9100.jpg
犯罪被害者に届かない加害者からの「賠償金」…支払わせるためには何が必要か?
2016年04月02日 10時29分

犯罪の加害者から被害者への「賠償金」が支払われない例が相次いでいると、朝日新聞が3月中旬に報じた。民事裁判で損害賠償命令が確定しても、支払われないまま、10年の時効を迎える前に再提訴を余儀なくされる遺族もいるという。

2003年に飲酒ひき逃げ死亡事故をおこした加害者の男性に対して、大分地裁は3月15日、約5000万円の賠償を命じる判決を言い渡した。毎日新聞の報道によれば、一度勝訴し同額の賠償命令が確定したものの、10年間支払いがなく、時効を迎えるために被害者が提訴していた。

遺族からは、賠償金を支払わせるための「履行措置」を望む声もあがっている。賠償金を支払わせるためには何が必要なのだろうか。宇田幸生弁護士に聞いた。

犯罪の加害者から被害者への「賠償金」が支払われない例が相次いでいると、朝日新聞が3月中旬に報じた。民事裁判で損害賠償命令が確定しても、支払われないまま、10年の時効を迎える前に再提訴を余儀なくされる遺族もいるという。

2003年に飲酒ひき逃げ死亡事故をおこした加害者の男性に対して、大分地裁は3月15日、約5000万円の賠償を命じる判決を言い渡した。毎日新聞の報道によれば、一度勝訴し同額の賠償命令が確定したものの、10年間支払いがなく、時効を迎えるために被害者が提訴していた。

遺族からは、賠償金を支払わせるための「履行措置」を望む声もあがっている。賠償金を支払わせるためには何が必要なのだろうか。宇田幸生弁護士に聞いた。

●損害賠償請求権は10年で時効

「犯罪の被害を被った場合、被害者やそのご遺族は、加害者に対し、不法行為に基づき損害賠償を請求することができます。そしてこのような場合、裁判所で高額の損害賠償を認める判決が下されることも珍しくありません。

しかし、判決は、加害者の財産から合法的に取り立てをしても良いという『許可証』としての意味しかなく、加害者に取り立てるべき財産がなければ、取り立ては事実上困難と言わざるをえません。

さらに判決で認められた損害賠償請求権は10年で時効となります。時効を止めるため、改めて裁判を起こすことになれば、それだけでも莫大な印紙代がかかります(1億円の場合32万円)。

多大な時間や労力を費やしてせっかく勝訴判決を得たとしても、現実に賠償金を取得できないのでは、司法制度そのものの信頼まで失いかねません」

●国が給付して、加害者に対して取り立てる

そこで、宇田弁護士は「国をあげて新たな法律や制度を作るべきだ」として、次のような提言をする。

「新たな制度としては、例えば、判決で命じられた金額について国が給付金として被害者に立替えて支払い、国が加害者に対して取り立てをするという制度が考えられます。

すでに兵庫県明石市では、平成26年4月に改正された被害者支援条例において、300万円を限度として判決で命じられた金額を被害者に支払い、かわりに明石市が給付した金額を加害者から取り立てるという画期的な制度も創設されています。

もっとも、最終的に加害者に財産がなければ、市としても取り立てはできず、被害者に給付した分の財源は税金に頼らざるを得ないという問題はあります。


そのため、制度設計にあたっては、誰もが犯罪被害者になりうるという観点のもと、国民の理解と協力を得ることが必要不可欠と考えます」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る