SNSやメディアで耳にすることが多くなってきたコンセプトカフェ、通称コンカフェ。秋葉原を中心に、東京都心で広がり、通りにメイドなどの制服を着た店員が並んでいる。
コンカフェとは、動物や悪魔、海賊などの衣装を身にまとったキャストと交流できるカフェのこと。基本はお酒を取り扱う店舗で、カフェ＆バーとして営業している。主に若い女性が酒を提供し、時には一緒に乾杯しながら会話を楽しむ場所だ。
弁護士ドットコムニュースでは、コンカフェで勤務経験のある4人の座談会を行い、その実態を取材。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律（風営法）や労働基準法の観点では「グレー」な点も指摘される。若林翔弁護士に聞いた。
●月80万の猛者も…コンカフェの給料事情
ーーコンカフェで売上を上げるためにしていたことはありますか？
C…お酒をたくさん飲んだほうがキャスト（店員）のドリンク代が上乗せされるので稼げます。シャンパンやショットとかを飲ませてもらうのをドリンクバックといって、お客さんが払う金額の何％かが給料プラスで入る仕組みになってます。
ーー売上の高い人に特徴はありますか？
B…日々、連絡を取り合って定期的にお店に来てもらう人もいれば、外に立ってお客さんを引くビラ配りで、見た目を気に入ってもらえる人もいます。もちろん面白い喋りで延長させる人もいます。一概に顔だけとは言えないです。
ーーコンカフェは他のアルバイトよりも給料が高いイメージですが、実際どのくらいの金額をもらっていましたか？
A…お客さんが入りやすい金曜と土曜の週2日、合計で月に8日間勤務で30万円くらい。給料だけじゃなく、ドリンクバックなど私目当てで来てくれたことに対するプラスの料金を含めてです。私のお店は単価が高いので、その分もらえる額も大きいのが魅力でした。
C…一番長く働いていた時は未成年だったので、お酒も全く飲めなかったのですが、結構出勤日数が多かったので30万円ぐらいです。誕生日のイベントのときは70〜80万円ぐらいいってましたね。シャンパンタワーも出たんで、かなりバックは入ってきました。
フィリコという飾りが付いたボトルは12〜18万円。中身は単なる水ですが、おねだりすると入れてくれるお客さんはいます。
D…私は昼にも働いていて、飲食店でもバイトしていたので、3つ掛け持ちの状態でした。週に4、5日は出勤しても勤務時間が少ないという感じでしたけど、25万円前後ですかね。ほとんどはバックとかで稼ぐ形になってました。
●目指せ売れっ子コンカフェ嬢！客とのコミュニケーションで苦悩
ーーお客さんに多く来てもらうためにしていたことがあれば教えてください。
A…私は個人的な連絡先を交換することができなかったので、twitterでアカウントを作成して、連絡を取っていました。話題を見つけるために細かくお客さんの動向を探って、自分に興味を持ってもらうようにしていました。
C…LINE交換もTwitterのDMも禁止だったので、アメーバブログをずっと書いてました。1日の出勤が終わった後、来てくれたお客さんに対してのお礼の文を書いて、見た人がリピートしてくれるのを狙っていました。
ーーコンカフェは接客業なので、これまでたくさんのお客さんと話してきたと思います。接客する上で大変だったエピソードやトラブルを聞かせてください。
A…無銭飲食ですね。お金下ろしてくるねって言ってそのまま走って逃げちゃいました。例えば携帯とか保険証とか預かっておけばよかったんですが…。男性従業員が一緒についていかないと何かあった時に力でもかなわない。結局その時の会計は15万円だったんですけど、戻ってきませんでした。
B…毎日のように電話がかかってきて、外で会おうよとかの連絡も来た。あんまり連絡を取らなかったら怒ってしまって、お店にいる間ずっとネチネチ言われたり。お金をたくさん使ってくれるので、むげにもできず「連絡しなきゃ」というプレッシャーで精神を病んでしまっていた時期もありました。
