紛失したと思っていた高級ブランド「エルメス」のカードケースが、同僚の机の引き出しから見つかった──。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
カードケースは購入時、約12万円もしたといい、相談者は取り返したいと思っているようですが、会社に相談すればよいのか、警察に通報すればよいのか、悩んでいます。
もし本当にカードケースが盗まれたものだとしたら、どう対応すれば良いのでしょうか。西口竜司弁護士に聞きました。
●まず会社に相談、それでもダメだったら警察へ
——同僚による盗難が疑われる場合、会社に相談すべきでしょうか。それとも警察に通報すべきでしょうか。
早とちりは危険なので、まず、カードケースが同僚の引き出しに保管されていたことに不審を抱いた時点で、会社に相談するのが適切だと思います。
社内トラブルの初期対応として、事実関係の調査を社内でおこなえる余地があるからです。
一方、明らかに窃盗の疑いが濃厚な場合や会社が調査に消極的な場合、警察に被害届を提出することも検討することになります。
その際、相談者が用意しておくべきは、カードケースの購入履歴(領収書・クレジット明細等)、紛失時期や状況の記録、発見時の状況を記した資料です。自分のカードケースの特徴がわかる写真などもあると良いでしょう。
●窃盗が事実であれば、刑事・民事で法的責任
——窃盗が事実だった場合、その同僚は刑事、民事、双方でどのような法的責任を負うことになりますか。
もし同僚がカードケースを盗んで、自分の引き出しに保管していた場合、刑事責任としては、窃盗罪に該当します(刑法235条)。10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。職場内での犯行であれば、情状が悪質とされる可能性があります。
民事責任としては、不法行為に基づく損害賠償請求が可能になります(民法709条)。加えて、会社が就業規則上の懲戒処分(けん責・出勤停止・懲戒解雇)をおこなう可能性も十分にあります。
●無断で持ち帰ると逆に「窃盗」になる可能性も
——相談者は、同僚が持っているカードケースは自分のものだと確信しているとのことで、無断で持ち帰りたいと考えているようです。相談者が無断でカードケースを持っていった場合、どのような法的問題が生じてしまいますか。
相談者が「自分の物だから」として、無断でカードケースを同僚の机から持ち出した場合、逆に相談者自身が窃盗の嫌疑をかけられる可能性があります。
職場における引き出しは、私的な管理空間とみなされることがあるため、黙って物を持ち出すことは、法的・倫理的に問題となります。
はやる気持ちはわかりますが、まずは会社に報告し、第三者立会いのもとで返還を求めるべきです。
また、警察に届け出ている場合は、捜査に基づき返還措置をとってもらうべきです。
いずれにしてもイヤな話ですね。こういう場合、周囲も上手くフォローしてあげてほしいと思います。