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ネットで「ヘイト」繰り返した男性、脅迫容疑で送検…被害女性「匿名でも責任問われる」
2018年05月24日 19時35分

川崎市在住の在日コリアン3世の女性、崔江以子(チェカンイジャ)さんに対して、ネット上で執拗な攻撃をしていた男性が脅迫の疑いで書類送検されたことを受けて、崔さんと代理人弁護士らが5月24日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。崔さんは「匿名であっても、刑事責任が問われる。その社会正義がしっかりと示されることを望みます」と述べた。

川崎市在住の在日コリアン3世の女性、崔江以子(チェカンイジャ)さんに対して、ネット上で執拗な攻撃をしていた男性が脅迫の疑いで書類送検されたことを受けて、崔さんと代理人弁護士らが5月24日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。崔さんは「匿名であっても、刑事責任が問われる。その社会正義がしっかりと示されることを望みます」と述べた。

●「生きるのをあきらめたくなる瞬間もあった」

崔さんは差別根絶を訴えて活動しており、川崎市で繰り返されたヘイトデモの被害者として、2016年3月、国会で参考人として発言した。この前後から、ネット上ではげしい攻撃を受けはじめた。とりわけ「極東のこだま」という匿名のツイッターアカウントからの書き込みが深刻だった。「ナタを買ってくる予定。レイシストが刃物を買うから通報するように」などと書き込まれたことも。

「極東のこだま」は、川崎市川崎区在住と称して、崔さんの近くに住んでいることをにおわせていたことから、崔さんは家の表札を外したり、子どもと一緒に外出できなくなったりするなど、生活が一変してしまったという。崔さんは会見で「生きるのをあきらめたくなる瞬間もあった」と振り返った。

「子どもたちを守るために、週末を一緒に過ごせない、制限のある生活を過ごしてきました。とくに小学生の子どもは、警察の指導で、一歩玄関を出たら、離れて歩き、同じバスに乗っても離れて座り、約束していた地域の祭りも、銭湯も映画にも一緒に行くことができませんでした。緊張せずに一緒に過ごせたのは、都内や川崎から離れたときだけでした」(崔さん)

●ヘイトスピーチ解消法が成立して、ちょうど2年

崔さんは2016年8月、脅迫事件として川崎警察署に告訴した。容疑者の特定に時間がかかり、2017年12月にようやく、「極東のこだま」のパソコンの押収などがおこなわれた。会見に同席した師岡康子弁護士によると、その後の捜査の結果、「極東のこだま」のアカウントを使っていた神奈川県藤沢市在住の男性(50)が、脅迫の疑いで書類送検されたという。男性は容疑を認めているという。

「子どもたちとの、普通の生活を奪われた時間は取り戻すことができません。相当の覚悟と勇気を振り絞って、この人物を告訴したこと、許さないことで、反省と処罰をもとめます。匿名であっても、刑事責任が問われる。その社会正義がしっかりと示されることを望みます」(崔さん)

会見のあったこの日は、ヘイトスピーチ解消法が成立して、ちょうど2年にあたる。

師岡弁護士は「(書類送検された男性は)自分がやったことが、家族や職場に知られて、非常にはずかしい思いをする。差別を楽しんでいる人たちに対する警告になる。単なる脅迫事件ではない。崔さんは在日コリアンだから狙われた。ヘイトスピーチ、ヘイトクライムの加害者を許すことはできない」と述べた。ヘイトスピーチ解消法に禁止規定を設けることや、独立の人権機関をつくることが必要だとした。

(弁護士ドットコムニュース)

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