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フジテレビは「中居正広」にどんな法的措置がとれるのか? 清水社長が「あらゆる選択肢」言及、労働弁護士が解説
2025年04月02日 11時42分

元タレント中居正広さんと元フジテレビ女性社員とのトラブルをめぐり、フジテレビは3月31日、記者会見を開き、第三者委員会の報告書を公表した。

中居さんによる「性暴力の被害があった」という認定を受けて、フジテレビの清水賢治社長は、中居さんへの刑事、民事責任追及について「あらゆる選択肢が検討に残っている」と述べ、将来的な法的措置も排除しない姿勢を示した。

調査報告書では「本事案が、フジテレビの有力取引先である有名タレントによる女性Aに対する性暴力であり、カスタマーハラスメントとして位置づけられる」としている(報告書P55より)。

今後、中居さんが負う可能性のある法的責任のうち、民事責任について、労働問題にくわしい笠置裕亮弁護士に聞いた。

元タレント中居正広さんと元フジテレビ女性社員とのトラブルをめぐり、フジテレビは3月31日、記者会見を開き、第三者委員会の報告書を公表した。

中居さんによる「性暴力の被害があった」という認定を受けて、フジテレビの清水賢治社長は、中居さんへの刑事、民事責任追及について「あらゆる選択肢が検討に残っている」と述べ、将来的な法的措置も排除しない姿勢を示した。

調査報告書では「本事案が、フジテレビの有力取引先である有名タレントによる女性Aに対する性暴力であり、カスタマーハラスメントとして位置づけられる」としている(報告書P55より)。

今後、中居さんが負う可能性のある法的責任のうち、民事責任について、労働問題にくわしい笠置裕亮弁護士に聞いた。

●被害女性に対する「フジテレビ」の責任

——中居さんに対する請求とは別に、被害者の女性が、フジテレビに対して民事責任を追及することはできるのでしょうか。

使用者であるフジテレビは、事業を執行する中で、自社の従業員が第三者に損害を与えた場合、直接の加害者とともに使用者としての責任を負います。

今回のケースでは、たしかに事件当日、社員の同席はなかったとのことですが、第三者委員会の報告書でも示されたとおり、中居さんと被害者の関係は業務上の人間関係であり、中居さんが被害者の勤務先の重要な取引先であったこと、本件に限らずタレントと社員との会食が業務として位置付けられていたこと、事件のたった2日前には業務として会食がセッティングされていたという事情が存在します。

これらの事情からすれば、今回のケースは、フジテレビの業務を遂行する中で生じた事件であると考えるべきです。そのため、性加害行為を受けたことによって生じた損害につき、被害者は、加害者である中居さんだけでなく、フジテレビに対しても請求することができることになります。

ただし、この損害賠償責任は、中居さんとフジテレビとが、共同不法行為責任に基づいて負うものであり、中居さんから支払いを受けた金額分については、フジテレビに対して重ねて請求することができません。

そのため、損害額の総額のうち、いまだ中居さんから支払いを受けることができていない部分について、フジテレビに対して請求ができるということになります。

●事後の不適切な対応について「損害賠償請求」されうる

一方、今回のケースの特徴は、第三者委員会の報告書でも詳細に認定されているとおり、性被害に関する被害申告をしたあとのフジテレビの対応の際立った不適切さです。

性暴力を伴う重大なカスタマーハラスメント事案であることが明らかであるにもかかわらず、経営陣がプライベートのトラブルであると安易に判断して加害者の出演を継続するなどし、事態を放置したうえ、加害者に利益となるような行為に社内のさまざまな関係者が加担していたことも明らかになっています。

このような事後対応は、被害者からの被害申告後に使用者が法令上求められている措置義務から大きく逸脱するものです。

そのため、フジテレビは中居さんとは別に、独自に被害者に対する損害賠償責任を負うことが考えられます。

被害申告後の事後対応が不適切であったことについて、使用者に対して損害賠償責任が認められた事例はこれまでも数多く存在します。A市役所(セクハラ損害賠償)事件(横浜地判平16年7月8日判時1865号106頁)、長崎市記者セクハラ事件(長崎地判令4年5月30日判時2570号59頁)等が挙げられます。

●フジテレビに対する「中居さん」の責任

——フジテレビが、中居さんに民事責任を追及する場合、どのような根拠に基づくものが考えられますか。フジテレビは、中居さんと共に加害者的な立場にあるようにも思えるのですが、この場合でも、フジテレビは中居さんに対して何らかの請求をすることができるのでしょうか。

今回のケースでは、中居さんがフジテレビの元社員に対して性暴力行為に及んだことが契機となり、多数のスポンサーが降りるなどし、フジテレビに甚大な損害が生じています。

もちろん、フジテレビに損害が生じた要因は、事後対応が不適切であったことや、本件及び不適切な対応を生み出した社内の慣習・風土が存在することは疑いありません。

しかし、きっかけを作った張本人である中居さんにも、かなりの割合で重大な責任が認められることは間違いありません。

そのため、フジテレビは中居さんに対して、不法行為(ないし出演契約義務違反)に基づく損害賠償責任を追及することができるでしょう。

また、フジテレビが被害者に対して共同不法行為に基づく損害賠償責任を負い、その支払い金額がフジテレビの負うべき責任割合を超えるものであった場合、その分を中居さんに対して求償することも考えられます。

●フジ・メディアHDから責任追及もありうる

——フジ・メディア・ホールディングス(HD)が、中居さんに何らかの民事責任を追及することは考えられますか。もし考えられるとしたら、どのような理由で請求することが考えられるでしょうか。

持株会社であるフジ・メディアHDにも企業価値の損失が生じているものと思われ、そのきっかけを作った中居さんに対して、不法行為に基づく損害賠償責任を追及することが考えられます。

ただし、本来、子会社を監督するべきフジ・メディアHDは、子会社の管理をおざなりにしていたことが明らかになっており(報告書P241〜242)、このことがフジ・メディアHDの損害を招いたとも思われます。

そのため、請求が認められる割合はおのずから限られたものになるでしょう。

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