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風俗店従業員を殴った男性、「誤想防衛」が認められ逆転無罪…どういうこと?
2018年03月27日 08時50分

広島高裁岡山支部は3月14日、風俗店従業員を殴ってけがを負わせ、傷害罪に問われていた男性について、一審の岡山地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。山陽新聞の報道によれば、判決では、男性が身の危険が差し迫っていると思い込んだ可能性が否定できないとして、誤想防衛を認めたということだ。

「誤想防衛」とは何か。どのような状況であれば認められるのか。星野学弁護士に聞いた。

広島高裁岡山支部は3月14日、風俗店従業員を殴ってけがを負わせ、傷害罪に問われていた男性について、一審の岡山地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。山陽新聞の報道によれば、判決では、男性が身の危険が差し迫っていると思い込んだ可能性が否定できないとして、誤想防衛を認めたということだ。

「誤想防衛」とは何か。どのような状況であれば認められるのか。星野学弁護士に聞いた。

●「正当防衛」と「誤想防衛」との違い

「『誤想防衛』で無罪判決といわれても、具体的なイメージが湧かないかも知れません。一方で、『正当防衛』で無罪判決というと、なんとなくイメージが湧くのではないでしょうか?  そこで、正当防衛との比較で説明したいと思います。

正当防衛は、攻撃を受けた緊急事態(『急迫不正の侵害』といいます)において、自分や他人の権利を守るために、やむを得ず、それに対抗して犯罪に当たる行為をしても罪に問われないというものです」

具体的には、どのような状況を指すのだろうか。

「例えば、人気のない場所で酔っ払いに因縁をつけられ、胸ぐらをつかまれ殴られそうになったので、酔っ払いを突き飛ばして逃げた場合があげられます。

人を突き飛ばす行為は『暴行罪』に当たります。しかし、周囲に助けを求めることもできず、胸ぐらをつかまれ殴られるという暴行・傷害を防ぐため、やむなく突き飛ばした行為は正当防衛として罪に問われません」

●正当防衛の前提に「勘違い」があると「誤想防衛」

では、誤想防衛とは何か。

「誤想防衛は、いわば正当防衛の前提となる事実に『勘違い』があった場合です。

先ほどの例で言えば、酔っ払いが危害を加えるような言動をしてコートのポケットに手を入れたので、ナイフで刺されると思い突き飛ばした。しかし実際には、その酔っ払いはタバコを取ろうとしただけだったというような場合です」

●誤想防衛は「罪を犯す意思がない」と評価される

勘違いだとしても、なぜ無罪となるのか。

「誤想防衛が無罪とされる根拠は、罪を犯す意思(故意)がないと評価されるからです。

刑法38条1項は『罪を犯す意思がない行為は、罰しない』と、原則として故意犯だけを処罰すると定めています。そして、誤想防衛は、自分の行為が正当防衛だと思っていることから、故意がなく罪にならないとされているのです。

ただ、『勘違い』全てを無罪とすると、慎重な人が罪になり、うかつな人が罪にならないという不均衡が生じてしまいます。したがって、その勘違いは、行為者本人を基準とするのではなく、『普通の人・一般の人』が勘違いするのが当然であるような場合に限定されます」

●「一般の人でも緊急事態と考えて当然の状況」と判断された

今回の件で、なぜ誤想防衛が認められたのだろうか。

「そこで、本件で誤想防衛が認められた理由を考えてみましょう。報道によれば、相手方の行動について、裁判所は『歩み寄って大声で怒鳴るなどしたことを穏当なものではないと指摘した』とあります。

具体的内容・詳細は不明ですが、被告人が相手方をこぶし・灰皿で殴って『ケガ』をさせながら無罪とされたことを考えると、一般の人でも『ケガ』をさせられる緊急事態と考えて当然の状況だったということになります。

例えば、相手方が、金銭を支払えないなら大きなケガを負わせるなど、具体的な内容の発言を大声で怒鳴った。そして、被告人はその金額を支払えないため、このままではケガをさせられると信じ、ケガを負わされる前に攻撃を加えて逃げようとしたなどの事態が予想されます」

(弁護士ドットコムニュース)

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