2589.jpg
高齢者が結んだ「葬儀や墓」の契約 「遺族」があとで解除できるか
2013年08月29日 18時55分

人生の最期を迎えるにあたって、その準備を整えておこうという「終活」の動きが広がっている。あらかじめ遺骨を山や海に散骨するように指定したり、自己の葬儀や墓などの手配を生前に済ませておこうとするものだ。遺品の整理などについて説明する「終活フェア」が開催されるほどだ。

一方で、葬儀や墓など終活にかんする商品やサービスは、高額なものが多いため、最近はブームに目を付けて、法外な請求をする悪質な業者が増えているようだ。国民生活センターによると、「自分の葬儀を事前契約したが、解約したい」といった終活がらみの相談が数多く寄せられているという。

なかには、判断力が低下した高齢者が、業者のセールストークにのせられて契約してしまうケースもあるとみられる。では、もしも高齢者が、不当に高額な葬儀や墓の契約を結んでしまっていた場合、本人の死後に、遺族が解約することはできるのだろうか。魚谷隆英弁護士に聞いた。

●判断能力を失った高齢者が結んだ契約は「無効」を主張できる

一口に、高齢者が葬儀や墓の契約を結ぶといっても、そのときの高齢者の判断能力や契約時の状況はさまざまだ。魚谷弁護士は3つの場合に分けて、次のように説明する。

「まず、高齢者本人が契約した時点で、すでに判断能力を失っていたような場合が考えられます。その場合、法的には、自己の行為の結果を認識・判断する能力(=意思能力)がなかったといえ、その契約は無効と主張できる可能性があります。本人が契約をした時点ですでに無効なので、遺族からも無効を主張することができます」

次に、本人の判断能力がそこまで低下していなくても、「業者が、契約内容の重要な事項について事実と異なることを告げていたり、本人の判断能力が低下していることに乗じて詐欺的な方法で契約させていたりする場合」が考えられるという。

「このような場合には、消費者契約法や民法の規定により、契約を取消して解約することが考えられます。また、もともと本人が有していた取消権を、遺族が行使することもできるでしょう」

●日頃から「高齢者の希望」を把握しておくことが大切

しかし、高齢者本人の判断能力がしっかりしていて、内容をきちんと理解して契約していたという場合も当然、想定される。そのような場合には、「遺族が契約を解約することは難しくなります」と魚谷弁護士は指摘する。そのうえで、高齢者の家族に対して、次のようなアドバイスをしている。

「高齢の方は、周りに迷惑をかけたくないという気持ちから、家族に自分の希望を伝えない場合も多いようです。日頃から家族でよく話をして、本人がどういう希望をもっているのかを把握しておくことが大切でしょう。必要に応じて、成年後見のように本人を保護する制度の利用を考えることも大切です」

(弁護士ドットコムニュース)

人生の最期を迎えるにあたって、その準備を整えておこうという「終活」の動きが広がっている。あらかじめ遺骨を山や海に散骨するように指定したり、自己の葬儀や墓などの手配を生前に済ませておこうとするものだ。遺品の整理などについて説明する「終活フェア」が開催されるほどだ。

一方で、葬儀や墓など終活にかんする商品やサービスは、高額なものが多いため、最近はブームに目を付けて、法外な請求をする悪質な業者が増えているようだ。国民生活センターによると、「自分の葬儀を事前契約したが、解約したい」といった終活がらみの相談が数多く寄せられているという。

なかには、判断力が低下した高齢者が、業者のセールストークにのせられて契約してしまうケースもあるとみられる。では、もしも高齢者が、不当に高額な葬儀や墓の契約を結んでしまっていた場合、本人の死後に、遺族が解約することはできるのだろうか。魚谷隆英弁護士に聞いた。

●判断能力を失った高齢者が結んだ契約は「無効」を主張できる

一口に、高齢者が葬儀や墓の契約を結ぶといっても、そのときの高齢者の判断能力や契約時の状況はさまざまだ。魚谷弁護士は3つの場合に分けて、次のように説明する。

「まず、高齢者本人が契約した時点で、すでに判断能力を失っていたような場合が考えられます。その場合、法的には、自己の行為の結果を認識・判断する能力(=意思能力)がなかったといえ、その契約は無効と主張できる可能性があります。本人が契約をした時点ですでに無効なので、遺族からも無効を主張することができます」

次に、本人の判断能力がそこまで低下していなくても、「業者が、契約内容の重要な事項について事実と異なることを告げていたり、本人の判断能力が低下していることに乗じて詐欺的な方法で契約させていたりする場合」が考えられるという。

「このような場合には、消費者契約法や民法の規定により、契約を取消して解約することが考えられます。また、もともと本人が有していた取消権を、遺族が行使することもできるでしょう」

●日頃から「高齢者の希望」を把握しておくことが大切

しかし、高齢者本人の判断能力がしっかりしていて、内容をきちんと理解して契約していたという場合も当然、想定される。そのような場合には、「遺族が契約を解約することは難しくなります」と魚谷弁護士は指摘する。そのうえで、高齢者の家族に対して、次のようなアドバイスをしている。

「高齢の方は、周りに迷惑をかけたくないという気持ちから、家族に自分の希望を伝えない場合も多いようです。日頃から家族でよく話をして、本人がどういう希望をもっているのかを把握しておくことが大切でしょう。必要に応じて、成年後見のように本人を保護する制度の利用を考えることも大切です」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る