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GLAY楽曲「無償提供」の誤解…結局、JASRACからは逃げられない
2017年12月12日 11時30分

人気ロックバンド「GLAY」と所属事務所ラバーソウルが12月10日、GLAY名義で発表している楽曲について、結婚式で使う場合に限って、「著作隣接権」の料金を使用者から徴収しないと発表した。

公式サイトによると、GLAYの楽曲を「結婚式で使用したい」という問い合わせが多数あったという。「結婚式という人生の素晴らしい舞台で自分達の曲を使用してもらえる事は大変喜ばしいことである」というメンバーの思いから、今回の「無償提供」が実現したようだ。

今回の発表について、ネット上では称賛の声があがっている。一方で、使用法によって、演奏権と複製権の使用料については、JASRACなど楽曲の管理団体に支払う必要があるとしている。

つまり、完全に「無償」というわけでないのだが、このあたりが少しわかりづらい。はたして、今回のGLAYの「無償提供」はどういう意味があるのだろうか。著作権法にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

人気ロックバンド「GLAY」と所属事務所ラバーソウルが12月10日、GLAY名義で発表している楽曲について、結婚式で使う場合に限って、「著作隣接権」の料金を使用者から徴収しないと発表した。

公式サイトによると、GLAYの楽曲を「結婚式で使用したい」という問い合わせが多数あったという。「結婚式という人生の素晴らしい舞台で自分達の曲を使用してもらえる事は大変喜ばしいことである」というメンバーの思いから、今回の「無償提供」が実現したようだ。

今回の発表について、ネット上では称賛の声があがっている。一方で、使用法によって、演奏権と複製権の使用料については、JASRACなど楽曲の管理団体に支払う必要があるとしている。

つまり、完全に「無償」というわけでないのだが、このあたりが少しわかりづらい。はたして、今回のGLAYの「無償提供」はどういう意味があるのだろうか。著作権法にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

●「著作権」と「著作隣接権」の違いとは?

「CDなどの楽曲は大きく分けて、作詞・作曲したことによる『著作権』と、レコーディングしてCD原盤を制作したことによる『著作隣接権』の2種類の権利が含まれています。

『著作隣接権』はさらに、歌唱・演奏したことによる『実演家』の権利と、多額の費用をかけてレコーディングしてCD原盤を制作したことによる『レコード製作者』の権利(いわゆる『原盤権』)の2種類があります。

今回のケースでは、『原盤権』のほうが問題になると考えてください。

『著作権』は、ご存知のとおり、JASRACやNexToneなどの著作権管理事業者が管理しています。一方で、『原盤権』は通常、そのCDをリリースしているレコード会社が管理窓口になっています」

●結婚式での楽曲の利用

「結婚式で楽曲を利用する場合について、以下の3つのパターンが考えられます。

1つ目は、自分たちで楽曲を歌唱・演奏する場合です。この場合は、『著作権』に含まれる『演奏権』という権利を処理する必要があります。

『演奏権』を管理しているのはJASRACですので(NexTone は事業として『演奏権』を管理していません)、JASRACに『演奏』利用の手続きをして、利用料を支払う必要があります。

式場やホテルによっては、JASRACと『演奏権』の包括契約をしている場合があります。その場合は、JASRACへの手続きは不要です。

2つ目に、式場でCDをそのまま流す(再生する)場合です。この場合は、CD音源を利用しているものの、法律上、『原盤権』には『演奏権』が含まれないので、1つ目の場合と同じ手続きで大丈夫です。

3つ目は、結婚式のBGM用CDを作る場合や、前もって結婚式に流す映像を制作して、その動画にCD音源を挿入する場合です。

この場合は、楽曲の演奏と複製をしているので、JASRACやNexToneに『演奏』と『複製』利用の手続きをして、利用料を支払う必要があります。また、この場合は、CD音源を複製することになるので、『原盤権』の処理が必要になってきます。

今回、GLAYが『無償提供する』と発表したのは、この『原盤権』の処理についてです。

『原盤権』の処理は、『著作権』と比べて難しく、楽曲によっては『時間がかかったあげく、利用の許諾が得られなかった』なんていうこともありえます。ですので、GLAYが『無償提供する』と発表したのは、とても大きな意義があります。

ただ、『著作権』は、JASRACやNexToneが管理しており、その利用料まで無償になるわけではありません。この点は誤解がないように注意が必要です」

●他のアーティストが続く可能性は?

「今回のGLAYの発表によって、他のアーティストも『無償提供』が続くのではないか、と思われるかもしれませんが、それは少し難しいと思います。

なぜなら、『原盤権』をアーティスト自身が管理していることは稀で、ほとんどは所属のレコード会社が管理しているからです。ですので、通常は、アーティストの一存で、『無償提供』を決めることはできません。

今回の発表は、自身で原盤権を管理しているGLAYだからこそ、可能だったわけです」

(弁護士ドットコムニュース)

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