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吉澤ひとみさん、所属事務所への損害賠償「1億円」は本当か?飲酒ひき逃げ事件
2018年09月20日 12時29分

元「モーニング娘。」のメンバーで、タレントの吉澤ひとみさんが、酒気帯びとひき逃げの疑いで逮捕された事件。写真週刊誌「フライデー」が、吉澤さんが運転するワゴン車が赤信号を無視して、自転車をはねて、逃走する様子をうつしたドライブレコーダーの映像を報じて、波紋をひろげている。

ドライブレコーダーの映像は、あまりにも衝撃的なものだった。一部のメディアは、今回の事件によって、テレビやイベントの出演、DVD販売などが取りやめになるため、所属事務所が吉澤さんに対して、1億円もの損害賠償を請求する可能性があると報じている。

一方で、芸能事情にくわしい河西邦剛弁護士は「飲酒ひき逃げ事故を起こしたことで、所属事務所に多大な損害が生じたことは間違いないと思うが、法的には、1億円の請求がみとめられることはありえない」と話す。どうしてそう言えるのだろうか。河西弁護士が解説する。

元「モーニング娘。」のメンバーで、タレントの吉澤ひとみさんが、酒気帯びとひき逃げの疑いで逮捕された事件。写真週刊誌「フライデー」が、吉澤さんが運転するワゴン車が赤信号を無視して、自転車をはねて、逃走する様子をうつしたドライブレコーダーの映像を報じて、波紋をひろげている。

ドライブレコーダーの映像は、あまりにも衝撃的なものだった。一部のメディアは、今回の事件によって、テレビやイベントの出演、DVD販売などが取りやめになるため、所属事務所が吉澤さんに対して、1億円もの損害賠償を請求する可能性があると報じている。

一方で、芸能事情にくわしい河西邦剛弁護士は「飲酒ひき逃げ事故を起こしたことで、所属事務所に多大な損害が生じたことは間違いないと思うが、法的には、1億円の請求がみとめられることはありえない」と話す。どうしてそう言えるのだろうか。河西弁護士が解説する。

●「吉澤さんは法的に『労働者』と判断される可能性がある」

「今回のケースで、所属事務所には、(1)予定されていたOGメンバーや現メンバーへのオファーのキャンセル、(2)広告主や取引先からの契約打ち切りや違約金支払い、(3)発売予定であったDVDの販売取りやめ――などによる損害が生じたことは明らかでしょう。『モーニング娘。』を含めた『ハロー!プロジェクト』は、ことし20周年でしたから、未発表のOGイベントや、テレビ出演も含めてキャンセルになった可能性が十分にあります」

それでは、1億円の損害賠償が請求されることはないのだろうか。

「所属事務所が吉澤さんに損害賠償請求したとしても、1億円の請求が認められるということはありえないといえます。

タレントに対するギャラの支払いは、大きく分けて歩合給と固定給の2パターンがあるのですが、吉澤さんが所属している芸能事務所は固定給といわれています。諸々の事情を考慮すると、吉澤さんは会社員と同じように、法的には『労働者』と判断される可能性が十分にあります。

会社から労働者に対する損害賠償請求は制限される法理があることから、仮に所属事務所に1億円の損害が生じたとしても、すべてを吉澤さんに支払わせることは法的にありえません。

また、実損については、裁判で『損害』と認定されやすい傾向にありますが、芸能界で特に顕著である『入ってくるはずの仕事が入ってこなくなった』という意味の損害額は、裁判での立証が困難です。また、芸能界では、出演料等のギャラの金額は、あとから提示されるというケースも少なくないので、具体的な損害額の立証がより一層困難になります」

●「懲戒解雇は十分認められる」

また、今回の事件を受けて、吉澤さんは事務所に解雇されるのではないか、といったことも報じられている。その点についてはどう考えるのだろうか。

「損害賠償が認められるか否かという法的問題から離れたとしても、逮捕報道そのものだけでなく、事故映像が広く報道されて、事故の状況が鮮明になったことによるイメージ低下は著しいものがあります。所属事務所や現役メンバーを含めモーニング娘。に与えた影響は計り知れないものがあります。懲戒解雇は十分認められるでしょう。

飲酒運転は明らかな犯罪行為であり、時に人の命にかかわる問題に発展します。幼少期からタレント活動に専念させるあまり、コンプライアンス教育を軽視すれば、結果的にタレント本人だけでなく、所属事務所も多大な損害を被る結果となります。とりわけ若いタレントを所属させている芸能事務所にとっては、コンプライアンス研修も重要なのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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