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「これは言論統制行為そのもの」 弁護士が指摘する「秘密保全法案」の問題点
2013年08月18日 10時59分

公務員の秘密漏えいに対する罰則強化などを盛り込んだ「秘密保全法案」が、秋の臨時国会に提出される見込みだ。参議院選挙に勝利した安倍政権が成立を目指している。

安倍政権は、外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議(日本版NSC)」の年内発足を狙っており、アメリカのNSCなどとの情報共有を図るにあたり「秘密保全」の強化が必要だとして、この法律を制定したい構えだ。

この秘密保全法案では、守るべき秘密を(1)国の安全(2)外交(3)公共の安全と秩序の維持――の3つに分類。そのうち、特に高度な秘匿が必要と認めた情報を「特別秘密」に指定し、外部に漏らした公務員や政治家らに罰則を科す。罰則は、現行の国家公務員法の守秘義務違反よりも大幅に強化される見通しだ。

だが、この秘密保全法には以前から、国民の「知る権利」の制約につながる——などという批判が出ていた。弁護士は秘密保全法をめぐる議論をどう見ているのだろうか。日弁連秘密保全法制対策本部副本部長をつとめる井上正信弁護士に聞いた。

●「秘密保全法案」は憲法の基本原則に反する

「秘密保全法案は秋の臨時国会へ提出される見込みですが、すでに法案提出されている日本版NSC設置法案とセットになっていると考えられます。

日本版NSC(国家安全保障会議)は、日本の危機に際して内閣総理大臣がトップダウンで対処できる仕組みを作るためのものです。危機管理に際しては情報集約とコントロールがきわめて重要で、秘密保全法制はその鍵となるものです」

——問題点はある?

「秘密保全法案……といっても、具体的な法案はまだ提出されていないため、2011年の有識者懇談会報告書を手がかりに説明します。法案はこれを踏まえて作られるからです。

主要な問題点としては、以下の3つがあります。

(1)『特別秘密』の定義があいまい

(2)『特別秘密』を管理する人の問題

(3)罰則が重く、対象も広い」

——『特別秘密』の定義はどんなもの?

「特別秘密の定義や範囲は、きわめて広範で曖昧です。『特別秘密』は、それを秘密にしたいと考えた行政機関の長が指定することになっています。

しかし、国民には何が『特別秘密』なのかわからず、『何が秘密か、それすらも秘密だ』という状態です。これでは行政は、自分たちに都合の悪いことなら何でも隠せることになりかねません」

——『特別秘密』を管理する人の問題とは?

「言い換えれば、『特別秘密』を取り扱う人や、その周囲にいる人の人権問題です。報告書では『特別秘密』を管理するため、秘密を取り扱う人を特別な仕組みで管理しようとしています。

取り扱う人自身が、思想信条も含めて、徹底的に調査・管理されるだけではありません。調査の範囲は家族、友人など周辺の市民にも及び、同意もないまま個人情報が調査されることになります」

——罰則の問題とは?

「罰則は、懲役10年以下という重罰です。また対象も広く、秘密漏洩、過失漏洩、秘密探知行為、それへの教唆・扇動、共謀の各行為に、罰則が科されます。教唆・扇動・共謀についても、それ自体が処罰対象となっているのです」

——結局のところ、「秘密保全法案」は、どんな法律だと考えればいい?

