9077.jpg
意識高い「早朝出勤」が「タダ働き」になる可能性も 残業代請求するための条件とは?
2018年06月28日 09時31分

東京都内のメディア関連企業で働くマユ子さん(30代)は、新入社員だった10年ほど前に比べ、同僚の出勤時間が早まっていることを感じている。本来の始業は9時30分。しかし9時前から働き始める社員の数が年々、増えているのだ。

マユ子さんは「長時間労働を抑えようという社会のムード、子育てにかかわる社員の数が増えたことなど要因は色々ありそうです」と、証言する。

実際、東京メトロ東西線の「早起きキャンペーン」など、時差通勤を推奨するキャンペーンも始まっている。しかし早く出社して定時まで働けば、当然本来の勤務時間よりも長く働いたことになる。

一般的に「残業」というと、就業時間後の夜の時間帯をイメージするが、始業時間前も含まれるのだろうか。また満員電車を避けるため、家庭の事情など社員の自発的な早朝出勤の場合、残業代を請求することができるのか。柳澤有里弁護士に聞いた。

東京都内のメディア関連企業で働くマユ子さん(30代)は、新入社員だった10年ほど前に比べ、同僚の出勤時間が早まっていることを感じている。本来の始業は9時30分。しかし9時前から働き始める社員の数が年々、増えているのだ。

マユ子さんは「長時間労働を抑えようという社会のムード、子育てにかかわる社員の数が増えたことなど要因は色々ありそうです」と、証言する。

実際、東京メトロ東西線の「早起きキャンペーン」など、時差通勤を推奨するキャンペーンも始まっている。しかし早く出社して定時まで働けば、当然本来の勤務時間よりも長く働いたことになる。

一般的に「残業」というと、就業時間後の夜の時間帯をイメージするが、始業時間前も含まれるのだろうか。また満員電車を避けるため、家庭の事情など社員の自発的な早朝出勤の場合、残業代を請求することができるのか。柳澤有里弁護士に聞いた。

●「労働時間」にあたるかどうか

「残業は、始業時間前の早朝の時間帯も認められるものです。始業時間前に早朝出勤した場合、その間の時間につき残業代が請求できるか否かは、その時間が労働基準法上の労働時間にあたるかどうかで決まります。

ここでいう『労働時間』とは、『労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間』をいいます。したがって、始業開始前の時間であっても使用者の指揮命令下に置かれていたと評価されれば、その時間は残業代の支払い対象となるのです」

はっきりと早朝出勤を命じられてはいない場合もありそうです。

「確かに、始業時間前に出勤していても、始業までの準備であったり、プライベートの時間に使ったりする社員もいるため、終業時間後の残業に比べ、指揮命令下にあったと評価されるには一定のハードルがあります。

しかし、明確な早朝出勤命令がなくても、業務量や早朝出勤後の実際の勤務状況に照らし、始業時間前の業務を余儀なくされていたと評価できる場合には、使用者の指揮命令下に置かれた時間として、残業代を請求できます」

●「満員電車を避ける」「子どもの送り迎え」という要因では?

冒頭で取り上げた職場では、業務上の理由だけでなく「満員電車を避ける」「子どもの送り迎え」など個人的な事情もあっての早朝出勤が行われているようです。

「始業開始前の時間帯が、使用者の指揮命令下に置かれていた時間といえるかどうかを判断することになります。

社員の個人的な事情により自発的に早朝出勤をしていたにすぎないのであれば、会社が早朝出勤を命じたり、余儀なくさせていたりしたとはいえません。したがって、今回のケースは、基本的には労働時間性が否定されると考えるべきでしょう。

ただし、自発的な早朝出勤とはいえ、所定時間内では到底終わらない業務量を命じられているが、(退勤時刻後の)残業が禁止されているので早朝出勤をせざるを得ないなど、早朝出勤による業務を事実上余儀なくされていた場合には、労働時間と評価してよいでしょう。

この場合でも、残業について届出や承認等の手続が必要であれば申請を行うなど、自身が業務を行っていることを客観的に視認できるようにすることが必要でしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る