大阪地検トップの検事正だった北川健太郎氏が在職中に部下の女性検事に性的暴行を加えたとして準強制性交罪に問われている事件で、捜査情報や被害者に関する情報を北川氏側や他人に漏らしたとして、国家公務員法違反や名誉毀損の疑いで刑事告訴されていた副検事について、大阪高検は3月19日、不起訴処分にした。
女性検事の代理人は「検察庁に対する国民の信頼を損ねるもので、身内びいきの不適切な処分だ」「全く承服し難い」と批判するコメントを出した。
●事情聴取の内容を口外していた
報道によると、副検事の女性は事件の参考人として検察官から事情を聴かれた際、聴取内容を口外しないよう求められたにもかかわらず、北川氏の弁護人に教えたほか、被害者の名前を検察庁内部の複数に伝えたという。
大阪高検は、不起訴処分と同時に、副検事を最も軽い戒告の懲戒処分にした。
これに対して、北川氏からの性被害をうったえ、副検事の行為を刑事告訴・告発した女性検事の代理人弁護士は「検察庁は副検事に検察官としての職務を継続させることを容認したが、検察庁に対する国民の信頼を損ねるもので、身内びいきの不適切な処分だ」などとするコメントを出した。
女性検事の代理人弁護士のコメント全文は以下の通り。
●女性検事の代理人コメント全文
「被害者は今回の検察庁の副検事に対する処分に対し、大変ショックを受けていてコメントができませんので、代理人としてのコメントを申し上げます。
副検事の行為は、被害者の性被害の捜査妨害をしたり、被害者を酷く傷付ける二次被害をも与えるものと代理人としては認識しています。
しかし、検察庁は、起訴相当である副検事の行為を不起訴処分とし、懲戒免職相当の非違行為であると思われるのに最も軽い戒告で済ませました。
また、いずれの処分も、告訴、告発をしている被害者に対する事前の説明はなく、捜査を一方的に打ち切って突然処分を下されたものです。
被害者代理人としてその処分内容が納得できないものであることはもちろん、事前の説明を求めていたにもかかわらずその事前説明もしないまま一方的に処分結果を伝え、かつ、報道機関に発表するという処理の仕方も全く承服し難いものです。
検察庁は、このような対応により、副検事に検察官としての職務を継続させることを容認しましたが、検察庁に対する国民の信頼を損ねるもので、身内びいきの不適切な処分と思っております。
被害者の安全な職場環境の整備は遠ざかるばかりで、検察庁は被害者を復職させる気がないのではないかとさえ思わざるを得ず、代理人としては非常に残念でなりません」