14561.jpg
はるかぜちゃんが嘆く「学校名さらし」 子役タレントのプライバシーはどうなる?
2013年05月09日 14時15分

「はるかぜちゃん」の愛称で知られるタレントの春名風花さん。今年から中学校に入学した彼女だが、入学式のあと、ツイッターで「ぼくの自宅や、入学した中学校の名前をネットに書きこむ人の多さに、すこしあきれました」とつぶやいたことが話題になった。

春名さんによると、「ぼくの家はもう何度も引っ越してるし、学校(名)もばれないように、学区外にしたのに」という。さらに、「引っ越したくないし、せっかく入った学校も転校したくないので、 やめてください」とつづり、プライバシーの扱いに苦言を呈している。

芸能人の私生活は一般大衆にとって関心の的だ。週刊誌にデートや合コンをスッパ抜かれて、世間をにぎわすほか、最近では、ツイッターフェイスブックなどSNSを介して、情報が広まることもある。しかし、春名さんはまだ中学生になったばかりだ。彼女のような子役タレントのプライバシー権はどう考えればいいのか。エンタメ関連の法律問題に詳しい田川貴浩弁護士に聞いた。

●芸能人にもプライバシーがある

「タレントや芸能人にも、自宅住所や学校名などの私的な事項をみだりに公表・利用されない利益、つまりプライバシーがあります。これを侵害すれば、不法行為として損害賠償や差止請求の対象となります。それは未成年(子役)であれ、成年であれ、変わりません」

田川弁護士はこのように指摘する。

「判例をみても、芸能人の『自宅住所』を雑誌等で公表されたケースについて、一貫して、『芸能人にもプライバシーがある』という立場を採っています。芸能人だからプライバシーを放棄しているとか、公表されることについて包括的に同意しているとか、芸能人の私的事項は社会的・公共的事項であるといったメディア側の主張を全て排斥しています」

つまり、芸能人のプライバシーに関する利益は判例として確立しているといえる。このように私的な情報についてみだりに公表・利用されない利益は、「学校名」についても同じだという。

では、そもそも「プライバシー」とは、定義するとすれば、いったいどのようにいえるのだろうか。田川弁護士は次のように述べる。

「プライバシーの概念について学説は多岐にわたっていますが、判例は、プライバシーという言葉を使うかどうかはともかく、おおむね人格的利益の一環として『他人に知られたくない私的な事項をみだりに公表されない利益』としています。そして、その利益が保護される条件として、(1)私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること(私事性)、(2)一般人の感受性を基準として公開を欲しないであろうと認められる事柄であること(秘匿性)、(3)一般の人々に知られていない事柄であること(非公知性)を挙げています」

●自宅住所や学校名がさらされると、ストーカー被害を受けるおそれあり

いわゆる「プライバシー3要件」とされるものだ。「自宅の住所」や「学校の名前」といった情報は、この3要件に該当するのだろうか。

「一般人の自宅住所や学校名については、これら3要件に該当すると考えられます。芸能人でも、自宅住所や学校名の公表を自ら承諾していない限り、同様と考えてよいでしょう。特に芸能人の自宅住所や所属学校名が公表されれば、待ち伏せ、押しかけ、つけ回しといったストーカー被害を受けるなど、私生活の平穏を侵害される事態を生ずるおそれがあります。このことは判例でも指摘されているところです」

すなわち、芸能人の許可なく、その自宅住所や学校名を公開することは、プライバシー侵害にあたる可能性が大きいということだ。

「芸能人の場合、プライバシーは減縮される、という見解もありますが、芸能人だから一律に縮減されるというよりも、対象事項ごとに本人の承諾(推定的承諾を含む)の有無を個別的に判断してゆく必要があると考えるべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

「はるかぜちゃん」の愛称で知られるタレントの春名風花さん。今年から中学校に入学した彼女だが、入学式のあと、ツイッターで「ぼくの自宅や、入学した中学校の名前をネットに書きこむ人の多さに、すこしあきれました」とつぶやいたことが話題になった。

春名さんによると、「ぼくの家はもう何度も引っ越してるし、学校(名)もばれないように、学区外にしたのに」という。さらに、「引っ越したくないし、せっかく入った学校も転校したくないので、 やめてください」とつづり、プライバシーの扱いに苦言を呈している。

芸能人の私生活は一般大衆にとって関心の的だ。週刊誌にデートや合コンをスッパ抜かれて、世間をにぎわすほか、最近では、ツイッターフェイスブックなどSNSを介して、情報が広まることもある。しかし、春名さんはまだ中学生になったばかりだ。彼女のような子役タレントのプライバシー権はどう考えればいいのか。エンタメ関連の法律問題に詳しい田川貴浩弁護士に聞いた。

●芸能人にもプライバシーがある

「タレントや芸能人にも、自宅住所や学校名などの私的な事項をみだりに公表・利用されない利益、つまりプライバシーがあります。これを侵害すれば、不法行為として損害賠償や差止請求の対象となります。それは未成年(子役)であれ、成年であれ、変わりません」

田川弁護士はこのように指摘する。

「判例をみても、芸能人の『自宅住所』を雑誌等で公表されたケースについて、一貫して、『芸能人にもプライバシーがある』という立場を採っています。芸能人だからプライバシーを放棄しているとか、公表されることについて包括的に同意しているとか、芸能人の私的事項は社会的・公共的事項であるといったメディア側の主張を全て排斥しています」

つまり、芸能人のプライバシーに関する利益は判例として確立しているといえる。このように私的な情報についてみだりに公表・利用されない利益は、「学校名」についても同じだという。

では、そもそも「プライバシー」とは、定義するとすれば、いったいどのようにいえるのだろうか。田川弁護士は次のように述べる。

「プライバシーの概念について学説は多岐にわたっていますが、判例は、プライバシーという言葉を使うかどうかはともかく、おおむね人格的利益の一環として『他人に知られたくない私的な事項をみだりに公表されない利益』としています。そして、その利益が保護される条件として、(1)私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること(私事性)、(2)一般人の感受性を基準として公開を欲しないであろうと認められる事柄であること(秘匿性)、(3)一般の人々に知られていない事柄であること(非公知性)を挙げています」

●自宅住所や学校名がさらされると、ストーカー被害を受けるおそれあり

いわゆる「プライバシー3要件」とされるものだ。「自宅の住所」や「学校の名前」といった情報は、この3要件に該当するのだろうか。

「一般人の自宅住所や学校名については、これら3要件に該当すると考えられます。芸能人でも、自宅住所や学校名の公表を自ら承諾していない限り、同様と考えてよいでしょう。特に芸能人の自宅住所や所属学校名が公表されれば、待ち伏せ、押しかけ、つけ回しといったストーカー被害を受けるなど、私生活の平穏を侵害される事態を生ずるおそれがあります。このことは判例でも指摘されているところです」

すなわち、芸能人の許可なく、その自宅住所や学校名を公開することは、プライバシー侵害にあたる可能性が大きいということだ。

「芸能人の場合、プライバシーは減縮される、という見解もありますが、芸能人だから一律に縮減されるというよりも、対象事項ごとに本人の承諾(推定的承諾を含む)の有無を個別的に判断してゆく必要があると考えるべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る