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宮崎強姦事件「ビデオ」めぐる交渉で弁護人に懲戒請求――「誤解」指摘する声も
2015年03月02日 19時50分

宮崎市のマッサージ店経営者が、女性客を強姦したなどとして逮捕・起訴された事件で、経営者の弁護人の弁護活動が不適切だったとして、性犯罪被害者の支援団体代表が3月3日、宮崎県弁護士会に「懲戒請求」をおこなう。一方で、懲戒請求のもとになった新聞報道について、「誤解を招きかねないものだった」という指摘が地元の弁護士たちから出ており、この弁護人の行動に理解を示す声もある。

宮崎市のマッサージ店経営者が、女性客を強姦したなどとして逮捕・起訴された事件で、経営者の弁護人の弁護活動が不適切だったとして、性犯罪被害者の支援団体代表が3月3日、宮崎県弁護士会に「懲戒請求」をおこなう。一方で、懲戒請求のもとになった新聞報道について、「誤解を招きかねないものだった」という指摘が地元の弁護士たちから出ており、この弁護人の行動に理解を示す声もある。

●懲戒請求の「ネット署名」には約1万5000人が賛同

懲戒請求をおこなうのは、性暴力ゼロをめざす東京都内のNPO法人「しあわせなみだ」の中野宏美代表。中野代表は、今年1月17日の毎日新聞の報道などをもとに、この弁護人が被害者側に対して「被害時のビデオの処分と引き換えに、示談金なしで告訴を取り下げるよう要求」したとして、「被告側の弁護として明らかに不適切」と非難している。

そのもとになった毎日新聞の記事とは、次のようなものだ。

《被害女性が「被告側弁護士から『暴行の様子を撮影したビデオがある。告訴を取り下げれば処分する』と脅された」と証言した。被告側の男性弁護士は取材に対し「選択肢として提示した。脅されたと思われるなら仕方ない」と交渉の事実関係を認めた》

中野代表は「暴行の様子を撮影したビデオを処分するのと引き換えに、告訴の取り下げを要求するのはおかしい。一般的に性暴力の被害者はそういったビデオがあると言われただけで恐怖を感じることが多い。そのようなビデオを交渉の材料とすべきではない」と話している。中野代表らが、弁護士の懲戒などを求めておこなっているネット署名には、1万4483人の賛同が集まっており、これを同弁護士会に提出するという。

●新聞報道は「誤解を招きかねないもの」という指摘も

一方で、懲戒請求の根拠とされている報道が「誤解を招きかねないものだった」という指摘も出ている。宮崎県弁護士会所属の弁護士12人が2月25日、報道機関に対して「報道の適正化」を求める緊急意見書を表明したのだ。

その中で、弁護士たちは、新聞報道について「弁護人が直接告訴人に対して、強姦の様子を撮影したビデオを材料に告訴を取り下げるように脅したかのような誤解を招く」「被告人が無罪を主張しているにもかかわらず有罪を前提にした報道がなされていた」と批判している。

緊急意見書を提出した弁護士グループの代表である中島多津雄弁護士は、弁護士ドットコムの取材に対して「私たちが聞いたところ、弁護人はビデオを『無罪の証拠として示した』と言っている。報道は、被告人が有罪であることを前提に『犯行ビデオ』などと表現していたが、無罪推定の原則からいえば、そのような有罪前提の表現を使うべきではない」と話している。

また、弁護人が行った「交渉」の是非については「弁護人には被疑者・被告人の権利を擁護するため、最善の活動に努める義務がある」「弁護人がビデオについてどんな認識をしていたかがポイントだ」と指摘した。

(弁護士ドットコムニュース)

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