17529.jpg
「コロナ感染」自称の男にツバかけられた英駅員死亡…日本では「殺人罪」に問えるか?
2020年05月15日 15時09分

「新型コロナウイルスに感染している」と話す男につばを吐かれた駅員が亡くなったーー。イギリスで起きた衝撃のニュースが報じられました。

テレ朝NEWS(5月13日)によると、駅員の女性は3月下旬、ロンドン・ビクトリア駅の切符売り場で、「自分は新型コロナウイルスにかかっている」と叫ぶ男につばを吐かれました。女性は数日後に感染が判明。4月4日に亡くなったといいます。

日本でも3月上旬、新型コロナウイルスの感染が判明した愛知県の男性が、飲食店を訪れ「新型コロナウイルスに感染している」などと話したという騒動がありました。

新型コロナウイルスの感染者が意図的に他人に感染させ、うつされた人が亡くなった場合、殺人罪が成立するのでしょうか。澤井康生弁護士に聞きました。

「新型コロナウイルスに感染している」と話す男につばを吐かれた駅員が亡くなったーー。イギリスで起きた衝撃のニュースが報じられました。

テレ朝NEWS(5月13日)によると、駅員の女性は3月下旬、ロンドン・ビクトリア駅の切符売り場で、「自分は新型コロナウイルスにかかっている」と叫ぶ男につばを吐かれました。女性は数日後に感染が判明。4月4日に亡くなったといいます。

日本でも3月上旬、新型コロナウイルスの感染が判明した愛知県の男性が、飲食店を訪れ「新型コロナウイルスに感染している」などと話したという騒動がありました。

新型コロナウイルスの感染者が意図的に他人に感染させ、うつされた人が亡くなった場合、殺人罪が成立するのでしょうか。澤井康生弁護士に聞きました。

●因果関係が立証できたら「傷害致死罪」

ーーわざと他人に感染させた場合、犯罪にならないのでしょうか。

新型コロナウイルスをばらまいて他人に感染させる意思があり、実際に感染させた場合には、傷害罪が成立します。

さらに、今回のように、感染者が死亡した場合には、傷害致死罪(刑法205条)が成立する可能性も出てきます。傷害致死罪は、傷害の意思があれば足り、それ以上に死亡させる意思まで有している必要はありません。

ただし、傷害致死罪が成立するためには傷害と死亡との間に因果関係が必要です。

例えば、被害者が感染後、短期間のうちに死亡するなど感染させたことと死亡との間の因果関係が明確に立証できることが必要です。このような場合であれば、傷害致死罪の成立も認められます。

●「殺人罪」の成立は難しい

ーー殺人罪の可能性は考えられますか。

原則として殺人罪を成立させることは難しいと思います。殺人罪を成立させるためには簡単に言うと人を殺すような行為(殺人の実行行為)をやって、殺害という死の結果を発生させることが必要なのです。

ーー今回イギリスでは、被害者がコロナウイルスに感染して亡くなっていますが…。

確かに、死の結果は発生しています。しかしながら、コロナウイルスに感染している者がつばを吐くという行為が殺人の実行行為と認められるかどうかは難しいのではないでしょうか。

例えば、一般的に「ナイフで刺す」、「拳銃で撃つ」、「首を絞める」等の行為は、人を殺すことができる現実的危険性が非常に高いので殺人の実行行為に該当するとされています。

これに対し、コロナウイルスは未知の部分が多く、各国によって致死率にも大きな差があり、感染しても軽症で済む場合や何らの症状も出ない場合もあるので、コロナウイルスに感染させたとしても必ずしも相手が死亡するとは限りません。

猛毒のサリンやVXガスを人にかければ、誰でも殺すことができるので、それらの行為は殺人の実行行為といえるのですが、コロナウイルスの場合はこれらとは同列には論じられないということなのです。

そうするとコロナウイルスに感染させることは殺人の実行行為とはいえないということになります。

ーーコロナウイルスに感染させて相手を死亡させた場合であっても、殺人罪まで成立させるのは難しいということですね。

ただし、コロナウイルスに感染した相手が高齢者や基礎疾患を持っている方だった場合には致死率が高いというデータもあるようです。

今後、医学的に相関関係が解明され、これらの相手に感染させた場合には死亡の結果を発生させる危険性が高いということが証明されるかもしれません。

その場合、行為者において被害者がこれらの属性の者であることを認識したうえで、殺意を持ってコロナウイルスに感染させて死亡させた、といえる場合であれば、殺人罪を成立させることも可能だと思います。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る