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ゲイの南弁護士、『新潮45』休刊を語る「逃げ出さず、議論の場を作ってほしかった」
2018年09月29日 10時55分

月刊誌『新潮45』の特集をめぐり、性的マイノリティ(LGBT)への表現が差別的だと批判されたことを受けて、新潮社は9月25日、同誌を休刊すると発表した。今回の騒動について、同性愛者(ゲイ)であり、男性カップルで法律事務所を営む弁護士はどう受け止めたのか。南和行弁護士に聞いた。

月刊誌『新潮45』の特集をめぐり、性的マイノリティ(LGBT)への表現が差別的だと批判されたことを受けて、新潮社は9月25日、同誌を休刊すると発表した。今回の騒動について、同性愛者(ゲイ)であり、男性カップルで法律事務所を営む弁護士はどう受け止めたのか。南和行弁護士に聞いた。

●「まじめに考えて書かれたもの、とは思えなかった」

「『新潮45』のことは、どのような受け止めをしたらいいのか、正直なところ悩みがあります。

杉田水脈さんの記事も、あるいは今回の特集の記事もすべて読みましたが、いずれも内容は薄く、表現力も極めて稚拙です。およそ世間に議論を投げかけるために、まじめに考えて書かれたもの、とは思えませんでした。

とはいえ、そんな薄い内容で、しかも『軽薄な差別意識の垂れ流し』であるものについて、怒ったり、詰め寄ったりして、どうなるだろう、という気持ちもありました。そんな中、『新潮45』が、『部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ』と無責任を認めるようなかたちで休刊したのは、驚きました。

まず、一定の社会的議論を起こすつもりで特集を組んだのではなく、ただ執筆者の思い込みや偏見を垂れ流したことを認めているかのように読めました。媒体として、もっと執筆者に考えて書いてもらうというプロセスはなかったのでしょうか。

とはいえ、悲しくて悔しいのは、勉強する気ナシ、自分と違う人のことを思いやる気持ちナシ、他人に優しくする気ナシの人が書いた記事に対して、まともに反論するのもしんどいし、徒労に終わることもわかるので、諦めたくなる、ということです。

僕は、殴り合い型の抗議や反発のスタイルが苦手なので、『新潮45はどうだかなぁ』と思っても、『ツブシタレ!』みたいな抗議活動には、怒る気持ちに共有できる部分はあっても、自分から積極的に参加することはできませんでした。

『新潮45』は、騒動になった以上、議論の場を作る努力をしてほしかったと思います。発表された休刊の理由を読むと、もともと責任をもって議論を投げ込んだつもりでもなかったかのようで残念です。『まさかメディアとして、これを発表したらどんな騒動になるか、なにも考えていなかったの!?』と思いました」

●「メディアを潰す発端になったことについて自覚すべき」

「いずれにせよ、記事を執筆した人たちが、この休刊について、『自分は悪くない』『メディアを追い詰めたサヨクが悪い』と思うなら、それは間違いだと思います。出版媒体に掲載する記事として、あまりにも内容が薄っぺらで無責任な記事が、1つのメディアを潰す発端になったことをむしろ自覚すべきではないでしょうか。『批判に耐えうる原稿を書けなかった』のは執筆者であり、『出版社が守るにも守れないような浅い原稿だった』ことが自分に向けられた評価だとわかってもらいたいです。

表現の自由は、とても大事な人権だと思います。僕はそれを一律に制限したり、大なたを振るって、『これはいい言論』『これは悪い言論』と決めつけることが危険だと思います。しかし、表現の自由は『人を傷つける自由』『社会的無責任が許される自由』ではありません。メディアや媒体によって、社会に与える影響の大きさはまったく違います。Twitterで書くことと、大手の出版媒体の記事で書くことは、人への伝わり方や、受けとめる側への言葉の重さが違います。

本気で議論をするのであれば、記事の執筆にあたり、自分の書く記事がどのように人に届くのか、社会で受けとめられるのか、書き手としての責任を意識すべきではなかったのか。今回、自分たちの書いた記事が議論ではなく騒動だけを呼び込んでしまった。そして最後は『新潮45』を休刊させた。その責任に書き手が無自覚であってはいけないと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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