11846.jpg
ノロウイルスに感染したまま働いて「集団感染」 その従業員に「法的責任」はあるか?
2014年02月22日 14時37分

この冬も、ノロウイルスが猛威をふるっている。1月中旬には、静岡県浜松市の小学校で、給食の食パンから大規模な食中毒が発生し、嘔吐(おうと)や下痢の症状を訴える児童が1000人を超えた。また、広島市で1月下旬に中学校の生徒ら300人以上が食中毒となるなど、全国で「ノロウイルス・ショック」があいついだ。

非常に強い感染力で知られるノロウイルスは、ほとんどが食品などを介して、経口で人に感染する。潜伏期間は24~48時間。感染しても症状が出なかったり、風邪のような症状でおさまったりすることもある。しかも、感染してから1週間~1カ月は、体内にウイルスが残るというから、やっかいだ。

こうした状況の中、食品会社などは、ノロウイルスの集団感染対策のために目を光らせている。だが、従業員の中には、感染した自覚がないまま働く人もいるかもしれない。実際、浜松と広島のケースでは、いずれも給食の一部を調理・製造した会社の従業員からウイルスが検出されている。

もし仮に、ノロウイルスに感染した従業員が業務を続けて、集団感染が起きたら、従業員個人として法的な責任を問われるのだろうか。雪印乳業集団食中毒事件で被害者側の弁護団長をつとめた経験のある田中厚弁護士に聞いた。

この冬も、ノロウイルスが猛威をふるっている。1月中旬には、静岡県浜松市の小学校で、給食の食パンから大規模な食中毒が発生し、嘔吐(おうと)や下痢の症状を訴える児童が1000人を超えた。また、広島市で1月下旬に中学校の生徒ら300人以上が食中毒となるなど、全国で「ノロウイルス・ショック」があいついだ。

非常に強い感染力で知られるノロウイルスは、ほとんどが食品などを介して、経口で人に感染する。潜伏期間は24~48時間。感染しても症状が出なかったり、風邪のような症状でおさまったりすることもある。しかも、感染してから1週間~1カ月は、体内にウイルスが残るというから、やっかいだ。

こうした状況の中、食品会社などは、ノロウイルスの集団感染対策のために目を光らせている。だが、従業員の中には、感染した自覚がないまま働く人もいるかもしれない。実際、浜松と広島のケースでは、いずれも給食の一部を調理・製造した会社の従業員からウイルスが検出されている。

もし仮に、ノロウイルスに感染した従業員が業務を続けて、集団感染が起きたら、従業員個人として法的な責任を問われるのだろうか。雪印乳業集団食中毒事件で被害者側の弁護団長をつとめた経験のある田中厚弁護士に聞いた。

●ノロウイルス感染を「知りえたかどうか」で結論が変わる

「従業員自身が感染に気づくことができなかったら、『個人』としての責任を問うことは難しいでしょう。

ただし、ノロウイルスに感染したことを従業員自身が知ることができたのに、あえて働いて、集団感染を起こしたような場合なら、『過失あり』として、業務上過失致傷の刑事責任や、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことにもなりえます」

このように田中弁護士は指摘する。感染を知ることができたかどうか、つまり「予見可能性」があったかどうかで、結論が変わってくるようだ。もしも感染を知ることができた場合、それでも無理して働くのは、相当リスクが高い行為だといえそうだ。

田中弁護士は続けて、集団感染の責任が「会社側」に生じる可能性についても言及する。

「従業員が感染を知ることが可能だったのにもかかわらず働いていて、その結果として集団感染が起きた場合、従業員を雇用していた使用者も、安全管理体制に欠けるところがあれば、同様に業務上過失致傷の刑事責任を負います。

その場合、使用者は民事上の責任として、使用者責任(民法715条)による損害賠償責任も負うでしょう。

ただし使用者責任は、従業員の選任やその事業の監督について、使用者が『相当の注意をした』または『相当の注意をしても損害が生じたはずだ』ということを立証できれば、免責されます」

ノロウイルスについては、個人としても、会社全体としても、その危険性を十分に認識しなければならないということだろう。もし自分が食べ物を扱う職場に勤めていて、感染の可能性に気づいたような場合には、くれぐれも慎重に行動すべきといえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る