15996.jpg
ウクライナ侵攻報道に触れるほど抑うつ傾向が増加、荻上チキさん「注意喚起が必要」
2022年06月01日 18時09分

評論家の荻上チキさんらが6月1日、厚生労働省で記者会見を開き、ロシアによるウクライナ侵攻後、国内で抑うつ状態の若年、高齢女性が増える傾向にあるという調査結果を発表した。荻上さんがつくる一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」が調べた。

ウクライナ侵攻の報道を視聴した時間と抑うつ状態の関係も明らかにした。荻上さんは「メンタルヘルスの悪化は、脳や心臓疾患やうつ病のリスクを高めます。報道する側は視聴者がセルフケアができる情報提供や、注意喚起することが必要だと考えています」と話している。

評論家の荻上チキさんらが6月1日、厚生労働省で記者会見を開き、ロシアによるウクライナ侵攻後、国内で抑うつ状態の若年、高齢女性が増える傾向にあるという調査結果を発表した。荻上さんがつくる一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」が調べた。

ウクライナ侵攻の報道を視聴した時間と抑うつ状態の関係も明らかにした。荻上さんは「メンタルヘルスの悪化は、脳や心臓疾患やうつ病のリスクを高めます。報道する側は視聴者がセルフケアができる情報提供や、注意喚起することが必要だと考えています」と話している。

●若年女性の3割超が中度以上の抑うつ状態

調査は5月9日から5月11日にかけて、全国の18~79歳の男女1000人に対してウェブアンケート方式で行い、865人から回答を得た。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前の2月上旬に行った調査と比べると、中度以上の抑うつ状態の人が、若年女性(18~39歳)では35.1%(9.4ポイント増)、高齢女性(60~79歳)は12.5%(5.7ポイント増)といずれも増加傾向だった。また、高齢女性は中度以上の不安感を抱えている人も12.5%(9.1ポイント増)と増えた。

「全てがウクライナ侵攻の影響とは言えませんが、特に高齢女性の精神的健康が悪化していると言えます」(荻上さん)

また、アンケートでは、テレビや新聞、インターネットメディアでウクライナ侵攻の報道を視聴する時間と、メンタルヘルスとの関連も調べた。メディアの種類別に見ると、NHKや民放のワイドショーや夜の報道番組といったテレビで視聴している人が多く、全体の40%以上が週に1時間以上ウクライナ関連の報道を視聴していた。

また、ウクライナ侵攻に関連した視聴時間が長いほど、抑うつや不安感、孤独感を抱えている人が多かった。

画像タイトル 調査結果より

一方で、家族や友人とウクライナ侵攻について話している人ほど孤独を感じず、人生の満足感も高いことが分かった。

画像タイトル 調査結果より

報道が与える影響について荻上さんは「メディアに長時間触れることで、精神的健康を悪化させる可能性があるとも言えます。メディアはウクライナ侵攻を報じると同時に、メンタルヘルスの重要性を伝えたり、心のケアができる機関の情報を提供したりすることも大切です」と語る。メンタルヘルスが悪化すると、脳や心臓の疾患や、うつ病のリスクが高まるため、軽く考えてはいけないという。

●同じテーマでもコンテンツによって受け止め方は変化する

荻上さんによると、メディアでストレス度合いが高い情報を得た後に人がとる行動は、メディアの中身によって変わるという。

「例えば貧困をテーマにした番組で、当事者のエピソードだけを発信する内容であれば、視聴者は当事者をバッシングする傾向があります。視聴して受けたストレスを向ける先が見当たらず、距離をとることで心を守ろうとするからです。一方で、貧困に関する統計や政策への議論も入れた『テーマ型』の内容であれば、視聴者は番組の構成を吟味しようとするので、個人への批判が減るなど、視聴者の着地の仕方が変わってくるのです」

荻上さんらは、今後も災害や戦争といった報道に触れることで受けるストレスについて、視聴者の自覚を促し、対応策を発信していく考えだ。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る