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韓国がようやく廃止した「姦通罪」――かつて日本にもあったが、なぜ廃止された?
2015年03月13日 11時36分

長らく「不倫は犯罪だ」とされてきた隣国で、大きな変化があった。韓国の憲法裁判所が2月下旬、既婚者が配偶者以外と性的関係を持つことを処罰する「姦通罪」を違憲と判断したのだ。

韓国では日本と異なり、違憲と決まった法律がただちに効力を失うため、1953年制定の姦通罪は、62年を経て廃止された。それまでは、配偶者がいる人が配偶者以外の人と性的関係をもった場合、2年以下の懲役を科されていた。本人だけでなく、性的関係の相手も処罰の対象になっていた。

この「姦通罪」について、韓国の憲法裁判所は過去4回にわたって「合憲」としていたが、「法律が私生活に干渉していいのか」「自己決定権を尊重すべき」といった声があがっていた。今回の違憲判決は、そのような批判に応えたものといえる。

実は日本にも、かつては「姦通罪」という名前の犯罪があった。我が国では、68年前に廃止されたということだが、どういう理由で廃止されたのだろうか。刑事事件にくわしい中村憲昭弁護士に聞いた。

長らく「不倫は犯罪だ」とされてきた隣国で、大きな変化があった。韓国の憲法裁判所が2月下旬、既婚者が配偶者以外と性的関係を持つことを処罰する「姦通罪」を違憲と判断したのだ。

韓国では日本と異なり、違憲と決まった法律がただちに効力を失うため、1953年制定の姦通罪は、62年を経て廃止された。それまでは、配偶者がいる人が配偶者以外の人と性的関係をもった場合、2年以下の懲役を科されていた。本人だけでなく、性的関係の相手も処罰の対象になっていた。

この「姦通罪」について、韓国の憲法裁判所は過去4回にわたって「合憲」としていたが、「法律が私生活に干渉していいのか」「自己決定権を尊重すべき」といった声があがっていた。今回の違憲判決は、そのような批判に応えたものといえる。

実は日本にも、かつては「姦通罪」という名前の犯罪があった。我が国では、68年前に廃止されたということだが、どういう理由で廃止されたのだろうか。刑事事件にくわしい中村憲昭弁護士に聞いた。

●日本の姦通罪は「男女不平等」だった

「『姦通罪』はかつて、日本の刑法183条で定められていました。しかし、それは今回廃止された『韓国の姦通罪』とは、内容が異なるものでした。

日本の姦通罪は、簡単にいうと『結婚している女性が、夫以外の男性と性的関係を結んだら罰するぞ』という内容でした。処罰されるのは、『姦通をした女性』と『夫以外の男性』です。

つまり、『夫』は、いくら妻以外の女性と性的関係を結んでも、相手が既婚者でない限り、処罰されなかったというわけです」

男女不平等だったわけだ。どうしてそんな法律ができたのだろうか。

「現行刑法が制定された1907年(明治40年)は、封建的な『家父長制』という家族概念が支配的でした。そのため、妻側のみが処罰の対象とされていたのです。

日本国憲法制定直後の1947年に、『男女平等原則に反する』という理由で廃止されました。

面白いのは、姦通罪廃止の際の議論です。

当時の記録によると、『両性とも罰すれば、平等原則には反しないのではないか』という意見もありました。世論は、若い人が両罰化に賛成で、年配者が姦通罪廃止に賛成という、興味深い結果だったようです。

また、現在は廃止されていますが、1947年当時だと、フランスやイタリアなどでも男女不平等の姦通罪がまだ存在したようで、女性は1回の不貞でも処罰されるけれども、男性は妾を作るような段階にいたって初めて罰することができたようです」

●夫婦間のトラブルに、国の介入は不要

不倫は現在でも「悪いこと」とされているが、犯罪ではなくなった。これで、よかったのだろうか?

「不貞行為は、当事者間ではもちろん『悪いこと』です。ですから、現在においても、不倫をして離婚する場合には、民事上の不法行為として、相手に慰謝料を払わなければなりません。

とはいえ、その『悪いこと』をさらに刑事処罰するのが必要かというと、話は別です。夫婦間のトラブルにまで、国が介入する必要はないのではないでしょうか。

そのような意味で、日本が戦後すぐに姦通罪を刑罰から外したのは、当時としては進歩的でしたね」

中村弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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