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ベネッセ情報流出、双方控訴 1人3300円賠償は「不満が多い」原告代理人に聞く
2019年01月20日 09時37分

2014年に発覚した「ベネッセコーポレーション」(岡山市)の顧客情報流出事件をめぐり、顧客ら計462人が精神的苦痛を受けたとして、同社とシステム開発・運用を行っていた関連会社に対し、慰謝料など計3590万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が昨年12月27日、東京地裁(河合芳光裁判長)であった。

河合裁判長は関連会社の賠償責任を認め、1人あたり3300円(計約150万円)の支払いを命じた。ベネッセに対する請求は棄却した。

ベネッセによると、この個人情報流出事件をめぐる裁判で、ベネッセ側に賠償を命じる判決は初めて。原告側と被告側の双方が判決を不服として控訴している。

2014年に発覚した「ベネッセコーポレーション」(岡山市)の顧客情報流出事件をめぐり、顧客ら計462人が精神的苦痛を受けたとして、同社とシステム開発・運用を行っていた関連会社に対し、慰謝料など計3590万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が昨年12月27日、東京地裁(河合芳光裁判長)であった。

河合裁判長は関連会社の賠償責任を認め、1人あたり3300円(計約150万円)の支払いを命じた。ベネッセに対する請求は棄却した。

ベネッセによると、この個人情報流出事件をめぐる裁判で、ベネッセ側に賠償を命じる判決は初めて。原告側と被告側の双方が判決を不服として控訴している。

●「不快感、不安感を生じさせる」

判決は、情報を持ち出した関連会社の派遣社員が「MTP(Media Transfer Protocol)」という方式でスマートフォンにデータを転送したと指摘。これについて、過去に同様の事例がなく、専門家による危険性の指摘もなかったため、ベネッセと関連会社がこの方法で個人情報を不正に取得される予見可能性があったとは言えないとした。

一方、関連会社は派遣社員に対し、日常的に直接仕事を指示し、労務管理をしていたことなどから、「実質的指揮関係が認められ、不法行為について使用者責任を負う」と賠償責任を認めた。

その上で、今回漏えいした氏名や住所、生年月日などの個人情報が、不正に漏洩した場合には「不快感のみならず、情報漏えいの影響に対する不安感を生じさせる」として精神的損害を認めた。

ただ、原告側が「未成年の情報は不快感・不安感が一生付きまとう」として、保護者と子どもとで請求額に差異を求めた主張に対しては、「成年者と未成年者とで損害の程度を格別に扱う理由までを見いだすのは困難」と退けた。

今回の判決について、原告側の代理人を務めた金田万作弁護士に聞いた。

●慰謝料3000円「低額で不十分」

ーー精神的損害に対する慰謝料が3000円(弁護士費用1人当たり300円)認められました。個人情報流出事件をめぐり、賠償を命じる判決は初めてですが、金額への評価を教えてください

「金額については低額で不十分です。これまでの裁判例では、『宇治市住民基本台帳データ漏洩事件』判決(1999年)で1万5千円、『Yahoo!BB顧客情報流出事件』判決(2004年)で6000円の支払いが命じられています。

また、早稲田大学で1998年、江沢民・中国国家主席(当時)の講演会に出席する学生らの名簿を大学側が同意を得ずに警視庁に提出した『早稲田大学江沢民事件』では、プライバシー侵害を争った2件の訴訟で、ともに早大側の主張は退けられました(2003年)。

講演会の参加申し込みをした時点で講演を妨害する目的をもっていたことが認められた学生には5000円、妨害する目的がない学生には1万円の支払いをそれぞれ命じました。

これらの事案が、外部への流出(早稲田大学江沢民事件では警察のみ)が確認できないのに対し、今回のベネッセでは名簿業者やそこからの大規模流出が起きた事案です。流出した個人情報の数や広がりは、過去の情報流出事件と比較しても国内最大ですが、それが金額に反映されていません」

●「共同不法行為との評価が適当」

ーー2018年6月20日の東京地裁判決では、ベネッセと関連会社の過失と共同不法行為を認めていますが、今回はベネッセ自体に過失はないと判断されました。どう考えますか

「不満のある判断です。今回の東京地裁判決は、スマートフォンなどに用いられるMTPの接続制限をせずに、従業員等が業務用のパソコンにスマートフォンを充電のため接続させることを見過ごしていたことは、注意義務違反(過失)ではないとしました。

しかし、当時、スマートフォンの普及率や将来性から考えても、MTPについての接続制限をすべきであったと考えます。実際に、ベネッセと関連会社が共同で入れていたセキュリティソフトではその制限ができるものでした。単なる設定ミスであり、過失と認めるべきで、共同不法行為との評価が適当です」

ーー2018年6月20日の東京地裁判決では「慰謝料が発生する程の精神的苦痛があると認めることはできないと言わざるを得ない」として、請求が棄却されました。今回判断が分かれたことについて、どう考えますか

「前回の東京地裁の判断があまりにもおかしかっただけで、一定の損害額を認めるというのが、これまでの、そしてこれからの判決の流れだと考えます。今回の判決で、慰謝料を認めたということで少し前進しました。

ただ、まだ責任のあり方や金額については、不満が多いところですので、控訴審などの訴訟で主張・立証を尽くして、適正な判断がされるように努力していきます。

損害額については、様々な考え方があり、難しいところですが、こちらでも大学教授の意見などを参考に主張を補充していきたいと考えています」

●ベネッセ「コメント控える」

ベネッセ広報部は取材に対し、控訴したことを明らかにした。詳細については「係争中の案件のため、コメントは控えさせていただきます」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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