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東芝・不適切会計は「報・連・相」の不徹底が原因か? 公認会計士が背景を分析
2015年06月14日 11時33分

不適切会計の発覚で、東芝が6月25日の定時株主総会で決算報告ができない異例の事態になっている。これまでに、2011年度から2013年度までのインフラ工事に関して、500億円の営業利益が過大に計上された可能性のあることがわかっている。ほかにも、テレビやパソコン、半導体事業において、売上高や利益が正しく計上されていなかった可能性がある。さらに6月12日には、自主チェックの結果、新たに12件36億円の営業利益の不適切計上が判明した。問題の背景には何があるのか、公認会計士の李顕史さんに聞いた。(取材・構成/具志堅浩二)

不適切会計の発覚で、東芝が6月25日の定時株主総会で決算報告ができない異例の事態になっている。これまでに、2011年度から2013年度までのインフラ工事に関して、500億円の営業利益が過大に計上された可能性のあることがわかっている。ほかにも、テレビやパソコン、半導体事業において、売上高や利益が正しく計上されていなかった可能性がある。さらに6月12日には、自主チェックの結果、新たに12件36億円の営業利益の不適切計上が判明した。問題の背景には何があるのか、公認会計士の李顕史さんに聞いた。(取材・構成/具志堅浩二)

●「不正」なのか「意図しない誤り」なのか

不適切会計の仕組みはどのようなものだろうか。

「インフラ工事は、複数の年度に渡るものが少なくありません。このため、工事の進み具合に合わせ、各年度に売上高などを振り分けて計上する『工事進行基準』が採用されるケースがあります。東芝も、この基準を採用していました」

売上高の割り振り方は、次の通りだ。まず、工事全体のコスト(原価総額)を前もって見積もる。次に、単年度の工事コストが、原価総額の何%を占めるかを計算する。その結果、もしも25%だったとしたら、工事も25%進んだと想定する。さらに売上高も全体の総額に25%をあてはめて、その年度の売上高を計上する、というものだ。

ポイントは、原価の前倒しにある。会計期間のうち、工事の進み具合(進捗)が大きければ、売上高も大きくなる。そこで、翌年度以降分の利益を当期に振り替えることにより、売上と利益を大きいように見せかけることができる。つまり、その年度の業績を、実際よりも好調に見せかけることができてしまう。

テレビやパソコン、半導体事業では、これとは別の問題が指摘されているが、いずれにしても、実態と異なる業績が計上された可能性があるということで、調査が進められている点は同じだ。

では、不適切な会計は意図的なものだったのだろうか。

「東芝の場合、経営管理をする上で優れた連結会計システムを導入していると聞いています。それにも関わらずこのような問題が起きたのですが、おそらく意図的ではないのではないかと思います。担当者も、制度会計上の問題があると認識していなかったのかもしれません。

ちなみに、マスコミで使われている『不適切会計』という言葉を、私どもは使いません。意図がある場合は『不正』、意図しない誤りを『誤謬(ごびゅう)』と言っています。個人的に、今回は誤謬の範囲内ではないかと見ています」

組織としては、どんな問題があったのだろうか。

「社内の報告体制に問題があったのではないかと考えています。今回の不適切会計が発覚したのも、証券取引等監視委員会に届いた内部通報がきっかけと報道されています。売上の意図しない誤りが上層部に伝わらなかったのか、あるいは、報告する必要はないと現場が認識していた可能性もあります。さらに、内部統制が不十分だった可能性もありそうです」

責任は誰にあるのだろうか。

「第三者委員会の報告しだいでは、経営陣の責任問題に発展し、経営トップの退陣にいたるケースもあり得ると思います。また、監査を担当した監査法人も、問題点を見抜けなかったということで、責任が問われることも考えられます」

●さまざまな角度から分析する「会計監査」

公認会計士による会計監査では、実際にどのようなことが行われているのだろうか。

「その企業の財務状態が、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表に正しく反映されているかどうかを確かめています。大小さまざまかつ膨大な取引データが、財務諸表という形に集約されるまでの流れの中で、リスクが潜んでいそうな箇所を指摘しています。

たとえば、いくつかある工場のなかで、一つだけ在庫回転率が突出して高い工場があるとします。理由を調査した結果、実は、ある社員が製品を横流ししていた、という不正が発覚することもあるのです。

このほか、売上高と利益の比率を同業他社と比べるなど、さまざまな角度から企業の財務状況を分析します」

現在、東芝の第三者委員会では、どのような調査が行われているのだろうか。

「どういう経緯で問題が発生したのか、事実確認が進められているはずです。たとえば、消去されたメールを復元するなど、関連する情報を集めて事実関係を徹底的に洗い出しているでしょうし、利害関係者へのヒアリングも行われるでしょう。

7月に提出される予定の第三者委員会の報告では、現場の担当者が問題点をどの程度認識していたのか、報告がなされていたとすれば、それがなぜ上に届かなかったのかなども大きな焦点になります」

今回の問題から、何を学ぶべきだろうか。

「情報伝達の重要性ではないでしょうか。上に情報が伝わっていれば、ここまで問題にはならなかったのではないかと思います。結局のところ、『報・連・相』(報告・連絡・相談)は大事だということですね」

【取材協力】

李 顕史(り・けんじ)公認会計士・税理士

李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、困っている経営者の役に直接立ちたいとの想いから2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、銀行等にもアドバイスを行っている。

事務所名 :李総合会計事務所

事務所URL:http://lee-kaikei.jp/

(弁護士ドットコムニュース)

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