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連休明け「会社辞めたい人」続出…「退職代行サービス」の利用拡大で懸念される法的問題とは?
2024年05月08日 15時57分
#弁護士 #退職代行 #五月病 #会社辞めたい

ゴールデンウイークが明けて仕事が始まり、憂うつになっている社会人は少なくないはずだ。

中には、4月に入った会社の仕事が「入社前に聞かされていた内容」と違っていたり、上司や同僚と折りが合わず一緒にいたくないという感情が吹き出して、「もう無理〜」と会社を辞めてしまう人もいるかもしれない。

大型連休のあとは、いわゆる「五月病」に注意が必要とされるが、テレビ大阪や名古屋テレビのウェブ記事によると、本人の代わりに職場に退職の意思を伝えてくれる「退職代行サービス」の利用が広がっているらしい。

たしかに社会経験の少ない若者や、なかなか辞めさせてくれない企業に勤める人とっては、退職の精神的なハードルは高い。第三者が間に入ってくれることで、無用なトラブルに巻き込まれることは減るかもしれない。

一方で、こうした退職代行サービスは法的問題も指摘されている。今井俊裕弁護士に聞いた。

ゴールデンウイークが明けて仕事が始まり、憂うつになっている社会人は少なくないはずだ。

中には、4月に入った会社の仕事が「入社前に聞かされていた内容」と違っていたり、上司や同僚と折りが合わず一緒にいたくないという感情が吹き出して、「もう無理〜」と会社を辞めてしまう人もいるかもしれない。

大型連休のあとは、いわゆる「五月病」に注意が必要とされるが、テレビ大阪や名古屋テレビのウェブ記事によると、本人の代わりに職場に退職の意思を伝えてくれる「退職代行サービス」の利用が広がっているらしい。

たしかに社会経験の少ない若者や、なかなか辞めさせてくれない企業に勤める人とっては、退職の精神的なハードルは高い。第三者が間に入ってくれることで、無用なトラブルに巻き込まれることは減るかもしれない。

一方で、こうした退職代行サービスは法的問題も指摘されている。今井俊裕弁護士に聞いた。

●ほとんどの場合、退職代行サービスの業務は「事実行為」に限られる

退職代行サービスをうたうビジネスが流行っているようです。しかし、いくつか注意すべき点があります。

まず日本では、報酬を得る目的で法律事務の代理や和解、その他広く示談交渉活動をするには「弁護士資格」が必要とされています。

したがって、そのような活動にも及ぶ範囲の事務については、退職代行サービス業者は依頼を受けることができないことになります。業者に顧問弁護士がついている、とか、弁護士が監修にあたっているなどの事情があっても、その従業員が法律事務の示談交渉をおこなっている場合は、誰の指揮監督に基づいておこなわれているのか、問われることになります。

もしも顧問弁護士や監修弁護士が、そこまで指揮監督していないのであれば、その業者には問題があるといえるでしょう。仮に弁護士の指揮監督を受けていない業者の従業員が、退職代行に関する行為を一存でおこなっているというのであれば、それはほとんどの場合、依頼者の伝言者として依頼者の意思や希望を会社へ通知するだけの事実行為に限られてしまうと思われます。

たとえば「◯月◯日をもって退職する」とか「◯月◯日から◯日分の有給休暇取得を請求する」といったようなことくらいでしょう。これに対して、会社が反対の意向を返答してきたとしても、そこからさらに示談交渉に入ることはできません。

しかし、その程度の通知であれば、あえて退職代行サービス業者に依頼する必要性はないように感じます。本人が自分で会社に電話で通知するか、または電話口で怒鳴られるのが精神的につらいのであれば内容証明郵便で退職の意思を会社へ伝えれば済むことです。

●「とにかく退職さえできればそれでよい」という覚悟を決めているときだけ

そして問題は、このような簡単な事務連絡ともとれるような通知で、ことなきを得て無事に退職できればいいのですが、そう簡単でないパターンもたくさんあるということです。たとえば、世間で言われているような、退職の意思を2週間前に伝えれば法的に辞められる、というのは、少し不正確な情報です。

これは雇用期間の定めのない契約(いわゆる正社員)の場合です。我が国の労働者は、今でも有期雇用契約者(契約社員など)の割合が高いと思われます。ましてや働き始めて半年も経過していない方などは、その多くが有期雇用契約者ではないでしょうか。

有期雇用契約の場合は、契約期間内に辞めたい場合でも、やむを得ない事由がない限り、すぐには辞められません。雇用契約満了まで契約関係は継続することになります。つまり、そう簡単には辞められないのです。そのような事案では、会社に対してやむを得ない事由の具体的事情を伝えて、それを裏付ける資料も提出すべきです。その後、通常は交渉に移ります。

法的には、やむを得ない事由もないのに会社の業務に従事しないことによって会社が損害を被った場合は、その賠償責任も発生します。会社はそれを交渉材料にしてくることがあるのですが、それに対しては、そのような損害は十分に回避可能であるはずであり、そのための具体的な手段が会社にあるはずだなどと主張して、会社の言い分を潰せる事実に関する資料などがあれば、会社へ送付して交渉に入ります。

さらに退職に伴っては、有給休暇の残日数について相互の認識に相違があってもめたり、離職票の離職理由欄の記載に関する相互の認識に相違があってもめることはよくあります。

未払い残業代をめぐっては、そもそもが未払いか否かについてもめたり、仮に未払いがあること自体は会社も認めてはいてもその計算方法の認識に相違があって金額に関してもめるなんてことはよくあることです。さらにいえばセクハラやパワハラなどに起因するような退職であれば、よけいに会社ともめて示談交渉する範囲が広くなるでしょう。

しかし、このような幅広い範囲について、退職代行サービス業者は示談交渉を代行できません。つまり、結果的に、それらの問題は解決しないで退職する、もっと現実的に言えば、従業員の権利については行使せずに、とにかく退職さえできればそれでよい、という覚悟を従業員が決めているときにだけ、退職代行サービス業者に依頼することになるのではないでしょうか。

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