17238.jpg
議員への「お茶出し」、反対で廃止進まず「ペットボトルは“映えない”」…豊島区議会
2020年05月22日 09時59分

自治体の職員が地方議会の議員にお茶を出すーー。2020年2月、埼玉県議会で県議にお茶を出していた慣例を廃止したことが話題になったが、東京都豊島区ではまだ廃止されていないようだ。

豊島区の入江あゆみ区議が4月18日、区議会での「お茶出し廃止とマイボトル・マイペットボトルの持ち込み」に反対意見があったとツイッターで発言した。

いったいどんな理由で反対されたのだろうか。入江区議に話を聞いた。

入江区議は、2019年4月の初当選後、委員会に出席した際、男女関係なく区職員が議員一人一人にお茶を出すことに驚いたという。

「『お茶出しって今もあるんだ』とビックリしました。夏でも淹れたての温かいお茶を出してもらえます」

驚きが疑問に変わったのは、入江区議が水の入ったペットボトルを持ち込もうとした時だという。

「『規則で持ち込みは原則禁止です』と言われました。喉の調子が悪いなど特別な理由があるなら、議長に相談して了承をもらえば大丈夫とも言われましたが、『それは変だな』と思いました」

確かに、「自分で飲み物を用意してはいけません」というのは妙なルールだ。

たとえば、スポーツ観戦や空港などでペットボトルの持ち込みに一定の制限が設けられていることはある。しかし、これはテロ対策など保安上の理由によるものだ。区民の代表である区議会議員に対し、テロの心配は必要ないだろう。

また、持ち込みを認めれば、議員は好きなものを飲め、職員はお茶を出す必要がなくなるのだから、誰にとっても特に不都合はないはずだ。

埼玉県議会では、お茶出しだけを担当する臨時職員の女性を雇っていたが、豊島区議会については、「議会事務局で勤務している職員がお茶出しを担当しているので、人員整理の要素はない」(入江区議)という。

画像タイトル 豊島区議会は豊島区役所の8階・9階にある(ジャバ / PIXTA)

入江区議によると、持ち込み原則禁止などのルールを変えるには、議会改革検討会において全会派一致で承認を得る必要があるという。

そこで、入江区議のグループは同委員会で「お茶出し廃止とマイボトル・マイペットボトルの持ち込み」を提案。しかし、反対意見があり、提案は承認されなかった。

最大会派の自民党が、次のような理由で反対したという。

「色々な形のペットボトルを机に置くのは、見た目が悪いのではないか。ネット中継をみた区民が不快に思うかもしれない」
「出してもらったおいしいお茶を飲んで、議論を深めてきた」

入江区議はこれらの理由に納得できず、それが今回のツイートにつながった。

「飲み物なんて自分で用意すれば十分な話です。毎回お茶出しさせるというのは、無駄な作業だと思います。職員の方にはお茶出し以外の業務に集中していただいたほうが、議会にとっても有益なのではないでしょうか」

なお、ツイート後に、新型コロナウイルス対策として職員との接触を減らすなどの理由で、当面の間はお茶出しを休止し、事務局の用意するポットからのセルフ式とマイボトル・ペットボトルの持ち込みを併用して各自対応することになったという。

「この措置はあくまで暫定的なもので、私たちの提案が認められたわけではありません。引き続き『お茶出し』については活動していきたいと考えています」

弁護士ドットコムニュースは5月15日と20日、反対理由を確認するため区議会事務局を通じて自民党区議に取材を申し入れたが、期限までに回答はなかった。

秋田県議会は4月、各常任委員会などで県議や県幹部にお茶出しする慣例を廃止した。河北新報(4月23日)によれば、議会運営委員会で自民党会派から「無駄なことはやめよう」とお茶出し廃止の提案があり、その場で決まったという。

同じ自民党の議員でも、場所が異なれば、考え方もずいぶんと異なるようだ。

はたして、豊島区民は「ネット中継の見栄えの良し悪し」で議会や区議の評価を判断するのだろうか。お茶を出してもらわないと議論を深められない議会を評価するのだろうか。

入江区議によれば、「お茶出しに関する議論は何年もされてる」という。暫定的にお茶出しを休止している今、各区議自らお茶を用意しながら、その必要性を改めて検討してみてはどうだろうか。

