

「石綿が使われたのは、かなり昔の話なので測定が難しく、(被爆量の)定量的なデータは求めていない」(厚労省担当者)からだ。そのため、統計的なデータに基づき、従事期間1年以上を基準としている。

裁判では、四條さんの仕事が「石綿に曝露する作業」と言えるかが争点になったが、判決は、労働安全衛生法に基づき「(アスベストの1つ)白石綿(クリソタイル)のみのときには(空気1リットルあたり)150本、クリソタイル以外の石綿繊維を含むときは30本を超える」という具体的な濃度が必要だと示した。

妻側代理人の南雲芳夫弁護士は、「厚労省の基準以上のものを原告に要求している。(当時は)測定していないので、リッター何本なんて証明できない」。

南雲弁護士(左)

学校でのアスベスト被害をめぐっては、2018年4月、名古屋高裁で基準の1年を下回る「8カ月」の暴露期間で愛知県の男性教諭(当時64)の公災が逆転で認定されている。

「名古屋の事件でも曝露濃度の話は出ていない。(四條さんは)8年4カ月。なんでダメなんですか」(南雲弁護士)

●隠れたアスベスト被害「これでは誰も救えない」

四條さんの妻・延子さん(66)は、アスベストの証拠を探すため、過去の資料を探したり、四條さんの元同僚・児童などの証言をかき集め、「夫と共に戦ってきた」。

会見後、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「証明できないものを求めるのは理不尽。知らずにアスベスト被害にあっている人は大勢いるはずなのに、これでは誰も救えない」と語った。

(弁護士ドットコムニュース)

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