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月100時間超の残業2年、身体不調なし…それでも企業の安全配慮義務違反を問える?
2017年04月19日 10時01分

大分地裁は3月30日、弁当チェーン「ほっともっと」の元店長を「名ばかり管理職」と認定し、運営会社プレナス(福岡)に約1010万円の支払いを命じた(その後、確定)。

原告の元店長が請求したのは、2012年6月から2014年6月までの未払い残業代など。この間の残業時間は、ほぼ毎月100時間超で、最長219時間のときもあった。しかし、管理職(店長)であることを理由に残業代の支払いはなかった。判決は、自由裁量や給与の少なさから、男性は管理監督者に当たらないと判断。男性が主張する残業時間をすべて認めた。

ただし、判決には一部不満も残ったようだ。この元店長は、うつ病など具体的な健康被害こそなかったが、過労死ライン(月80時間)を超える残業が常態化していたとして、会社側の安全配慮(健康配慮)義務違反も主張。しかし、定期健康診断があったことなどから、判決はこれを認めなかった。

人によっては、月200時間の残業が原因で体調を崩すこともあるはずだ。過労死ラインをはるかに超える長時間労働があっても、健康被害が起こらないと、企業の安全配慮義務違反は問えないのだろうか。竹之内洋人弁護士に聞いた。

大分地裁は3月30日、弁当チェーン「ほっともっと」の元店長を「名ばかり管理職」と認定し、運営会社プレナス(福岡)に約1010万円の支払いを命じた(その後、確定)。

原告の元店長が請求したのは、2012年6月から2014年6月までの未払い残業代など。この間の残業時間は、ほぼ毎月100時間超で、最長219時間のときもあった。しかし、管理職(店長)であることを理由に残業代の支払いはなかった。判決は、自由裁量や給与の少なさから、男性は管理監督者に当たらないと判断。男性が主張する残業時間をすべて認めた。

ただし、判決には一部不満も残ったようだ。この元店長は、うつ病など具体的な健康被害こそなかったが、過労死ライン(月80時間)を超える残業が常態化していたとして、会社側の安全配慮(健康配慮)義務違反も主張。しかし、定期健康診断があったことなどから、判決はこれを認めなかった。

人によっては、月200時間の残業が原因で体調を崩すこともあるはずだ。過労死ラインをはるかに超える長時間労働があっても、健康被害が起こらないと、企業の安全配慮義務違反は問えないのだろうか。竹之内洋人弁護士に聞いた。

●疾患がなくても、安全配慮義務違反を認めた判決がある

ーー疾患がなければ、違反を問えないのか?

民事裁判の場において安全配慮義務違反を問うには、「『損害』賠償請求の前提として」という形にならざるをえません。何らかの「損害」が発生していないと、相手の行為がいかに違法であっても賠償責任は生じません。

したがって、長時間労働をさせたというだけでは直ちに安全配慮義務違反は問えず、うつ病の発症など何らかの損害発生が必要です。

ーーでは、原告の主張は荒唐無稽なものだったのか?

ただし、健康被害がなくても「精神的苦痛」が一定レベルを超えれば「損害」と評価し、慰謝料を求めうると言えます。

実際、うつ病などの発症がなくても会社の安全配慮義務違反が認められた事例があります。東京地裁平成28年5月30日判決では、1年以上にわたり過労死ラインとされる月80時間以上の時間外労働をさせたことや三六協定不締結、改善措置の怠りなどの事情から、疲労感の蓄積を訴えた原告に30万円の慰謝料を認めています。

とはいえ、もともと時間外割増賃金制度の趣旨には長時間労働に対する補償も含まれていますので、それではカバーしきれない高いレベルの苦痛や違法性が要求されることになるでしょう。

ーー今回の判決はどう評価できる?

本件判決では、2年間のほとんどの月に百数十時間以上、時には200時間以上もの時間外労働をさせていたことを前提としながら、会社側が健康診断の実施や相談体制の整備、業務軽減策の助言など一定の対応策を取っていたことから違法性は高くないと判断しています。

しかし、長期間にわたってここまでの過酷な時間外労働をさせれば、当該労働者も「当時は何も考えられなくなるほどつらかった」と述べているように、並ならぬ苦痛を受けるのは十分理解できます。また、かかる対応策では長時間労働を是正できていなかったわけですから、果たしてその程度の対応策を取っていたからということで慰謝料までには至らないといえるのだろうかという疑問はあります。

ーー原告の元店長が今後、何らかの健康疾患を発症した場合、ほっともっとの安全配慮義務違反を再度問うことはできる?

判決は結審までの間に裁判に現れていた事実を前提としてなされます。その後疾患が発症したとなれば、前の判決では判断できなかった事実ですので、再度裁判をすることは可能です。その際は、当時の業務に発症原因があることを証明する必要があります。

(弁護士ドットコムニュース)

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