新宿歌舞伎町の飲食店で働いていた中国籍の男性(当時50歳)が新型コロナウイルスに感染して死亡したのは、店側の感染対策が不十分だったためだとして、遺族が約7800万円の損害賠償を求めていた訴訟は、東京高裁で和解が成立した。
和解調書によると、店側が遺族に「見舞金」として300万円を支払う内容となっている。
2025年3月の1審・東京地裁(大須賀寛之裁判長)の判決は、店側の感染対策の不備を認め、安全配慮義務違反があったと判断。男性が店内で感染したと判断したうえで、死亡との因果関係を認め、慰謝料など約6800万円の支払いを命じていた。
和解成立を受けて、店側代理人の湯澤正弁護士は「控訴審では、感染経路も安全配慮義務の内容、根拠も不明確なまま店側の責任を認めた第1審判決の是非が争われ、実質これを覆す内容の和解が成立しました」とコメントした。
●店側は1審判決を不服として控訴していた
和解は11月13日付。
1審判決によると、男性は飲食店に住み込みで働いていたが、2021年7月に新型コロナ感染による肺炎と診断され、その後、症状が悪化し、同年9月に死亡した。
東京地裁は、店が入店客数の制限をおこなっていなかったなどとして、安全配慮義務違反と認定。また、「男性が体調不良を訴えた7月11日以前に店において新型コロナに感染したものと認めることが相当」として、死亡結果との因果関係も肯定していた。
店側はこの判決を不服として東京高裁に控訴していた。