3667.jpg
「こんな改革案でえん罪がなくせるのか」 えん罪被害者が「刑事司法改革案」を批判
2014年09月18日 21時02分

やってもいないことで犯罪者として扱われる「えん罪」。繰り返されるえん罪事件を防ぐため、国が進めている刑事司法改革に9月18日、当のえん罪被害者たちが「ノー」を突きつけた。

この日は法務省の法制審議会が、法務大臣に「改革案」を答申する日だった。えん罪被害者たちは、このままだとえん罪の温床がそのままになるだけでなく、新たなえん罪を生みかねないとして、答申をやめるよう審議会に要望し、記者会見を開いた。

やってもいないことで犯罪者として扱われる「えん罪」。繰り返されるえん罪事件を防ぐため、国が進めている刑事司法改革に9月18日、当のえん罪被害者たちが「ノー」を突きつけた。

この日は法務省の法制審議会が、法務大臣に「改革案」を答申する日だった。えん罪被害者たちは、このままだとえん罪の温床がそのままになるだけでなく、新たなえん罪を生みかねないとして、答申をやめるよう審議会に要望し、記者会見を開いた。

●「取り調べでウソの自白をさせられた」

「えん罪をなくすという真剣な姿勢が感じられない」。えん罪被害者の一人、桜井昌司さんは厳しい表情で、「改革案」を切り捨てた。

桜井さんは、1967年に茨城県で起きた「布川事件」で殺人犯とされ、無期懲役で服役した。しかしその後、新証拠が見つかったことなどで裁判がやり直され、2011年に無罪となった人物だ。

桜井さんが強調した改革案の問題点は、目玉だったはずの「取り調べの全面可視化」が、全体のわずか2%でしか行われないことだ。

「私たちは、警察の取り調べでウソの自白をさせられた。逮捕された時点で『犯人』として扱われ、罵声を浴びせられた。(同じくえん罪被害者の)菅家さんは蹴られたり、殴られたり、眠らせてもらえなかったりした」

桜井さんは、自分たちえん罪被害者の体験をこう振り返る。取り調べが完全に可視化されない限り、同じように自白を強要される人が、また出てきてしまう――。桜井さんはそう心配しているのだ。

桜井さんは「こんなので本当にえん罪をなくせるのか。私たちが無罪になったことに何も感じていないのだろうかという怒りがある」と力を込めて語った。

●「警察のやり方は今でも絶対に許さない」

同じく会見に出席した菅家利和さんは、ときおり語気を強めながら「警察、検察のやり方を変えてもらいたい」と訴えた。

菅家さんは1990年に栃木県で起きた「足利事件」で、誘拐殺人犯として無期懲役の判決を受け服役。その後、2009年に行われたDNA鑑定によって無実が判明し、裁判のやり直しで無罪となった。

「私は何もやっていないのに、犯人にされた。(警察に)連れて行かれて、殴られて、蹴飛ばされ、無理やり自白させられた。そういう警察のやり方は今でも絶対に許さない。

警察は何をやっても許されるのか。警察こそ犯罪者じゃないのか。自分は無罪になったけども、それで終わりじゃない」

菅家さんはそう怒りをぶつけていた。

桜井さんや菅家さんたちは、今回の案が検察側の証拠を裁判で開示しないとしていることに加え、司法取引の導入や盗聴捜査の拡大などを盛り込んでいることも問題視し、えん罪被害者の声を聞くよう求めている。

しかし、法制審議会はこの日の午後、法務大臣へ改革案を答申した。今後、「刑事司法改革」の議論の場は法務省、内閣などを経て、国会に移ることになりそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る