C…ガチ恋といって、キャストのことを恋人だと錯覚しているお客さんにストーカーのような行為をされたことがあります。プライベートで買い物してる時に歩いてて、後ろを振り向いたらついてきてたんですよ。家までは来てないだろうけど、怖かったですね。
B…お店が出入り禁止にしてくれる場合もありますが、たいていはお金を使ってくれるお客さんなので「実害が出ていない」といって様子見になることもあります。実害が出てからじゃ遅いんですけどね。
●店との契約書はほぼなし、労働条件などの説明は口頭だけ
ーー勤務内容が法に触れているんじゃないか、といった疑問を抱いたことはありますか？
A…お店のコンセプトに合わせた衣装＝店服（てんぷく）が水着のところがありました。しかも業態が完全にキャバクラでした。求人サイトに書いてたものとは全く違う仕事をさせられたり、給料も記載されていた内容とは異なることがほとんどです。
C…コンカフェは基本接待行為が禁止なので、お客さんと話すのも5～10分で交代しなければならないのですが、最近は同伴や指名制度のあるところが多いです。特定の風営法の許可を取得していなければ禁止行為ですね。
業務内容や給料が記載してある契約書は基本もらえないので、不信感を募らせても、お店にとって都合が悪いことであれば丸め込まれてしまいます。
ーー最近のコンカフェ事情を教えてください。
A…Tiktokとかで流行っているというのもあって、10年くらい前のコンカフェとは違うイメージ。昔は酒飲まされるとか、暴言を吐かれるとか、あくまでお客さんが上の立場だった。
今は逆にこっちがアイドルみたいに、ちやほやしてもらう場所になっていると思います。たぶん高校生とか若い子たちも可愛い衣装着てお金もらえる、と認識しているんじゃないでしょうか。
C…最近だとSNSで10万人以上のフォロワーがいるようなインフルエンサーに会えて貢ぐことが出来る場所にもなっていますね。「会える屋さん」ってやつ。これまでオフ会とかじゃないと会えなかったけど、気軽に会えてインフルエンサー側も収入が増える。「キラキラしたコンカフェ」で、金額も高額です。
●風営法に詳しい弁護士の見解
10〜20代の女性の働く場所として存在感を出しているコンカフェの裏側が見えてきた。風営法に詳しい若林弁護士に、コンカフェで勤務する際の危険性について聞いた。
「コンカフェの形態は、ほぼ基本的に風営法に違反している場合が多いです。朝5時まで営業しているコンカフェは深夜酒類提供飲食営業という形態なので、キャストドリンクや連絡先交換等の接待行為はアウトです。
もしそのような行為をするのであれば、風営法1号営業の許可を取得しなければいけません。コンカフェでもガールズバーでもカウンター越しに立って、継続的に談笑しているだけで『接待』になります。
それをごまかすために15分ほどで交代する制度があるわけです。つまりほとんどのお店は摘発されていないだけで、いつでも警察に目をつけられる可能性があります。
一番捕まりやすいのが、18歳未満を働かせている場合です。コンカフェに憧れて働く高校生も多いと聞きますが、18歳未満は完全にアウトなので働くとしても、そういう店は気をつけましょう。
目をつけられるという意味では税務署も要注意です。高額な給料をもらった場合、税金を納めなければなりませんが、コンカフェの場合はお店側が源泉徴収している場合がほとんどです。優良店は契約書や明細を出しますが、もらえない場合は店に聞いた方がいいでしょう。
ただ店がしていないとか、個人では判断がつかない場合もあるので、自分で確定申告をするべきです。夜職で稼いでいくなら税理士に相談するのも手です。
長時間勤務していても、深夜手当や残業代がついてない場合もあります。3年分くらいで数百万円とれるでしょう。明細の出ない店ならば、自分で勤務の記録を取っておくこと。LINEの出退勤の記録でも十分です」
