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親権めぐり義実家から圧力「子どもを連れて出たら許さない」、勝手な養子縁組にどう対抗する?
2025年09月22日 09時55分
#離婚 #親権 #養子縁組

「子どもを連れて家を出たらあなたを殺す」「子どもは祖母の養子に入れる」

義実家からの強い言葉にさらされた女性から、幼い子どもの親権と安全をめぐる切実な相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者は会社員の夫とその両親と同居する専業主婦。夫婦は離婚には合意しているものの、子どもの親権をめぐって対立しています。

相談者によると、夫のモラハラが激化し、物を壊すなどの行為に「身の危険を感じた」といいます。義母に助けを求めても「あなたが怒らせたせいだ」と責められたそうです。

さらに、義母からは「子どもを連れて出て行ったら許さない。あなたを殺す」と脅されました。避難を決意した相談者に対し、夫は「子どもを自分の親(義父母)の養子に入れるから」とも言ったそうです。

配偶者だけでなく義実家からも強い圧力を受けるケースは少なくありません。片方の親や祖父母の意思だけで「養子縁組」が成立してしまうのでしょうか。そして親権や子どもの安全はどう守られるのでしょうか。田村ゆかり弁護士に聞きました。

「子どもを連れて家を出たらあなたを殺す」「子どもは祖母の養子に入れる」

義実家からの強い言葉にさらされた女性から、幼い子どもの親権と安全をめぐる切実な相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者は会社員の夫とその両親と同居する専業主婦。夫婦は離婚には合意しているものの、子どもの親権をめぐって対立しています。

相談者によると、夫のモラハラが激化し、物を壊すなどの行為に「身の危険を感じた」といいます。義母に助けを求めても「あなたが怒らせたせいだ」と責められたそうです。

さらに、義母からは「子どもを連れて出て行ったら許さない。あなたを殺す」と脅されました。避難を決意した相談者に対し、夫は「子どもを自分の親(義父母)の養子に入れるから」とも言ったそうです。

配偶者だけでなく義実家からも強い圧力を受けるケースは少なくありません。片方の親や祖父母の意思だけで「養子縁組」が成立してしまうのでしょうか。そして親権や子どもの安全はどう守られるのでしょうか。田村ゆかり弁護士に聞きました。

●夫のモラハラは「親権争い」に影響する?

──夫のモラハラは、離婚時の親権判断にどのような影響を与えますか。

父母双方が親権を主張して争いになった場合、裁判所はさまざまな事情を比べます。

父母の事情としては「監護への意欲と能力」「健康状態」「経済的・精神的な状況」「居住・教育環境」「子への愛情」「実家の資産」「親族・友人等の援助の可能性」などが考慮されます。

子ども側の事情としては、「年齢」「性別」「兄弟姉妹関係」「心身の発育」「従来の環境への適応状況」「環境変化への対応力」「子自身の意向」などです。

こうした事情を総合的に判断して親権者が決めるべきとされています。

その際に、子どもの前で暴力をふるったり暴言を吐いたりした事実があれば、子どもの健全な成長に悪影響を与えるとされ、親権者として不適格と判断される可能性が高まります。

●父や義母による勝手な養子縁組届は可能?

──夫が「子どもを自分の親(義父母)の養子に入れる」と発言しているとのことですが、片方の親や祖父母の同意だけで養子縁組は成立するのでしょうか。相談者が防ぐ方法はありますか。

15歳未満の子どもを養子縁組する場合、親権者である父母双方の承諾が必要です(民法797条1項)。母が署名しない限り、養子縁組は成立せず、父と祖父母だけでの手続きは無効となります。判例でも、父母の一方の届出が欠けた縁組は無効としています(大判昭和11年11月18日)。

さらに「不受理申出」という制度を使えば、本人の意思に反して養子縁組届などが提出されることを防ぐことができます。

一方、15歳以上の子どもは、自分の意思だけで養子縁組が可能ですが、署名がなければ成立しません。祖母や夫から迫られても応じないように、あらかじめ子どもに説明しておくことが大切です。

なお、未成年者を養子とする場合は家庭裁判所の許可が必要ですが、孫や配偶者の子を養子にする場合は不要です(民法798条)。今回のケースでは、祖父母が孫を養子にするため、許可は不要ですが、先述のとおり母の同意は欠かせません。

●安全確保しながら避難するには?

──相談者は子どもを連れて避難する決意をしています。安全を確保しつつ、離婚や親権をめぐる手続きを進めるには、どのような方法がありますか。

各都道府県には「女性相談支援センター」が設置されており、子どもとともに一時的にシェルターに保護されることも可能です。

避難後は、転入先の自治体で住民票の閲覧制限を申請することで現住所を知られにくくできます。また、離婚調停などの申立ての際には現住所を裁判所のみに開示する方法もあります。弁護士に依頼すれば、送達先を法律事務所に設定し、住所を秘匿することも可能です。

それでも夫から暴力や脅迫が続く場合には、DV防止法に基づき、警察に被害防止を求めたり、裁判所に接近禁止命令を出してもらう方法もあります。

このようにさまざまな手段がありますので、できるだけ早く弁護士や関係機関に相談することをおすすめします。

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