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「一方的に契約解除された」出版社訴えたフリー編集者の請求棄却、公取委が「下請法違反のおそれ」と指導も…東京地裁
2025年09月09日 19時25分
#フリーランス #下請法 #宝島社

書籍制作の請負契約を一方的に解除されたとして、フリーランス編集者の40代男性が、出版社の宝島社を相手取り、約380万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(久屋愛理裁判官)は9月9日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

裁判所は、男性が「業務一式」を請け負っていたと認めつつも、宝島社が希望する提出時期に応じられなかった点などを挙げて「下請け事業者の責めに帰すべき理由がないとまでは認め難い」とし、契約解除は不法行為にあたらないと判断した。

書籍制作の請負契約を一方的に解除されたとして、フリーランス編集者の40代男性が、出版社の宝島社を相手取り、約380万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(久屋愛理裁判官)は9月9日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

裁判所は、男性が「業務一式」を請け負っていたと認めつつも、宝島社が希望する提出時期に応じられなかった点などを挙げて「下請け事業者の責めに帰すべき理由がないとまでは認め難い」とし、契約解除は不法行為にあたらないと判断した。

●フリー編集者「一方的な契約解除は違法」と提訴

判決文などによると、男性は2021年5月、NHKの番組「100分de名著 カール・マルクス『資本論』」をマンガ書籍化する企画について、宝島社から打診を受けた。

男性はシナリオライターや作画家に外注し、制作を進めたが、番組テキスト「100分de名著 カール・マルクス『資本論』」の著者の斎藤幸平氏から「男性にマルクスを語らせたくない」との要望が寄せられ、シナリオ案を修正することになった。

宝島社は2021年7月ごろ、斎藤氏の要望に沿っていないとして、再度修正を依頼し、さらに同年9月には、出版までのスケジュールとやり取りがスムーズでなかった点を指摘したうえで、請負契約を解除すると通知した。

男性は2023年、自身に落ち度がないにもかかわらず、宝島社が一方的に作り直しを指示し、契約を解除したとして、下請法に違反して不法行為にあたるとして、未払いの報酬や慰謝料など計約380万円の支払いを求めて東京地裁に提訴した。

●作り直し指示や契約解除は違法か?

主な争点は、(1)請負契約の範囲が「業務一式」だったのか、それとも「一部」だったのか、(2)宝島社による作り直し指示や契約解除が不法行為にあたるか。

原告は「表紙デザインを除く制作業務一式を請け負った」と主張し、被告は「マンガパートの編集とシナリオの構成協力だけ」と反論。

また、原告は「自身に落ち度はなかった」とうったえ、被告は「作業に遅れが生じ、出版スケジュールに応えられなくなるなど、契約解除に正当な理由があった」と対立した。

画像タイトル 判決後に記者会見を開く原告代理人の青龍弁護士(2025年9月9日/東京・霞が関の司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)

●東京地裁、契約は「業務一式」だが請求は棄却

東京地裁はまず、「原告が書籍に係る業務一式を受注した」と認定した。

しかし、制作過程では、著者の要望などに「必ずしも沿わない面があったことは否定できず」、また、出版スケジュールに「応えることができない状況に至った」と指摘。

そのうえで、宝島社による作り直し指示と契約解除の違法性について、「下請事業者の責めに帰すべき理由がないとまでは認め難い」などとして、原告の請求を退けた。

●原告は控訴の意向「不当判決だ」

この事案をめぐっては、公正取引委員会は2023年6月、宝島社の対応について、下請法違反のおそれがあるとして、同社に指導をおこなっていた。

判決後の記者会見で、原告代理人の青龍美和子弁護士は「裁判所の事実認定には誤りがあり、われわれとしては不当判決だ」として控訴する意向を示した。

原告の男性は「この判決によって他のフリーランスの方の足を引っ張るのではないかと懸念しています」と語った。

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