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田中圭さん主演ドラマ『あな番』公式アカウント乗っ取り被害…法的には?
2021年01月21日 10時57分

2019年に放送された連続ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)で、俳優の田中圭さんが演じた役柄(翔太)のインスタグラムが何者かに乗っ取られた。番組の公式アカウントが1月18日、そう報告した。

ドラマは、田中さんと女優の原田知世さんがダブル主演し、放送終了後もインスタグラムのアカウントは残されていた。

1月18日、乗っ取り事件が発生すると、ドラマの公式アカウントが「翔太くんのインスタへのアカウント乗っ取りが発生しました」と報告し、お騒がせしてしまい本当に申し訳ございません…!!」と謝罪。「現在、原因究明とともに、アカウントの削除を依頼しております」と説明した。

乗っ取られたアカウントは、田中さんがレタスを食べている画像に、「レタスは会話のようなものです。フレッシュでサクサクしているので、苦味にほとんど気付かないほどキラキラしています」と不自然な日本語を投稿していた(1月21日現在、投稿はすでに削除されている)。

SNSの乗っ取りには、どのような法的な問題があるのだろうか。唐澤貴洋弁護士に聞いた。

――SNSの乗っ取りについて、どのような法的な問題がありますか。

インスタグラムやツイッターのアカウント乗っ取りにより生じる法的問題は2つあります。

1つは、乗っ取り犯の刑事責任の問題です。他人のIDとパスワードを用いて、無断でツイッターアカウントを利用する行為は、不正アクセス禁止法(第11条、第3条、第2条4項1号)に違反するとして、刑事責任(3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)を問われる可能性があります。

――民事については、どうなりますか。

民事責任の中でもその内容で大きく2つに分かれると考えられます。

民事責任の1つ目は、被害者本人が乗っ取られたアカウントを利用して自由な表現活動をできなくなったことについての損害賠償責任です。

また、乗っ取り犯が、乗っ取ったアカウントを用いて、社会的に問題とされるツイートやDM(ダイレクトメッセージ)を投稿することによって、あたかも被害者本人が当該投稿をおこなったかのような印象を閲覧者に与えてしまいかねません。

そのことによって、被害者本人の名誉権等が侵害されたとして、乗っ取り犯に損害賠償責任が生ずる可能性があります。これが2つ目に考えられる民事責任です。

――乗っ取られた場合、どのように特定すればよいのでしょうか。

本人になりすます行為をされた場合、そもそも、なりすました者を特定できるのかが問題となります。なりすました者が、元々あるアカウントを乗っ取ることにより不正アクセス禁止法に反する行為をしていれば、警察による捜査を期待できます。

また、民事では、なりすました者を特定するために、いわゆるプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求をすることが考えられます。

このような発信者情報開示請求により発信者特定の問題が解決できれば、なりすましによって、名誉毀損などの損害が生じたとして、なりすました者は本来のアカウント開設者から損害賠償請求される可能性があります。

2019年に放送された連続ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)で、俳優の田中圭さんが演じた役柄(翔太)のインスタグラムが何者かに乗っ取られた。番組の公式アカウントが1月18日、そう報告した。

ドラマは、田中さんと女優の原田知世さんがダブル主演し、放送終了後もインスタグラムのアカウントは残されていた。

1月18日、乗っ取り事件が発生すると、ドラマの公式アカウントが「翔太くんのインスタへのアカウント乗っ取りが発生しました」と報告し、お騒がせしてしまい本当に申し訳ございません…!!」と謝罪。「現在、原因究明とともに、アカウントの削除を依頼しております」と説明した。

乗っ取られたアカウントは、田中さんがレタスを食べている画像に、「レタスは会話のようなものです。フレッシュでサクサクしているので、苦味にほとんど気付かないほどキラキラしています」と不自然な日本語を投稿していた(1月21日現在、投稿はすでに削除されている)。

SNSの乗っ取りには、どのような法的な問題があるのだろうか。唐澤貴洋弁護士に聞いた。

●「民事・刑事双方の責任を負う可能性」

――SNSの乗っ取りについて、どのような法的な問題がありますか。

インスタグラムやツイッターのアカウント乗っ取りにより生じる法的問題は2つあります。

1つは、乗っ取り犯の刑事責任の問題です。他人のIDとパスワードを用いて、無断でツイッターアカウントを利用する行為は、不正アクセス禁止法(第11条、第3条、第2条4項1号)に違反するとして、刑事責任(3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)を問われる可能性があります。

――民事については、どうなりますか。

民事責任の中でもその内容で大きく2つに分かれると考えられます。

民事責任の1つ目は、被害者本人が乗っ取られたアカウントを利用して自由な表現活動をできなくなったことについての損害賠償責任です。

また、乗っ取り犯が、乗っ取ったアカウントを用いて、社会的に問題とされるツイートやDM(ダイレクトメッセージ)を投稿することによって、あたかも被害者本人が当該投稿をおこなったかのような印象を閲覧者に与えてしまいかねません。

そのことによって、被害者本人の名誉権等が侵害されたとして、乗っ取り犯に損害賠償責任が生ずる可能性があります。これが2つ目に考えられる民事責任です。

●なりすまし、どう特定すればいいのか?

――乗っ取られた場合、どのように特定すればよいのでしょうか。

本人になりすます行為をされた場合、そもそも、なりすました者を特定できるのかが問題となります。なりすました者が、元々あるアカウントを乗っ取ることにより不正アクセス禁止法に反する行為をしていれば、警察による捜査を期待できます。

また、民事では、なりすました者を特定するために、いわゆるプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求をすることが考えられます。

このような発信者情報開示請求により発信者特定の問題が解決できれば、なりすましによって、名誉毀損などの損害が生じたとして、なりすました者は本来のアカウント開設者から損害賠償請求される可能性があります。

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