自治体の職員が地方議会の議員にお茶を出すーー。2020年2月、埼玉県議会で県議にお茶を出していた慣例を廃止したことが話題になったが、東京都豊島区ではまだ廃止されていないようだ。

豊島区の入江あゆみ区議が4月18日、区議会での「お茶出し廃止とマイボトル・マイペットボトルの持ち込み」に反対意見があったとツイッターで発言した。

いったいどんな理由で反対されたのだろうか。入江区議に話を聞いた。

●区議が飲み物を持ち込むのは原則禁止

入江区議は、2019年4月の初当選後、委員会に出席した際、男女関係なく区職員が議員一人一人にお茶を出すことに驚いたという。

「『お茶出しって今もあるんだ』とビックリしました。夏でも淹れたての温かいお茶を出してもらえます」

驚きが疑問に変わったのは、入江区議が水の入ったペットボトルを持ち込もうとした時だという。

「『規則で持ち込みは原則禁止です』と言われました。喉の調子が悪いなど特別な理由があるなら、議長に相談して了承をもらえば大丈夫とも言われましたが、『それは変だな』と思いました」

確かに、「自分で飲み物を用意してはいけません」というのは妙なルールだ。

たとえば、スポーツ観戦や空港などでペットボトルの持ち込みに一定の制限が設けられていることはある。しかし、これはテロ対策など保安上の理由によるものだ。区民の代表である区議会議員に対し、テロの心配は必要ないだろう。

また、持ち込みを認めれば、議員は好きなものを飲め、職員はお茶を出す必要がなくなるのだから、誰にとっても特に不都合はないはずだ。

埼玉県議会では、お茶出しだけを担当する臨時職員の女性を雇っていたが、豊島区議会については、「議会事務局で勤務している職員がお茶出しを担当しているので、人員整理の要素はない」(入江区議)という。

●豊島区の自民党会派「ネット中継での見た目がよろしくない」

画像タイトル 豊島区議会は豊島区役所の8階・9階にある(ジャバ / PIXTA)

入江区議によると、持ち込み原則禁止などのルールを変えるには、議会改革検討会において全会派一致で承認を得る必要があるという。

そこで、入江区議のグループは同委員会で「お茶出し廃止とマイボトル・マイペットボトルの持ち込み」を提案。しかし、反対意見があり、提案は承認されなかった。

最大会派の自民党が、次のような理由で反対したという。

「色々な形のペットボトルを机に置くのは、見た目が悪いのではないか。ネット中継をみた区民が不快に思うかもしれない」
「出してもらったおいしいお茶を飲んで、議論を深めてきた」

入江区議はこれらの理由に納得できず、それが今回のツイートにつながった。

「飲み物なんて自分で用意すれば十分な話です。毎回お茶出しさせるというのは、無駄な作業だと思います。職員の方にはお茶出し以外の業務に集中していただいたほうが、議会にとっても有益なのではないでしょうか」

なお、ツイート後に、新型コロナウイルス対策として職員との接触を減らすなどの理由で、当面の間はお茶出しを休止し、事務局の用意するポットからのセルフ式とマイボトル・ペットボトルの持ち込みを併用して各自対応することになったという。

「この措置はあくまで暫定的なもので、私たちの提案が認められたわけではありません。引き続き『お茶出し』については活動していきたいと考えています」

弁護士ドットコムニュースは5月15日と20日、反対理由を確認するため区議会事務局を通じて自民党区議に取材を申し入れたが、期限までに回答はなかった。

●秋田県議会の自民党会派「お茶出しは無駄だからやめよう」

秋田県議会は4月、各常任委員会などで県議や県幹部にお茶出しする慣例を廃止した。河北新報(4月23日)によれば、議会運営委員会で自民党会派から「無駄なことはやめよう」とお茶出し廃止の提案があり、その場で決まったという。

同じ自民党の議員でも、場所が異なれば、考え方もずいぶんと異なるようだ。

はたして、豊島区民は「ネット中継の見栄えの良し悪し」で議会や区議の評価を判断するのだろうか。お茶を出してもらわないと議論を深められない議会を評価するのだろうか。

入江区議によれば、「お茶出しに関する議論は何年もされてる」という。暫定的にお茶出しを休止している今、各区議自らお茶を用意しながら、その必要性を改めて検討してみてはどうだろうか。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る