5094.jpg
解雇された料理長がレストランのツイッターアカウントで「復讐」!問題ないの?
2014年01月08日 14時30分

クリスマス前にレストランを解雇された料理長が、店のツイッター公式アカウントを使って、「復讐」するという騒動が英国で起きた。CNNなどによれば、きっかけはレストラン「プラウ」の料理長ナイトさんが、クリスマス休暇を願い出たところ、解雇されてしまったことだという。

怒ったナイトさんは、店のツイッター公式アカウントにログインし、次のような内容を続けて投稿した。「ついさきほど、料理長をクビにしたことをお知らせいたします」「クリスマスの1週間前ですが!」「残念なことに彼は、『家族との約束があるので、この週末とクリスマスに休暇を取りたい』と要求してきました。私たちは、それで彼をクビにすることにしたのです」「彼には7カ月半の娘がいますが、それが何か?」

店のアカウントを使って、わざと挑発的なツイートをしたというわけだ。これらの投稿は何千回もリツイートされるほど波紋を呼んだ。アカウントは10月にナイトさんが店のために開設したが、店側は彼を解雇した際、アクセスできないようにしていなかったという。

オーナーは、店が混む日に休まれては困るという事情があり、事前にナイトさんにも伝えていたと話しているということだが……。もし日本で同様の「復讐」が行われたとしたら、法的にはどんな問題があるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。

クリスマス前にレストランを解雇された料理長が、店のツイッター公式アカウントを使って、「復讐」するという騒動が英国で起きた。CNNなどによれば、きっかけはレストラン「プラウ」の料理長ナイトさんが、クリスマス休暇を願い出たところ、解雇されてしまったことだという。

怒ったナイトさんは、店のツイッター公式アカウントにログインし、次のような内容を続けて投稿した。「ついさきほど、料理長をクビにしたことをお知らせいたします」「クリスマスの1週間前ですが!」「残念なことに彼は、『家族との約束があるので、この週末とクリスマスに休暇を取りたい』と要求してきました。私たちは、それで彼をクビにすることにしたのです」「彼には7カ月半の娘がいますが、それが何か?」

店のアカウントを使って、わざと挑発的なツイートをしたというわけだ。これらの投稿は何千回もリツイートされるほど波紋を呼んだ。アカウントは10月にナイトさんが店のために開設したが、店側は彼を解雇した際、アクセスできないようにしていなかったという。

オーナーは、店が混む日に休まれては困るという事情があり、事前にナイトさんにも伝えていたと話しているということだが……。もし日本で同様の「復讐」が行われたとしたら、法的にはどんな問題があるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。

●「復讐」行為がはらむ2つの問題点

「この事件は、大きく分けて、2つの問題を含んでいます。

それは、(1)公式アカウントに退職後にログインをしているということと、(2)雇い主を攻撃あるいは揶揄する投稿をしていることです」

清水弁護士はこのように指摘する。それぞれどんな問題なのだろうか。

「まず、ひとつめの問題である『公式アカウントに退職後にログインをしている』という点から見ていきましょう。

ポイントは、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下、『不正アクセス禁止法』といいます。)に抵触するかどうかです」

元料理長の行為は、不正アクセスになるのだろうか?

「不正アクセス禁止法は、簡単にいえば、アクセス管理者のパスワード・IDを承諾なく使用してアクセスする行為や、設定されているセキュリティを突破してアクセスする行為を禁止しています。

違反した場合には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(同法11条)」

アカウントを開設し、管理していたのはナイトさんだったようだが、それでも不正アクセスと見なされるのだろうか?

●業務用アカウントの管理者はあくまで会社側

「ここで、アクセス管理者というのは、誰にアクセス権を与えるのかを決定する者のことであり、会社等の場合には、管理の主体はあくまで会社とされています。

『アカウントは10月にナイトさんが開設した』ということですが、店の公式アカウントだということなので、このアカウント開設は業務として行っているものと評価できます。そうすると、アクセス管理者はあくまで店側である、ということになります。

つまり、たとえ自分が公式アカウントを立ち上げ、それまでずっと管理をしてきたものだとしても、会社退職後に公式アカウントにログインをすると、それを特別に許可されているといった事情がない限り、不正アクセスをしたものと扱われることになります」

そうなると、ナイトさんが行ったことは、日本では「不正アクセス」に該当すると言えそうだ。もう一つの問題点はどうだろうか?

●復讐目的だと「正当な言論」とは見なされない

「次に、ふたつめの問題、『雇い主を攻撃、あるいは揶揄する投稿をしていること』という点を見ます。これは、名誉毀損や侮辱に当たらないかという問題です」

ズバリ、該当するのだろうか?

「具体的に、どのような内容を書いたのかということが問題となるものですので、一概にこれらに当たるというわけではありません」

表現が名誉毀損などに当たるかどうかについてはケースバイケースで、様々な事情が考慮されるため、伝えられている情報だけで断定するのは難しいようだ。ただ、報道によるとナイトさんは実際にクビになったようで、こうした発言が「事実」だという可能性もあるはずだ。それでも問題となり得るのだろうか?

「誤解している方が多いので指摘しておきますが、本当のことだからといってそれをインターネット上に晒してよいのかというと、よいとは言えません。

たしかに、発言内容が本当のことであれば、違法性が阻却される(≒違法でなくなる)余地が出てきます。しかし、発言の目的が『復讐』にあるとすると、正当な言論ということが難しく、違法性も阻却されません。

なお、名誉毀損に当たる場合は『3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金』とされており(刑法230条1項)、侮辱罪の場合は『拘留または科料』とされています(刑法231条)」

さらに、清水弁護士は、こうした投稿で営業秘密にあたる情報を漏らせば、不正競争防止法違反となる可能性も指摘する。また、投稿で会社に損害が出た場合には、会社から損害賠償を請求される可能性もあるという。

いくら「店に一言いってやりたい」と思っても、こうしたやり方は許されず、逆に全てを台無しにしてしまいかねないと言えそうだ。

清水弁護士は「会社の対応に不満があったとしても、こんなやり方をしては、余計なリスクや新たな紛争を生み出すことになってしまいます。主張はきちんと正面からされたほうが良いのではないでしょうか」とアドバイスを送っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る