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ゲーム不正指南で与えた損害8000万円…発信者特定されたブログ主、後悔にじませる
2020年06月26日 12時05分

「どこにも情報がなかったので、ほんとうに軽い気持ちで載せてしまったんです」。オンラインゲーム上で不正なアカウントを作成する方法を自分の匿名ブログに掲載した男性(23歳・学生)だ。

実際に、このブログを閲覧して、不正なアカウントを複数つくり、いわゆる「荒らし投稿」を繰り返していた高校生が昨年12月、偽計業務妨害と私電磁的記録不正作出・同供用罪の疑いで書類送検された。

運営会社の被害額は、ざっと見積もって8000万円にのぼるという。男性自身も、発信者情報開示の仮処分を受けて、すでに本人特定されている。6月上旬、新型コロナ予防のマスク越しに後悔をにじませながら、弁護士ドットコムの取材に応じた。

「どこにも情報がなかったので、ほんとうに軽い気持ちで載せてしまったんです」。オンラインゲーム上で不正なアカウントを作成する方法を自分の匿名ブログに掲載した男性(23歳・学生)だ。

実際に、このブログを閲覧して、不正なアカウントを複数つくり、いわゆる「荒らし投稿」を繰り返していた高校生が昨年12月、偽計業務妨害と私電磁的記録不正作出・同供用罪の疑いで書類送検された。

運営会社の被害額は、ざっと見積もって8000万円にのぼるという。男性自身も、発信者情報開示の仮処分を受けて、すでに本人特定されている。6月上旬、新型コロナ予防のマスク越しに後悔をにじませながら、弁護士ドットコムの取材に応じた。

●迷惑がかかるという意識はなかった

男性がブログを開設したのは、2018年初めのことだ。

その後、しばらく放置していたが、同年夏、オンラインゲーム「人狼ジャッジメント」のユーザーから、アカウントが凍結されても正規登録のユーザーを装ってアカウントを登録し直す方法を教えてもらって、ブログに掲載した。

当時、運営会社に迷惑がかかるかもしれないという意識は一切なかったという。

サーバー会社を通じて、任意の情報開示を求められたが、「ブログ内容は公共性・公益性があり内容は事実である。表現の自由が満たされる。ゆえに権利侵害には該当しない」「(運営会社が)有効な対応を取らないことが問題である」などと拒絶した。

●任意の情報開示に焦った

2019年4月、このブログを閲覧した高校生が、アカウントを停止されたあとも、不正な方法で複数のアカウントを複数つくり、さらにチャット機能で大量のスタンプを連投するなど、ほかのプレイヤーを妨害する「荒らし行為」を繰り返すという事件が発生した。

その後、高校生は、偽計業務妨害と私電磁的記録不正作出・同供用罪の疑いで書類送検された。

この事件を受けて、ようやく男性は自分のやったことの重大さに気づいた。「とんでもないことやってしまったと思いました。ちょっと考えたら、わかることでした。後悔しています」。では、なぜ発信者情報の開示を拒絶したのか。

「サーバー会社から連絡がきたとき、とても焦りました。もしかしたら、開示されずに済むんじゃないかと思って、反論してしまいました。焦りからくる精神的不安定さから、書くべきことじゃないことを書いてしまったんだと思います」

運営会社の代理人の中島博之弁護士は次のように指摘する。

「ブログは、アプリへの不正方法を投稿・拡散するとともに、ブログの質問欄において不正に関する質問にも積極に回答するなどしていました。そして、昨年送検された被疑者もこのブログを見て犯行をおこなったとの裏付がとれております。これらのことから、運営会社に対する業務妨害罪・同罪の教唆にあたる可能性や不法行為責任を負う可能性が高いです」

●男性はあやまちを認めた

その後、発信者情報開示の仮処分を受けたこともあり、男性はあやまちを認めて、「アカウント再登録方法を掲載したお詫び」という謝罪文も会社側に提出した。

「なによりもまずお詫びを申し上げます。

このたびは、荒らしユーザの増加を招く記事を掲載したことにより、運営の皆さま及びユーザの皆さまに多大なご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。

本件につきましては、私の軽率な行動によるものでございます。内容の是非を吟味せずに発信した、自身の浅はかさを恥じる思いでございます。

私の不注意により、多くの方に多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。

今後は、再発防止のため、細心の注意を払う所存でございます」

●「慎重に生きていきたい」

前出の中島弁護士は次のようにコメントする。

「昨今、インターネット上の誹謗中傷や権利侵害が問題となっておりますが、アプリ上で不正行為をおこなうことや、不正方法をインターネット上に投稿することも同種の行為といえます。

不正行為やそれを拡散する行為によって、実際に迷惑を受けるほかの利用者の方々や、対応のために監視人員の増強・システム開発等で損害を被る企業がいることを実際に想像してください。

実行に移す前に自分の行為が正しいことなのか時間をおいて少し考えれば、他者を傷つけることや自分が法的責任追及を受ける事態を回避できるはずです」

今後、どう生きていくのか――。男性にこんな質問をぶつけてみると、「一度踏みとどまって、ネットを使うのがいいと思っています。これからは規則、規約を十分に確かめて、慎重に生きていきたいです」と答えた。

ちょっとした軽はずみな行動が、さまざまな人たちに迷惑をかけて、のちのち大きな代償になって返ってくることがある。男性だけの話ではない。ネット上では、今もこうしたことが繰り返されている。

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