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衆議院総選挙と同じ日に投票 最高裁裁判官「国民審査」ってどんな制度?
2014年11月21日 13時35分

安倍晋三首相は11月21日午後、衆議院を解散した。衆議院の総選挙は12月2日公示、12月14日投開票の予定だ。消費税やアベノミクスなど、さまざまな争点があがっている。

衆院選のニュースが大々的に報道される一方で、ひっそりと開催が決まったのが、衆院選の投開票と同日に行われる「最高裁判所裁判官の国民審査」だ。

そもそも、最高裁の裁判官を、なぜ国民が審査するのだろうか。また、どういう形で「審査」をしているのだろうか。裁判官の経験がある田沢剛弁護士に聞いた。

安倍晋三首相は11月21日午後、衆議院を解散した。衆議院の総選挙は12月2日公示、12月14日投開票の予定だ。消費税やアベノミクスなど、さまざまな争点があがっている。

衆院選のニュースが大々的に報道される一方で、ひっそりと開催が決まったのが、衆院選の投開票と同日に行われる「最高裁判所裁判官の国民審査」だ。

そもそも、最高裁の裁判官を、なぜ国民が審査するのだろうか。また、どういう形で「審査」をしているのだろうか。裁判官の経験がある田沢剛弁護士に聞いた。

●暴走を防ぐ「民主的なコントロール」

「わが国の憲法の基本原理は、『国民主権』です。司法権が裁判所に与えられている由来も、『国民の厳粛な信託』(憲法前文)によるとされています」

裁判官が人を裁くことができるのは、もとをたどれば「国民の信託」があるからこそ、ということだ。

「憲法15条1項ではさらに、『公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である』とされています。

そして、最高裁判所裁判官の任命については、憲法79条2項で、国民審査に付されることが定められています」

なぜ、最高裁の裁判官だけ、審査されるのだろうか?

「最高裁判所の裁判官は、最高法規である憲法の、最終的な解釈権をもつ存在です。

そうした『大きな権力』の暴走を許さないために、国民によって『民主的なコントロール』を及ぼす必要があると考えられているわけです」

●「×」を付けなければ「信任」

では、その国民審査は、具体的にどういった審査をするのだろうか。

「国民審査制度の詳細は、『最高裁判所裁判官国民審査法』という法律で定められています。具体的には、選挙の投票所で配られる『国民審査』の紙に記入するだけです。

国民審査の紙には、審査を受ける裁判官の名前と、それぞれの名前の上に空欄があります。

罷免を可とする――つまり、公務員の職を強制的に辞めさせるべきだと思った裁判官については、投票用紙の空欄に『×』を記載します。

逆に、罷免すべきでない裁判官については、『何も記入しない』で投票箱に提出します(同法15条)」

つまり、×印を書かなければ、審査の対象となっている裁判官を信任したことになるわけだ。

「開票の結果、罷免を可とする投票の数が、罷免を可としない投票の数より多い裁判官は、罷免を可とされたと判断されます(同法32条)。その後、審査の効力に関する訴訟を経るなどして、最終的には罷免されることになります」

●事前に裁判官の情報を調べることができる

罷免するかしないかを判断するために、参考にすべき資料はないのだろうか。

「たしかに、投票所で裁判官の名前を見ても、その裁判官に関する情報がなければ、投票のしようがありませんよね。

そこで、最高裁判所裁判官国民審査法53条は、『都道府県の選挙管理委員会は、政令の定めるところにより、審査に付される裁判官の氏名、経歴その他審査に関し参考となるべき事項を掲載した審査公報を発行しなければならない』と定めています。

これを受けて同法施行令26条が、『審査公報には、審査に付される裁判官の氏名、生年月日及び経歴並びに最高裁判所において関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項を掲載するものとする』と定めています」

一般国民が、最高裁の裁判官がどんな人なのかを知る機会は、決して多いとはいえない。国民審査に行く前には、しっかりと「審査公報」をチェックしたいところだ。

田沢弁護士は、「国民審査は、司法権に対して国民が直接に民主的コントロールを及ぼす極めて重要な機会です。しっかりと情報を入手した上で投票に臨んでもらいたいものです」と述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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