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月200時間超の残業…過労で起こした「死亡事故」で上司も書類送検、社会への影響は?
2018年05月12日 09時07分

2017年の衆議院議員選挙の前日に、兵庫県川西市の選挙管理委員会の男性職員(50代)が起こした死亡事故を巡って、県警が4月23日、男性職員に加え、過労を知りながら運転を命じたとして、上司の選管事務局長(50代)も道交法違反(過労運転下命)の疑いで書類送検した。

日本経済新聞電子版(4月23日)によると、事故は2017年10月21日の夕方に発生。男性職員は期日前投票所の片付けに向かう途中だった。事故直前の1か月は残業時間が200時間を超えていて、1日も休みがなかったという。

運転手など運送業務中の交通労働災害については調査や対策が行われている。しかし、一般企業で起こった過労による「通勤事故」については、民事裁判でも労災以上に会社の責任(安全配慮義務)が認められた例はほとんどない。

なお、通勤災害とされる場合の「通勤」は、住居と就業場所の往復だけでなく、就業場所から他の就業場所への移動も含んでいる。

今回の兵庫県警の判断を、専門家はどう評価するか。通勤中の「過労事故」についての事件を担当したことのある、川岸卓哉弁護士に聞いた。

2017年の衆議院議員選挙の前日に、兵庫県川西市の選挙管理委員会の男性職員(50代)が起こした死亡事故を巡って、県警が4月23日、男性職員に加え、過労を知りながら運転を命じたとして、上司の選管事務局長(50代)も道交法違反(過労運転下命)の疑いで書類送検した。

日本経済新聞電子版(4月23日)によると、事故は2017年10月21日の夕方に発生。男性職員は期日前投票所の片付けに向かう途中だった。事故直前の1か月は残業時間が200時間を超えていて、1日も休みがなかったという。

運転手など運送業務中の交通労働災害については調査や対策が行われている。しかし、一般企業で起こった過労による「通勤事故」については、民事裁判でも労災以上に会社の責任(安全配慮義務)が認められた例はほとんどない。

なお、通勤災害とされる場合の「通勤」は、住居と就業場所の往復だけでなく、就業場所から他の就業場所への移動も含んでいる。

今回の兵庫県警の判断を、専門家はどう評価するか。通勤中の「過労事故」についての事件を担当したことのある、川岸卓哉弁護士に聞いた。

●上司も書類送検「実態に即した適切な判断」

ーー今回男性職員に過労運転をさせたとして、男性職員の上司も道交法違反容疑で書類送検されました。どう評価しますか。

「刑罰の課される過労運転について、事故を起こした当事者以外の管理監督者の責任も追及されることになったことは、異例で画期的であるといえます。

しかし、これは本来は当然のことです。労働法上、使用者(会社側)には、労働者に過度に疲労を蓄積させて健康被害等を生じさせてはならないという『安全配慮義務』を負っています。

今回の書類送検は、事故を起こした運転者の背景にある過労実態を適切に捉えて、真の事故責任者を処罰する判断をしたもので、実態に即した適切な判断といえます」

●刑事上も責任を問われることが明らかに

ーー今回の書類送検が与える影響について、どう考えますか。

「通勤途上の交通事故は、労働者の自己責任の範囲とされ、事業者の安全配慮義務違反が問われることはほとんどありませんでした。労災認定上も、『通勤災害』は通勤経路であれば労災認定されますが、事故の背景にある過労実態について調査されることはなく、事業者も対策を怠ってきました。

今回の書類送検によって、会社側が、過労状況に追い込んで通勤時に運転をさせた結果発生した事故について、民事上のみならず、刑事上も責任を問われる可能性があることが明らかになりました。各企業は通勤途上の過労事故を防ぐ対策を迫られると考えます」

●過労事故も過労死の一類型

ーー通勤中の「過労事故」について、川岸弁護士が担当した事例はどのようなものだったのでしょうか。

「21時間勤務後にバイクで帰宅中に事故死した男性について、会社の責任が認められました(グリーンディスプレイ過労事故死事件、2018年2月8日横浜地方裁判所川崎支部決定)。これは和解決定でしたが、和解勧告で過労事故対策の必要性を裁判所が宣言し、通勤帰宅途上における会社の安全配慮義務を明確に法規範として打ち立てた画期的な判断でした。

遺族は3月1日、厚労省に対して、過労運転事故の実態調査と対策を求める申し入れを行いました。その中では、再発防止策の一つとして11時間の勤務間インターバル規制の法制化を要請しました。これを実施すれば、過労事故死をはじめとするほとんどの過労死を無くすことができ、政府案の時間外労働の上限規制よりも抜本的な解決に繋がると思います。

今、社会問題となっている過労死や過労自殺について、かつては自己責任とされていましたが、裁判例の積み重ねの結果、真の責任者である会社側が責任を負うという考えが定着していきました。今後、潜在する過労事故についても、過労死の一類型として対策が進むことが求められます」

(弁護士ドットコムニュース)

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