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「いいね!」強要する「ソーハラ」 上司や会社から慰謝料もらえるか?
2013年01月30日 12時19分

仲の良い友人や仕事で知り合った人とネット上でつながるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。ユーザーが写真や文章などを投稿すると、つながった人たちがコメントし、盛り上がるという仕組みだ。代表的なSNSであるフェイスブックは、日本で1500万人以上が利用しているという。いまや人間関係を形づくるツールの一つとなったSNSだが、新たなストレスの原因にもなっているようだ。

たとえば、実名登録が原則のフェイスブックでは、自分が利用していることが他人に伝わりやすく、知人から「友達申請」されることがある。この場合、フェイスブック上の「友達」になることを拒否することもできるのだが、職場の上司から申請されたら断りづらいのが実情だ。また、上司が投稿した写真や日記について、「いいね!」ボタンを押すことを迫られるケースもあるという。 

こうしたSNS上での強要は、「ソ―シャルメディア・ハラスメント(=ソーハラ)」という名称で、少しずつ認識され始めている。上司からソーハラを受け、精神的な苦痛を感じた場合、上司や会社から慰謝料をもらうことはできるのだろうか。森本明宏弁護士に聞いた。

●上司のソーハラが「不法行為」にあたる場合は、慰謝料を請求できる

「上司によるソーハラが、民法709条の『不法行為』に該当する場合、慰謝料を請求することができます。不法行為に該当するかどうかは、ソーハラ行為の具体的内容や頻度、時間帯などの個別事情を総合的に考慮して判断します。

たとえば、上司が職場の上下関係を背景に、自分の投稿への反応を暗に迫ったり、プライベートに関するメッセージを一方的に送信する行為が継続するような場合など、SNSで通常想定される常識的なやり取りを逸脱している場合には、『不法行為』に該当すると判断してよいでしょう。

この場合、上司の使用者である会社に対しても、使用者責任(民法715条)を追及したり、職場環境への配慮義務を怠ったとして債務不履行責任(民法415条)による賠償を求めたりして、慰謝料請求をすることが考えられます」

●労働基準監督署など「社外への相談」も検討すべき

このように、ソーハラが民法上の『不法行為』といえる場合は、上司や会社に慰謝料を請求できる余地があるということだが、実際にソーハラ被害を受けた場合、誰に相談したらよいのだろうか?

「会社の中にハラスメント相談窓口が設置されている場合には、その窓口に相談するのがよいでしょう。あるいは、信頼できる他の上司や同僚に相談することが考えられます。また、労働基準監督署など社外への相談も検討するべきでしょう。法的手続を取ることにまで発展しそうな場合には、弁護士に相談することを考えるべきです」

慰謝料をもらえる可能性があるとは言え、ソーハラを未然に防ぐことに越したことはない。できれば角を立てたくないというのも、一般的な心情かもしれない。予防策として、注意すべきことはないだろうか。

「職場の上下関係を安易にSNS上に持ち込み、部下にやり取りを迫るような行為は『ソーハラ』と判断されてもやむを得ません。被害防止のため、公開する情報の範囲などSNS上のプライバシー設定を見直したり、友達申請を受け付ける基準をあらかじめ明示しておくなどの対策も必要です」

(弁護士ドットコムニュース)

仲の良い友人や仕事で知り合った人とネット上でつながるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。ユーザーが写真や文章などを投稿すると、つながった人たちがコメントし、盛り上がるという仕組みだ。代表的なSNSであるフェイスブックは、日本で1500万人以上が利用しているという。いまや人間関係を形づくるツールの一つとなったSNSだが、新たなストレスの原因にもなっているようだ。

たとえば、実名登録が原則のフェイスブックでは、自分が利用していることが他人に伝わりやすく、知人から「友達申請」されることがある。この場合、フェイスブック上の「友達」になることを拒否することもできるのだが、職場の上司から申請されたら断りづらいのが実情だ。また、上司が投稿した写真や日記について、「いいね!」ボタンを押すことを迫られるケースもあるという。 

こうしたSNS上での強要は、「ソ―シャルメディア・ハラスメント(=ソーハラ)」という名称で、少しずつ認識され始めている。上司からソーハラを受け、精神的な苦痛を感じた場合、上司や会社から慰謝料をもらうことはできるのだろうか。森本明宏弁護士に聞いた。

●上司のソーハラが「不法行為」にあたる場合は、慰謝料を請求できる

「上司によるソーハラが、民法709条の『不法行為』に該当する場合、慰謝料を請求することができます。不法行為に該当するかどうかは、ソーハラ行為の具体的内容や頻度、時間帯などの個別事情を総合的に考慮して判断します。

たとえば、上司が職場の上下関係を背景に、自分の投稿への反応を暗に迫ったり、プライベートに関するメッセージを一方的に送信する行為が継続するような場合など、SNSで通常想定される常識的なやり取りを逸脱している場合には、『不法行為』に該当すると判断してよいでしょう。

この場合、上司の使用者である会社に対しても、使用者責任(民法715条)を追及したり、職場環境への配慮義務を怠ったとして債務不履行責任(民法415条)による賠償を求めたりして、慰謝料請求をすることが考えられます」

●労働基準監督署など「社外への相談」も検討すべき

このように、ソーハラが民法上の『不法行為』といえる場合は、上司や会社に慰謝料を請求できる余地があるということだが、実際にソーハラ被害を受けた場合、誰に相談したらよいのだろうか?

「会社の中にハラスメント相談窓口が設置されている場合には、その窓口に相談するのがよいでしょう。あるいは、信頼できる他の上司や同僚に相談することが考えられます。また、労働基準監督署など社外への相談も検討するべきでしょう。法的手続を取ることにまで発展しそうな場合には、弁護士に相談することを考えるべきです」

慰謝料をもらえる可能性があるとは言え、ソーハラを未然に防ぐことに越したことはない。できれば角を立てたくないというのも、一般的な心情かもしれない。予防策として、注意すべきことはないだろうか。

「職場の上下関係を安易にSNS上に持ち込み、部下にやり取りを迫るような行為は『ソーハラ』と判断されてもやむを得ません。被害防止のため、公開する情報の範囲などSNS上のプライバシー設定を見直したり、友達申請を受け付ける基準をあらかじめ明示しておくなどの対策も必要です」

(弁護士ドットコムニュース)

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