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京大タテカン訴訟、職員組合が敗訴「汚名を残す判決だ」 控訴へ
2025年06月26日 20時45分
#表現の自由 #京都大学 #京大 #タテカン

京都大学の教員らで構成する職員組合が、立て看板の撤去をめぐって大学と京都市を訴えた異例の裁判の判決が6月26日、京都地裁で言い渡された。

京都大学では2018年5月に、京都市の条例に抵触しているとの理由から、キャンパスの内外に設置されていた立て看板を一斉撤去。職員組合側は、大学構内に長年設置してきた組合の立て看板を一方的に撤去したのは違法だなどとして、2021年4月に提訴していた。

京都地裁は、職員組合に立て看板を設置する権利を認められないなどとして、請求を棄却。職員組合は「京都市や京都大学の主張を鵜呑みにし、原告の請求を棄却する不当極まりない判決」として、控訴する方針を明らかにした。

立て看板は「タテカン」の通称で、学生や教員、さらには市民にも京都大学の文化として親しまれてきた。この記事では、タテカンをめぐる問題の経過と、学生や市民も詰めかけた職員組合による判決後の集会の様子を伝える。(ジャーナリスト・田中圭太郎)

京都大学の教員らで構成する職員組合が、立て看板の撤去をめぐって大学と京都市を訴えた異例の裁判の判決が6月26日、京都地裁で言い渡された。

京都大学では2018年5月に、京都市の条例に抵触しているとの理由から、キャンパスの内外に設置されていた立て看板を一斉撤去。職員組合側は、大学構内に長年設置してきた組合の立て看板を一方的に撤去したのは違法だなどとして、2021年4月に提訴していた。

京都地裁は、職員組合に立て看板を設置する権利を認められないなどとして、請求を棄却。職員組合は「京都市や京都大学の主張を鵜呑みにし、原告の請求を棄却する不当極まりない判決」として、控訴する方針を明らかにした。

立て看板は「タテカン」の通称で、学生や教員、さらには市民にも京都大学の文化として親しまれてきた。この記事では、タテカンをめぐる問題の経過と、学生や市民も詰めかけた職員組合による判決後の集会の様子を伝える。(ジャーナリスト・田中圭太郎)

●タテカン一斉撤去を受けて提訴

この裁判は、2018年5月に京都大学がキャンパスの内外の立て看板を一斉撤去したことに対して、職員組合が2021年4月、大学と市を訴えたもの。

職員組合側は、立て看板の一方的な撤去は憲法で定める「表現の自由」に反し、不当労働行為にもあたるなどとして、大学と市に対し連帯して慰謝料330万円を、大学に対してさらに慰謝料220万円の支払いを求めていた。

立て看板は「タテカン」の愛称で親しまれ、かつて吉田キャンパスやその周辺に多数設置されていた。大学は2017年、京都市の屋外広告物条例に抵触しているとの行政指導を受けたとして、タテカンの撤去を呼びかけるようになった。

ただし、職員組合のタテカンは長年、同じ場所に掲示されており、労使慣行として大学側と確認済みだった。職員組合は、その慣行を破る行為だとして抗議したが、大学は応じなかった。2020年6月には、京都市の条例に抵触しない場所にタテカンを設置したが、わずか3時間後に撤去された。

画像タイトル 2020年6月に京都大学職員組合が設置したタテカン(京都大学職員組合提供)

画像タイトル 3時間後には撤去された(京都大学職員組合提供)

●京都地裁は請求棄却、約10秒で閉廷

訴訟は慰謝料請求の形式をとっているものの、実質的にはタテカン撤去の違法性を問うものだった。大学側は「一方的に撤去したのではない」として不当労働行為を否定。京都市も、大学への行政指導は違憲ではないなどと主張していた。

しかし、約4年間に及ぶ審理では、タテカンの強制撤去に先立ち、大学側が説明や話し合いをしてこなかったことが明らかになった。さらに京都市と京都大学の間で何度もおこなわれてきたという協議の内容は明らかにされなかった。

6月26日の判決には、京都大学の教員や学生など多くの傍聴者が詰めかけた。京都地裁の斎藤聡裁判長が「原告の請求をいずれも棄却する」と主文を読み上げ、法廷は約10秒で閉ざされた。

画像タイトル 「不当判決」と記した紙を掲げる高山佳奈子氏

●「主張を鵜呑みにするような判決だ」

判決後、京都大学法学研究科・法科大学院教授で、職員組合の副委員長をつとめる高山佳奈子氏は「不当判決」と記した紙を掲げ、さらに、京都市内で開かれた集会でも判決の問題点を指摘した。

画像タイトル 京都大学職員組合が判決後に開いた集会

集会では、原告弁護団の寺本憲治弁護士が「タテカンを立てる権利はそもそも認めない、あわせてその労使慣行は存在しないという内容でした。我々の主張を認めず、京都市・京都大学の主張を鵜呑みにするような判決でした」と述べた。

弁護団長の村山晃弁護士は「労使慣行だと、団体交渉で大学当局の人が言っているのに、裁判所は判断に左右されないといっている。これはもう、本当にもう思い上がりも甚だしい判断だと思います」と厳しく批判した。

画像タイトル 寺本憲治弁護士(中央)と弁護団長の村山晃弁護士(右)

●「タテカン文化を取り戻したい」市民も共感

職員組合は提訴にあたって「京都大学のタテカン文化を取り戻したい」とクラウドファンディングを展開し、訴訟費用として300万円あまりを集めた。

この日の集会にも多くの学生や市民が参加し、「立て看文化を愛する市民の会」を立ち上げている大学周辺の住民からは「タテカン文化が大好きだった」との声も上がっていた。

●吉田寮訴訟や日本学術会議問題とも重なる構図

京都大学は、タテカン撤去を呼びかけ始めた2017年、吉田寮に対して新規入寮の停止と全寮生の退寮を突然求めた。さらに大学側は強硬な手段に出て、2019年と2020年に寮生や元寮生合わせて40人を提訴した。

前代未聞の裁判は、2024年2月に一審判決が出て、寮生側が一部勝訴。内容的には、寮生側の主張をほぼ認めるものだった。双方が控訴し、現在は大阪高裁で審理が続いている。

クラウドファンディングの代表もつとめた高山氏は、今回の判決を「裁判所の方々が後世に汚名を残す判決」と切り捨てた。同時に、国による「大学ガバナンス改革」と歩調を合わせるかのように、大学の自由や自治を否定する動きにも改めて苦言を呈した。

画像タイトル 高山佳奈子氏(中央)

「国立大学が法人化された2004年以降、何段階にも分けて、だんだん状況が悪化してきていると感じています。このタテカン強制撤去も、吉田寮からの学生の追い出しも、日本学術会議会員の任命拒否を準備したのも、まったく同じ時期に始まっています。1つのポイントだけを見るのではなくて、全体的な流れの中で理解していくべきかなと思うので、今後も横に連帯しながらやっていきたいと思います」

タテカン訴訟について、京都大学職員組合と弁護団は、控訴してさらに争うとともに、京都市と京都大学の間でおこなわれてきた協議の内容を明らかにする取り組みを今後続けていくとしている。

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