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「隣人の騒音」で不眠症に――裁判所に訴えれば「騒音」をやめさせられる?
2013年03月30日 11時40分

「隣人の騒音で不眠症になり仕事ができなくなった」。弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に、こんな悩みが寄せられたことがある。相談者によると、隣人にハガキを送って注意してもすぐにうるさくなるとのことで、「騒音で訴えることはできないのでしょうか?」とたずねている。

季節は春ということで、入学や就職、人事異動で「引越し」する人も多い。なかには学生や新社会人など、初めて賃貸契約を結ぶ人もいるだろう。しかし新居で新生活をスタートしようとしたところ、隣人による騒音で、引越し早々に気分や体調が悪くなってしまうという事態は避けたいものだ。

隣人の騒音で不眠症になってしまうなど被害があった場合に、騒がしい音を出すのをやめるよう隣人に求めることはできるだろうか。裁判所に訴えて、騒音をやめさせることはできるのか。村頭秀人弁護士に聞いた。

●騒音に関する紛争は「受忍限度論」という枠組みで判断される

隣人の騒音に関して裁判所に訴えた場合、どのように判断されるのか。村頭弁護士は次のように説明する。

「騒音に関する紛争について裁判を起こした場合、裁判所では『受忍限度論』という枠組みで判断されます。受忍限度論とは、被害が生じていればすべて違法とするのではなく、騒音の性質や程度、あるいは被害の具体的態様や程度等の諸事情を考慮して、被害が社会生活上受忍(我慢)すべき程度を超えている場合に初めて、違法性を認めるという法理です」

このように述べつつ、村頭弁護士は裁判に訴えるという対応の限界について、次のように指摘する。

「受忍限度を超えているかどうかは、最終的には裁判所に決めてもらうしかありませんが、裁判所の判断を事前に予測することは困難です。

また、騒音問題は隣人間の問題であり、隣人関係は紛争終結後も続いていくことから考えても、裁判で白黒をはっきりつけるというのでなく、なるべく話し合いによって双方が納得できる解決をめざしたほうがいいと思います」

●裁判以外の紛争解決手段も検討したほうがいい

こう説明したうえで、「裁判によって騒音被害が救済されることはもちろんありますが、裁判以外の紛争解決手段も検討することをお勧めします」とアドバイスする。

「裁判でも、話し合いの結果、和解で終了することは珍しくありませんが、話し合いをするための方法としては、裁判以外にも、裁判所の調停や弁護士会の紛争解決機関を利用することが考えられます。あるいは、都道府県公害審査会や、国の公害等調整委員会といった、公害紛争処理に特化した機関に申し立てる方法もあります。単純に『裁判をするしかない』と考えるのではなく、よく検討して、紛争解決手段を選択すべきです」

隣人との関係は裁判に訴えたからといって「ゼロ」になるわけではない。その後も何らかの形で関係が続いていくことを考えれば、村頭弁護士が勧めるように、裁判以外の紛争解決手段も含めて、柔軟に検討したほうがいいのだろう。 

(弁護士ドットコムニュース)

「隣人の騒音で不眠症になり仕事ができなくなった」。弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に、こんな悩みが寄せられたことがある。相談者によると、隣人にハガキを送って注意してもすぐにうるさくなるとのことで、「騒音で訴えることはできないのでしょうか?」とたずねている。

季節は春ということで、入学や就職、人事異動で「引越し」する人も多い。なかには学生や新社会人など、初めて賃貸契約を結ぶ人もいるだろう。しかし新居で新生活をスタートしようとしたところ、隣人による騒音で、引越し早々に気分や体調が悪くなってしまうという事態は避けたいものだ。

隣人の騒音で不眠症になってしまうなど被害があった場合に、騒がしい音を出すのをやめるよう隣人に求めることはできるだろうか。裁判所に訴えて、騒音をやめさせることはできるのか。村頭秀人弁護士に聞いた。

●騒音に関する紛争は「受忍限度論」という枠組みで判断される

隣人の騒音に関して裁判所に訴えた場合、どのように判断されるのか。村頭弁護士は次のように説明する。

「騒音に関する紛争について裁判を起こした場合、裁判所では『受忍限度論』という枠組みで判断されます。受忍限度論とは、被害が生じていればすべて違法とするのではなく、騒音の性質や程度、あるいは被害の具体的態様や程度等の諸事情を考慮して、被害が社会生活上受忍(我慢)すべき程度を超えている場合に初めて、違法性を認めるという法理です」

このように述べつつ、村頭弁護士は裁判に訴えるという対応の限界について、次のように指摘する。

「受忍限度を超えているかどうかは、最終的には裁判所に決めてもらうしかありませんが、裁判所の判断を事前に予測することは困難です。

また、騒音問題は隣人間の問題であり、隣人関係は紛争終結後も続いていくことから考えても、裁判で白黒をはっきりつけるというのでなく、なるべく話し合いによって双方が納得できる解決をめざしたほうがいいと思います」

●裁判以外の紛争解決手段も検討したほうがいい

こう説明したうえで、「裁判によって騒音被害が救済されることはもちろんありますが、裁判以外の紛争解決手段も検討することをお勧めします」とアドバイスする。

「裁判でも、話し合いの結果、和解で終了することは珍しくありませんが、話し合いをするための方法としては、裁判以外にも、裁判所の調停や弁護士会の紛争解決機関を利用することが考えられます。あるいは、都道府県公害審査会や、国の公害等調整委員会といった、公害紛争処理に特化した機関に申し立てる方法もあります。単純に『裁判をするしかない』と考えるのではなく、よく検討して、紛争解決手段を選択すべきです」

隣人との関係は裁判に訴えたからといって「ゼロ」になるわけではない。その後も何らかの形で関係が続いていくことを考えれば、村頭弁護士が勧めるように、裁判以外の紛争解決手段も含めて、柔軟に検討したほうがいいのだろう。 

(弁護士ドットコムニュース)

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