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「身に覚えがない」ときでも、警察の要請があれば「出頭」したほうがいいのか?
2013年09月14日 16時00分

スピード違反の出頭要請に応じず逮捕――。スピード違反というと青、赤のいわゆる「切符」が渡されるというのが定番だが、逮捕にまで至るケースもあるようだ。

報道によると、約1年5か月のあいだに15回も出頭要請を受けたのに応じなかった40代の男性が8月下旬、埼玉県警に逮捕された。男性は昨年3月、さいたま市内の国道で軽自動車を運転しているとき、法定速度(60キロ)を41キロ超える時速101キロで走行した疑いがもたれている。

自動速度取り締まり装置で検出され、警察が郵送などで15回にわたり出頭要請したが、応じなかった。男性は「身に覚えがないので出頭しなかった」と供述しているという。はたして、身に覚えがなく、自分は無実だと考えている場合でも、要請があれば出頭しなければいけないのか。道路交通法にくわしい池田毅弁護士に聞いた。

●「赤切符」を切られると、裁判手続で処理されることになる

まず、一概にスピード違反といっても「青切符」と「赤切符」で違いがあるという。高速道路で40キロ以上、一般道路で30キロ以上の速度超過の場合、赤切符となる。それより小さい速度オーバーならば、青切符だ。

「今回の事件は、一般道で法定速度を41キロも超えているということなので、青切符のときのように『反則金』では済まずに、刑事裁判手続で処理されるケースです」

今回のような事件のときは、警察、検察の捜査を経て(略式)裁判で罰金刑などの刑事処分が決まるという流れになるという。略式とはいえ、裁判となる事件のようだが、警察には出頭する義務があったのか?

「警察から出頭要請があった段階では、いわゆる任意捜査ですから、法的な義務かどうかといえば、義務ではないともいえます。

しかし、警察が出頭要請をするということは、既に警察はある程度の証拠をもっていることが予想されます。特に、今回の場合、自動取り締まり装置で速度やナンバー、顔写真が記録されているはずです」

●裁判所が「逃亡の恐れあり」と判断すれば、逮捕されることもある

警察への出頭は法的義務ではないのだが、「見に覚えがない」と無視を決め込んでいれば警察が見逃してくれる、というわけではないらしい。

「逮捕は、裁判所の『令状』に基づいて行われますが、逮捕令状は、犯人と疑う証拠があって、かつ『逃亡』の可能性がある場合などに発布されます。ですから、スピード違反の疑いがあるとして警察からの呼び出しを受けているのに、それを無視していると、逃亡する可能性があるとして逮捕状が出ることは十分ありえます。

今回のケースで、逮捕された男性が具体的にどの程度の対応をしていたのかは、分かりません。しかし15回の呼び出しにも応じなかったとすれば、裁判所が逃亡の恐れありと判断したのもやむを得ないでしょう」

どうやら、この事件で逮捕があったこと自体は、法律のプロから見て不自然ではないようだ。無実を主張したい場合はどうしたらいいのか。

「もちろん、本当に犯罪(スピード違反)を犯したかどうかは、最終的には、裁判所が証拠に疑わしいところがないかをチェックした上で判断することになりますから、結果的に無実となる可能性はあります」

そうだとすれば、あくまでも無視して、裁判で「自分でスピード違反をしていない」と主張して争う手もないわけではないだろう。だが、そこに至るまでに、逮捕されるなど社会生活上の色々な不利益をこうむる可能性がある。

「身に覚えがないという場合であっても、警察からの呼び出しの段階で、それを無視するという対応は望ましくないと言えますね。早めに弁護士に相談をして、ちゃんと警察への対応をしてもらうのがよいと思います」

やはり、自分が無罪と信じていても、素人判断で無視を決め込むのではなく、早い段階で弁護士に相談するのが良さそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

スピード違反の出頭要請に応じず逮捕――。スピード違反というと青、赤のいわゆる「切符」が渡されるというのが定番だが、逮捕にまで至るケースもあるようだ。

報道によると、約1年5か月のあいだに15回も出頭要請を受けたのに応じなかった40代の男性が8月下旬、埼玉県警に逮捕された。男性は昨年3月、さいたま市内の国道で軽自動車を運転しているとき、法定速度(60キロ)を41キロ超える時速101キロで走行した疑いがもたれている。

自動速度取り締まり装置で検出され、警察が郵送などで15回にわたり出頭要請したが、応じなかった。男性は「身に覚えがないので出頭しなかった」と供述しているという。はたして、身に覚えがなく、自分は無実だと考えている場合でも、要請があれば出頭しなければいけないのか。道路交通法にくわしい池田毅弁護士に聞いた。

●「赤切符」を切られると、裁判手続で処理されることになる

まず、一概にスピード違反といっても「青切符」と「赤切符」で違いがあるという。高速道路で40キロ以上、一般道路で30キロ以上の速度超過の場合、赤切符となる。それより小さい速度オーバーならば、青切符だ。

「今回の事件は、一般道で法定速度を41キロも超えているということなので、青切符のときのように『反則金』では済まずに、刑事裁判手続で処理されるケースです」

今回のような事件のときは、警察、検察の捜査を経て(略式)裁判で罰金刑などの刑事処分が決まるという流れになるという。略式とはいえ、裁判となる事件のようだが、警察には出頭する義務があったのか?

「警察から出頭要請があった段階では、いわゆる任意捜査ですから、法的な義務かどうかといえば、義務ではないともいえます。

しかし、警察が出頭要請をするということは、既に警察はある程度の証拠をもっていることが予想されます。特に、今回の場合、自動取り締まり装置で速度やナンバー、顔写真が記録されているはずです」

●裁判所が「逃亡の恐れあり」と判断すれば、逮捕されることもある

警察への出頭は法的義務ではないのだが、「見に覚えがない」と無視を決め込んでいれば警察が見逃してくれる、というわけではないらしい。

「逮捕は、裁判所の『令状』に基づいて行われますが、逮捕令状は、犯人と疑う証拠があって、かつ『逃亡』の可能性がある場合などに発布されます。ですから、スピード違反の疑いがあるとして警察からの呼び出しを受けているのに、それを無視していると、逃亡する可能性があるとして逮捕状が出ることは十分ありえます。

今回のケースで、逮捕された男性が具体的にどの程度の対応をしていたのかは、分かりません。しかし15回の呼び出しにも応じなかったとすれば、裁判所が逃亡の恐れありと判断したのもやむを得ないでしょう」

どうやら、この事件で逮捕があったこと自体は、法律のプロから見て不自然ではないようだ。無実を主張したい場合はどうしたらいいのか。

「もちろん、本当に犯罪(スピード違反)を犯したかどうかは、最終的には、裁判所が証拠に疑わしいところがないかをチェックした上で判断することになりますから、結果的に無実となる可能性はあります」

そうだとすれば、あくまでも無視して、裁判で「自分でスピード違反をしていない」と主張して争う手もないわけではないだろう。だが、そこに至るまでに、逮捕されるなど社会生活上の色々な不利益をこうむる可能性がある。

「身に覚えがないという場合であっても、警察からの呼び出しの段階で、それを無視するという対応は望ましくないと言えますね。早めに弁護士に相談をして、ちゃんと警察への対応をしてもらうのがよいと思います」

やはり、自分が無罪と信じていても、素人判断で無視を決め込むのではなく、早い段階で弁護士に相談するのが良さそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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