半同棲中の彼氏から大切なペットを虐待されてしまった——。そんな深刻な相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者の女性によると、交際している彼氏が勝手に居座って半同棲状態になったそうです。しかし現在は、別れたいといいます。
その理由は、女性が見ていない隙に、彼氏が飼い猫の首を絞めて持ち上げたり、横腹をわざと踏んだりしていたと告白されたこと。女性は暴行の証拠写真や、動物虐待について話している音声記録も残しているといいます。
近年、動物虐待への社会的関心が高まっています。相談者の女性は、法的にはどのような対応が可能なのでしょうか。また、慰謝料請求や刑事告発の可能性についてペット問題に詳しい細川敦史弁護士に聞きました。
●動物への虐待行為、法的にはどのような問題がある?
──相談者の交際相手の行為について、どのような法的問題があるのでしょうか
同棲中の交際男性の暴力性が判明し、強い恐怖を感じられていると思います。
別れ話を切り出した途端、彼の暴力が相談者に向かう可能性もあります。相談者自身と飼い猫の安全確保が最優先であることは言うまでもありませんが、今回は、飼い猫に対する彼の暴力について、法的責任や取りうる手続対応について検討します。
猫への暴行がわかってすぐに動物病院で診察を受け、傷害結果の診断書が出れば、動物傷害罪(動物愛護管理法44条1項)が成立する可能性があります。
相談者がスマホで撮影した写真や本人の音声記録だけでは、傷害結果を証明することは難しいように思います。ただ、暴行を加えた事実があれば、動物虐待罪(同法44条2項)が成立する可能性があります。
それぞれ罰則は、動物傷害罪が「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」、動物虐待罪は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」と定められています。
●民事上の請求はできる?
──相談者がこれからできることはありますか?
まずは最寄りの警察に相談してください。
刑事告発は必須ではありませんが、警察が捜査に積極的ではない場合に、捜査義務を生じさせる法的な効果があるので、弁護士に相談するなどして告発が可能かを検討するとよいでしょう。
民事上の責任については、猫の治療費やあなたの精神的苦痛に対する慰謝料を請求することが考えられます。
交通事故や医療過誤などの過失の場合、動物が死亡しても20万円〜30万円程度の慰謝料しか裁判では認められないケースが多いです。
幸い飼い猫は亡くなっていないようで、故意による暴行傷害であることを考慮しても、多額の慰謝料が認められるわけではないと思います。
あなたが損害賠償請求をしても、彼がすんなり支払うとは考えにくく、どこまでの手続をとるかは、弁護士に相談した上で決めるとよいでしょう。