「法案は、言論統制行為そのものです。

どんなケースが処罰されるか、考えてみましょう。たとえば、報道機関の取材行為は処罰対象になり得ます。内部告発も同様です。

 しかし、国民主権と民主主義社会は、言論・表現の自由、報道機関の取材・報道の自由があって機能します。秘密保全法案は、これを犯罪とするもので、憲法の基本原則に反する法案です」

このように井上弁護士は、秘密保全法案について強い懸念を示している。日弁連も反対を表明しており、ウェブサイトでその問題点を指摘するとともに、一般向けパンフレットを配布している。

(弁護士ドットコムニュース)

公務員の秘密漏えいに対する罰則強化などを盛り込んだ「秘密保全法案」が、秋の臨時国会に提出される見込みだ。参議院選挙に勝利した安倍政権が成立を目指している。

安倍政権は、外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議(日本版NSC)」の年内発足を狙っており、アメリカのNSCなどとの情報共有を図るにあたり「秘密保全」の強化が必要だとして、この法律を制定したい構えだ。

この秘密保全法案では、守るべき秘密を(1)国の安全(2)外交(3)公共の安全と秩序の維持――の3つに分類。そのうち、特に高度な秘匿が必要と認めた情報を「特別秘密」に指定し、外部に漏らした公務員や政治家らに罰則を科す。罰則は、現行の国家公務員法の守秘義務違反よりも大幅に強化される見通しだ。

だが、この秘密保全法には以前から、国民の「知る権利」の制約につながる——などという批判が出ていた。弁護士は秘密保全法をめぐる議論をどう見ているのだろうか。日弁連秘密保全法制対策本部副本部長をつとめる井上正信弁護士に聞いた。

●「秘密保全法案」は憲法の基本原則に反する

「秘密保全法案は秋の臨時国会へ提出される見込みですが、すでに法案提出されている日本版NSC設置法案とセットになっていると考えられます。

日本版NSC(国家安全保障会議)は、日本の危機に際して内閣総理大臣がトップダウンで対処できる仕組みを作るためのものです。危機管理に際しては情報集約とコントロールがきわめて重要で、秘密保全法制はその鍵となるものです」

——問題点はある?

「秘密保全法案……といっても、具体的な法案はまだ提出されていないため、2011年の有識者懇談会報告書を手がかりに説明します。法案はこれを踏まえて作られるからです。

主要な問題点としては、以下の3つがあります。

(1)『特別秘密』の定義があいまい

(2)『特別秘密』を管理する人の問題

(3)罰則が重く、対象も広い」

——『特別秘密』の定義はどんなもの?

「特別秘密の定義や範囲は、きわめて広範で曖昧です。『特別秘密』は、それを秘密にしたいと考えた行政機関の長が指定することになっています。

しかし、国民には何が『特別秘密』なのかわからず、『何が秘密か、それすらも秘密だ』という状態です。これでは行政は、自分たちに都合の悪いことなら何でも隠せることになりかねません」

——『特別秘密』を管理する人の問題とは?

「言い換えれば、『特別秘密』を取り扱う人や、その周囲にいる人の人権問題です。報告書では『特別秘密』を管理するため、秘密を取り扱う人を特別な仕組みで管理しようとしています。

取り扱う人自身が、思想信条も含めて、徹底的に調査・管理されるだけではありません。調査の範囲は家族、友人など周辺の市民にも及び、同意もないまま個人情報が調査されることになります」

——罰則の問題とは?

「罰則は、懲役10年以下という重罰です。また対象も広く、秘密漏洩、過失漏洩、秘密探知行為、それへの教唆・扇動、共謀の各行為に、罰則が科されます。教唆・扇動・共謀についても、それ自体が処罰対象となっているのです」

——結局のところ、「秘密保全法案」は、どんな法律だと考えればいい?

「法案は、言論統制行為そのものです。

どんなケースが処罰されるか、考えてみましょう。たとえば、報道機関の取材行為は処罰対象になり得ます。内部告発も同様です。

 しかし、国民主権と民主主義社会は、言論・表現の自由、報道機関の取材・報道の自由があって機能します。秘密保全法案は、これを犯罪とするもので、憲法の基本原則に反する法案です」

このように井上弁護士は、秘密保全法案について強い懸念を示している。日弁連も反対を表明しており、ウェブサイトでその問題点を指摘するとともに、一般向けパンフレットを配布している。

(弁護士ドットコムニュース)

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